人気ユーチューバーを起用した若年層向けのデジタルプロモーションで新たな投資家層を開拓

 資産運用会社であるDWSグループのドイチェ・アセット・マネジメントは、朝日新聞社メディアビジネス局が運営する金融メディア「START!」で、若年層向けのデジタルプロモーションを実施。2018年1月から始まった新制度「つみたてNISA」を特集するコーナーで、バイリンガールという愛称で知られるユーチューバー、吉田ちか氏のインタビューや対談を掲載している。若者に人気のインフルエンサーを活用した施策で、新たな投資家層の開拓を狙った。

朝日新聞社メディアビジネス局が運営する金融メディア「START!」を活用

 ドイチェ・アセット・マネジメントは、資産運用会社であるDWSグループの日本拠点だ。30年以上前からドイツ銀行グループの資産運用部門として日本事業を展開。投資信託ビジネスと公的年金、企業年金運用の長年にわたる経験とノウハウ、及び実績を有し、ドイツにおける個人向けの投資信託のシェアは第1位である。

 同社は、朝日新聞社メディアビジネス局が運営する金融メディア「START!」で、若年層向けのデジタルプロモーションを実施。「START!」は、投資や保険、クレジットカード選び、日々の節約術まで、お金についてこれから学ぶ方に役立つ情報を発信するデジタルメディアだ。同社が「START!」でデジタルプロモーションを実施した背景について、ドイチェ・アセット・マネジメント マーケティング&コミュニケーションズ部長、ヴァイス プレジデントの伊藤巴江氏は次のように説明する。

伊藤巴江氏

 「運用資産残高の拡大と新たな投資家層開拓のためにも、若年層向けのデジタルマーケティングは、マーケティング部が取り組むべき重要な戦略として掲げていました。スマートフォンで見ることができる媒体で、インフルエンサーを活用した施策を検討していたとき、朝日新聞の営業担当者から『START!』という金融メディアを紹介してもらいました。スマートフォンでも読みやすく、若年層向けのメディアなので、我々の希望とマッチしていました」

 これまでも同社は、若年層向けに情報発信は行ってきた。だが、十分な手応えを感じることができずにいたという。「自社のウェブサイトでの発信のほか、書籍も出版しました。若年層向けの施策は弊社だけではなく、多くの運用会社が長年にわたって取り組んでいます。ただ、なかなか結果に結びつかない。そこで、私たちは今までにしてこなかった施策をすべきではないかと考えました」(伊藤氏)

 それが、バイリンガールという愛称で知られるユーチューバー、吉田ちか氏をインフルエンサーとして起用した施策だ。同社は「START!」の「つみたてNISA」を特集するコーナーで、吉田ちか氏の単独インタビューとドイチェ・アセット・マネジメントの資産運用研究所・所長の藤原延介氏との対談を掲載した。

 吉田氏のこれまでのキャリアや人生、お金について語る内容で、第1回はユーチューバーになった経緯や動画の内容の決め方なども知ることができる。第2回は最近の活動や働き方、将来のお金についての考え方なども紹介した。

 一見、投資とは全く関係が無いような内容に見えるが、昨今、ユーチューバーは将来なりたい職業の上位にランクインする。そんな憧れの著名人の人生を掘りさげることで、読者に自分の将来を想像させ、長期投資の必要性を認識してもらうことが狙いだったという。「あえて投資信託をやりましょう、といった切り口にはしていません。記事の中にちかさんのお金や投資に対する考え方を織り交ぜることで、投資信託が自然と身近に感じてもらえるように工夫しました」(伊藤氏)


インフルエンサーのキャスティングは自社との親和性を重視

 ユーチューバーとして活躍する吉田氏の起用は、単にインパクトだけを狙ったわけではない。同 アシスタント ヴァイス プレジデントの紅谷隆司氏は、起用の理由をこう話す。「ファン数が多いことはもちろん、ちかさんのユーチューブは、英語を教えるエデュケーショナルな内容なので好感度が高い。アメリカで育ったちかさんは国際的で、我々との親和性がありました。ユーチューバーの中にはファン数や再生回数を増やすために奇をてらったものも少なくない。ちかさんは、人気はあるけど露出し過ぎず、エッジが効きすぎていないことも決め手になりました」

紅谷隆司氏

 その結果、記事のPVは想定以上だったという。第1回の記事は、約6万PV、約5万UUを達成。また第2回は約3万PV、約2万5千UUという結果が出た。主に朝日新聞デジタルからの誘導で、狙い通り20代から30代のユーザーからのアクセスが中心だった。「この結果から、ちかさんを起用した施策は成功だったと評価しています。社内でも評判が高く、ちかさんのことを知る若手社員からも反響が大きかった」(伊藤氏)

 記事の最後には、同社の商品を販売する証券会社のバナーも貼られている。「我々からの働きかけで、4社が協力してくれました。リンク先にスペシャルコンテンツを用意してくれた証券会社もあります」(紅谷氏)

 「START!」というメディアに対する評価も好評だ。「金融庁の方や著名人、経済評論家、FP(ファイナンシャルプランナー)、CA(キャビンアテンダント)、料理研究家など、幅広い層の方々の記事が読めることが『START!』の魅力だと思います。通勤の合間に気軽に読めるコンテンツも多いですよね。投資初心者を意識した内容で、好感が持てます」(紅谷氏)。

 初心者向けの金融サイトだからこそ、投資のことだけに特化しすぎない、幅広い内容は「START!」の特徴でもある。

 「『START!』は、これまでの金融サイトの目線との違いを実感します。若者向けの金融サイトは他にもあるのですが、どれも投資を専門とする人たちの目線でつくられているので、やわらかくかみ砕いているつもりでも、初心者の人には難しいのです。『START!』は、朝日新聞が運営しているので、情報の信頼性も高く、安心感もあります」(伊藤氏)

 今回のデジタルマーケティングの施策は、新しい投資家層の拡大を目指したもので、同社のブランディングを狙いとしたものだったという。「若年層リーチだけにとどまらず、ビジネスにつなげていくことは今後の課題の一つ。もちろん、私たちの記事から販売会社のサイトに何人アクセスしたか、その数字を上げるための新たな施策も必要です。それと同時に、今回のようなブランディングを意識したデジタルマーケティングも継続していきたいと考えています」(伊藤氏)