地域や社会とつながりを深め より良い未来の担い手を育てる

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甲南大学は神戸市、堺市、和歌山市、徳島市と連携し、甲南大学生と各地域の高校生が将来に向けた課題を掘り起こす「関西湾岸SDGsチャレンジ」を始めました。持続可能な社会をめざすには担い手の育成が急務として、大学、高校、地域、メディアが手を組み、地球規模の課題を、「自分ごと」として考えられる新たな学びの機会を創出しています。

SDGsの視点で課題解決 リアルな学びで国際感覚を磨く

 来年、母体である学校法人甲南学園が創立100周年を迎える甲南大学(本部:神戸市東灘区)は、神戸市、堺市、和歌山市、徳島市の4市と連携し、「関西湾岸SDGsチャレンジ」(主催:朝日新聞社メディアビジネス局、共催:甲南大学)を、この夏スタートさせた。甲南大学の学生と、系列の甲南高校(兵庫県芦屋市)、そして堺、和歌山、徳島の市立高校の生徒が自治体ごとにチームを組み、夏休みにグループワークやフィールドワークなどを行った。大阪湾を囲む4自治体が抱える地域の課題を、「SDGs」の視点から掘り起こし、未来に向け、持続可能な課題解決策を探る取り組みに注目が集まった。

 プロジェクトを推進した学長室次長・教育学習支援センター課長の林正樹氏は、「教育の使命を端的に言えば、より良い社会をつくる担い手を育てることであり、まさに、平和で豊かな地球の創造をめざすSDGsが掲げる理想と合致します。今後、教育機関においても重要になるSDGsと、本学の特色の一つである地域連携を組み合わせた今回のプロジェクトはとても意義深いと感じています」と話す。

甲南大学 学長室次長
教育学習支援センター課長
林正樹氏

 有力進学校が切磋琢磨(せっさたくま)し、先進的な教育風土が全国的に知られる神戸・阪神間エリア。甲南大学はこの地域に岡本、西宮、ポートアイランドの3キャンパスを構え、人文科学・自然科学・社会科学の3分野にまたがる8学部14学科の総合大学へと発展してきた。学生数は約9,000人。林氏は「学生も教員も一人ひとりの顔が見え、相互につながることができる『ミディアムサイズ』が本学の強みです。地域にしっかりと根を下ろし、ネットワークを着実に広げていくことを第一に考えています」と強調する。

 2011年に開設された地域連携センターはそうした活動の中核機関だ。大学が持つ知的資源を地域の課題解決や活性化に役立てる包括連携協定(包括連携協力協定を含む)を、兵庫県、広島県などの自治体や、商工会などの団体と20件近く締結。学生が主体的に関わるプロジェクトやボランティアを積極的に支援してきた。今回参画した4自治体とは、同大学の総合研究所が「海でつながる」をキーワードに「関西湾岸ネットワーク」を2年前から構築。SDGsに取り組む朝日新聞社がパートナーとして加わり、大学と地域、大学生と高校生をつなぐ新たな挑戦へと発展させたのが、今回の「関西湾岸SDGsチャレンジ」だ。

 8月上旬、大学生、高校生、自治体担当者ら参加者全員が大学に集まり、教員や朝日新聞記者のメンター(助言者)とともに、SDGsの観点から地域課題を捉えてテーマに設定。8月下旬の3日間、4チームに分かれて各市を訪れ、現地の企業や自治体、市民団体の視察、担当者へのインタビューなどのフィールドワークを実施した。一連の活動で得た「気づき」やアイデアを具現化した課題解決策は、9月下旬に開催の「SDGsチャレンジアカデミー」で発表。若い感性を生かした解決策は独自性にあふれ、自治体担当者が気づかない新たな課題の提示もあり、大いに盛り上がった。

 林氏は「グローバル化が進む中、地球規模で環境や社会の問題に向き合うことが求められています。学生一人ひとりが『自分ごと』として課題に関心を持つには、行動を伴う学びの機会が大切。地域のリアルな課題に触れ、さまざまな世代や属性の人たちとともにSDGsの観点で考え、動くことで国際感覚も磨かれていきます」と指摘。高校生の参加は文部科学省が推進する高大接続改革への対応も見据えており、「世界に通用する紳士・淑女たれ、という建学の理念もSDGsの枠組みを使うと学生に浸透しやすい。学部を超えた多数の参加希望があり、十分に手応えを感じています」と期待を寄せる。

教育姿勢や質が問われる時代 新聞社の知見と公共性に期待

 2018年7月13日の朝日新聞大阪本社版朝刊に、「SDGs×甲南大学」の大見出しをSDGsのロゴとともに配した全15段広告が掲載された。SDGsと地域連携に関する甲南大学の取り組みを稲田義久副学長、地域連携センターの佐藤泰弘所長にインタビュー。「関西湾岸SDGsチャレンジ」もスケジュールに沿って紹介し、下段では7月から10月にかけて3回開催するオープンキャンパスも告知した。

2018年7月13日付 朝刊

2018年7月13日付 朝刊713KB

 林氏は今回の展開について、「幅広い情報とノウハウ、知見を持つ朝日新聞社は、社会のとても近くに位置しており、大切なパートナーとして認識しています。世代を超えた読者層を持つ新聞広告は、大学が取り組むさまざまな活動が社会でどのように受け止められるかを実感する上でも、重要なコミュニケーションツール」と話す。インターネットやソーシャルネットワークが拡大し、誰もが手軽に情報発信できる現代にあって、新聞メディアならではの客観的でパブリックな情報発信は貴重だと言う。

 18歳人口の減少など取り巻く環境が厳しくなる中で、大学のコミュニケーション活動も、認知度向上や志願者数増加に主眼を置いたものから、大学の使命である教育への姿勢や考え方、質を伝えるものへと変化していくと林氏は展望する。甲南大学では今年6月、従来の入試センターから、入学試験と高大接続活動に一体的に取り組むアドミッションセンターに改組した。「大学の姿勢、教育の質や特色をリアルに感じ、確信を持って甲南大学を選んでいただけるように、人物教育のクオリティーリーダーとして揺るぎないポジションの確立をめざしたい」と結んだ。