ネスレ日本は、朝日新聞と読売新聞が共同で制作したタブロイド判広告特集「かんきょう新聞」に協賛。昨年の秋、主力製品の「キットカット」の外袋をプラスチックから紙製に変えた同社の環境問題への思いを込めたこの企画は、競合2社がタッグを組んだ史上初の試みということもあり、大きな反響を呼んだ。
2019年12月21日 タブロイド判 表面
2019年12月21日 タブロイド判 4面
きれいな海を守るため「キットカット」のパッケージを紙製に
朝日新聞と読売新聞2社がタッグを組み、史上初めて両紙の題字が並ぶ広告特集を発行する企画となった「かんきょう新聞」。約1万5000部が印刷され、昨年12月21日に渋谷や有楽町、新宿、二子玉川の駅周辺、ショッピングモールやスーパーなどの店舗で、一般の方に手渡し配布された。朝日新聞と読売新聞の題字が並ぶタブロイド判を、多くの人が興味津々で手に取り、大きな反響を得た。この企画に協賛した背景や狙いを、ネスレ日本コンフェクショナリー事業本部の村田香織さんに聞いた。
「ネスレでは海洋プラスチック問題解決のために、2025年までに全世界で製品の包装材料を100%リサイクル可能、またはリユース可能なものにすることを社会にお約束しています。そして世界中で販売している『キットカット』という影響力のあるブランドが、まずは率先して行動すべきだと考えました。そこで昨年9月に、『キットカット』の主力商品である大袋タイプ5品の外袋を、プラスチック製から紙製に切り替えたのです」
それによって年間約380トンのプラスチック削減が見込めるという。とはいえプラスチックから紙のパッケージへの変更は、耐久性や新しいパッケージ素材を製造ラインでどのように対応させるかなど、さまざまな課題があった。それらを乗り越えてのスピーディーな取り組みに、業界からは驚きの声があがった。同時にこの問題に対する、ネスレの強い意思を社会に示すこととなった。
「ちょうど海洋プラスチック問題がニュースやメディアで取り上げられ、社会全体の関心も高まっていただけに、大きな反響をいただきました。紙への変更にともない、パッケージで折り鶴をつくり、大切な人に思いを伝えるという新しいコミュニケーション活動も始めました」
これまで受験生への応援や、家族や友人に感謝の思いを伝えるコミュニケーションツールとしても活用されてきた『キットカット』ならではの取り組みだ。SNSでは、親子で実際に「キットカット」のパッケージを使って折り鶴をつくったり、メッセージを書いて楽しんだりしている様子が投稿された。
「私どもはこのような取り組みを通して、海洋プラスチックの問題や地球環境について、より多くの方に知っていただきたいと考えていました。またこれからの未来を担い、環境問題で一番影響を受ける子供たちと、その親御さんに現状を知っていただき、小さな一歩でも行動していただきたい。そのようなメッセージを伝えるうえで、『かんきょう新聞』はうってつけの企画でした」
親子で環境問題について考えるよいきっかけに
2019年12月21日 タブロイド判 中面
「かんきょう新聞」は、4ページ全カラーのタブロイド判。想定読者は小学校3〜6年の児童とその家族だ。分かりやすい図や文章により、親子で楽しみながら環境問題を学べるよう配慮し、漢字にはすべてルビを振った。1面では「海洋プラスチック問題」を取り上げ、きれいな海を守るために、社会全体でプラスチックの使用を減らすことが大事なことを伝えた。中面では地球温暖化のしくみとその影響、二酸化炭素排出量削減のために一般家庭でできることなどを紹介。終面では、テレビでもおなじみの、ノッポさんと子供たちが並ぶビジュアルとともに「こどもたちの未来のために できるかな。」と、豊かな海を守るために自分ができることから始めてほしいと呼びかけた。手にとった人たちの反響はどうだったのか。
「店頭で手にとった方からは、『読みやすい』『環境問題への関心が高まった』ととても好評でした。みなさん、朝日新聞と読売新聞の題字が並んでいることに驚かれていましたね。社内からも「こんなことができるんだ」という声があがりました。ライバル会社が手を組んだこの企画によって、環境問題はみんなで協力して解決していかなくてはいけない大きな問題なんだということも、しっかり伝わったと思います」
この企画は、親子で一緒に新聞を読み、この問題をともに考える大きなきっかけとなった。
「手渡しという手法をとることで、今までリーチできなかった層にも私どもの取り組みをお知らせすることができました。これまでも、テレビCMやウェブ広告で、紙パッケージへの変更は広く告知してきました。でも『かんきょう新聞』によって、私どもがなぜ紙パッケージへ変更したのか、その理由やそこにこめた思いを、環境問題全体の大きな流れのなかで伝えることができました。それができたのは、信頼性が高く、記事として内容を深く、しっかり伝えられる新聞メディアだからこそ。『かんきょう新聞』は、社会に警鐘を鳴らし、世論を形成する力をもつ、新聞メディアならではの企画だったと思います」
SDGsや環境問題など、地球規模で解決すべき深刻な課題を抱えている今、競合企業や競合メディア、さまざまなステークホルダーがタッグを組んでコミュニケーション活動を行う機会は、ますます増えそうだ。