「ごはんの価値」で多忙な女性を応援 暮らしに寄り添いリアルなメッセージを発信

 「暮らしを創る」を理念に掲げる象印マホービンは、2011年から南部鉄器を使った内釜を持つ高級モデルの炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」を発売している。進化を続ける同商品を軸に、企業姿勢や価値観を伝えようと2017年秋、新聞の全面広告とテレビCMを連動させたキャンペーンを実施。ごはんの持つ世界観を実体験できる「象印食堂」を東京と大阪で開催した。

新聞広告と90秒ムービーで「世界観」

2017年10月20日付 朝刊0.3MB

 「ごはんを炊けば、なんとかなる」「おいしいごはんを炊くと、おいしい毎日がやってくる。」――。お茶わんによそったホカホカのごはんの写真と一緒に、そんなコピーでひときわ目を引く全面広告が、2017年10月20日付の朝日新聞朝刊に掲載された。紙面では、ごはんのおいしさと、ごはんのある暮らしの温かさや大切さが詩のように切々とつづれらている。筆者は料理研究家・土井善晴さんだ。土井さんと女優の尾野真千子さんが向き合い、「今年もやります! 2夜限定90秒ムービー」のコピーとともに、広告掲載日の20日と翌21日夜にテレビ朝日系列で中継された「フィギュアスケートグランプリシリーズ」において2夜限定でオンエアされた同社の主力製品「南部鉄器 極め羽釜」の90秒ムービーを告知した。20日付朝刊の最終テレビ面の欄外、さらに20日・21日のテレビ面中央の小型広告でも、放送を告知するマルチな広告展開が実施された。

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2017年10月20日付 朝刊1.3MB

2017年10月21日付 朝刊1.8MB

 20日に放送されたムービーのストーリーは、家でくつろぐ尾野さんに突然、息子から少年野球のチームメートを連れて帰宅すると連絡が入る。急なことに「何作ろう?」と戸惑う尾野さん。そこに、どこからか土井さんが登場。真新しいサラシのふきんを使い、軽く握ったごはんの上にみそを塗る「みそおむすび」を提案し、作って見せてくれる。21日は突然訪ねてきた弟に、土井さんのサポートで「ハムエッグ丼」を準備する展開。どちらもほんわかとした空気感の中、2人の絶妙な掛け合いを通して、忙しい母親たちに、「難しく考えず、まずはごはんを炊いてみませんか」とのメッセージを優しく投げかけた。

 象印マホービン広報部サブマネージャーの佐藤隆之氏は「2016年から、炊飯ジャーのコミュニケーション活動を見直しました」と切り出す。「炊飯ジャーは既に普及率が高く、各社は高級モデルでしのぎを削る時代に突入しています。機能やスペックを前面に出しても、どこまで生活者に理解されているのか不安がありました。『炊飯ジャーと言えば象印』と選んでもらうためには、当社が長年大切にしてきた、ごはんのある暮らしの価値観をもっと伝える必要性があるのではと考えました」

佐藤隆之氏

 キャンペーンには電通が加わった。同社プロモーション・デザイン局ソリューションクリエーティブ1部のコピーライター、辻本卓氏も企画に深く関わった。「象印が提供する価値は、炊飯ジャーそのものではなく、その先にある豊かな暮らしではないかと議論しました。炊き上がりのおいしいごはんが持つ幸せな気分や、ほっとできる時間。消費者の気持ちに寄り添う企業姿勢を打ち出そうと提案しました」と明かす。

辻本卓氏

 象印は土井さんが出演する料理番組を提供している。尾野真千子さんは2014年から象印のイメージキャラクターを務める。新聞に掲載した文章は土井さんの書き下ろしで、みそおむすびとハムエッグ丼も土井さんの提案だ。辻本氏は「日本人が数千年食べてきた、ごはんの価値を見つめ直してほしいという願いと同時に、日本のお母さんは家事に仕事に頑張りすぎだという思いが土井先生にはありました。自分の言葉で伝えたいと、とても良い文章を書いていただき、コピーライターとしては正直ちょっと悔しいほどでした(笑)」と続ける。ムービー収録はほとんどがアドリブ。佐藤氏は「土井先生は昔からお付き合いさせて頂いていることもあり、90秒ムービーの制作意図を正確に理解して頂けました。特にセリフを設けず、普段テレビで見る土井先生のまま演じて頂きました。土井先生の言葉をしっかりと受け止めて、自然に打ち返す尾野さんもすばらしかったです。私たちが大切にする価値観を上手に表現してもらえたと満足しています」と振り返る。

「象印食堂」で消費者の生の声や反響も

2017年10月28日付 朝刊0.9MB

 10月27日~11月5日は東京・表参道で、11月17日~26日は大阪・梅田で、「南部鉄器 極め羽釜」で炊いたごはんを実際に味わえる「象印食堂」を開催した。朝日新聞のライフスタイル特集「ボンマルシェ」とコラボレーションし、全5段の新聞広告でも告知。ボンマルシェ編集部がコーディネートした料理研究家の柳原尚之さんが監修した和定食「極め御膳」を1食1,000円で、東京150食、大阪100食限定で毎日提供した。「お客様に真剣に味わっていただき、製品の良さをきちんとお伝えするには対価をいただこうと思い切って有料での実施に踏み切りました。長時間待ってくださる方や遠方から足を運んだ方もいて、お客様と深いコミュニケーションが取れ、大変貴重な機会となりました」と佐藤氏。来場者アンケートでは98%の人が「満足」と回答。当初の想定よりも、硬めのごはんを好む人が多いなど、思わぬ発見も多かったという。

 新聞広告について佐藤氏は「狙った日付で告知を打てる安心感があります。朝日新聞は広告商品の種類も豊富で、さまざまな提案を通じ、私たちの思いを共有してくれているという信頼感がありました。今回の広告は反響が大きく、土井先生のメッセージを写真に撮ったり、書き写してツイッターやインスタグラムで発信する方もいて、予想以上の広がりを実感できました」と振り返る。

 1918(大正7)年、ガラスマホービンの中びん製造を開始して以来、ステンレスボトルや炊飯ジャー、電気ポットなど、時代のニーズに応える多種多様な商品を世に送り出してきた象印マホービンは、2018年に創業100周年を迎えた。「使用性と高い品質を兼ね備え、家庭での日常生活において誰もが安心して、やさしく、簡単に使える『日常生活発想』が、当社の創業から一貫した企業姿勢です。何を大切にするかを反すうしながら、これからもお客様の日常に寄り添い、『暮らしを創る』企業としてメッセージを発信し、ブランド価値を高めていきたい」と佐藤氏は締めくくった。