「すべてのブランド品が永く愛されますように」クリスマスに打ち出したメッセージがツイッターで話題に。ブランド品買い取りのサステナビリティをアピール

 インバウンド需要やサステナブル志向の高まりに伴い、中古ブランド品リサイクル業が成長を続けている。中でも大黒屋は、全国26店舗の鑑定人が同じクオリティで真贋を見極められる鑑定力の高さが国内外から好評を得ている。大黒屋はクリスマスに合わせて、12月24日付朝日新聞朝刊に全15段の広告を掲載した。インパクトのあるビジュアルとコピーは、ツイッターで大きな話題に。攻めの広告戦略で話題をさらう大黒屋ホールディングスの代表取締役社長 小川浩平氏に、広告の狙いや全社的な広告戦略について聞いた。

2019年12月24日 大黒屋広告

2019年12月24日付 朝刊164KB

ブランド品を大事にして欲しいという願いを込めた

 大黒屋は、ブランド品の贈答が増えるクリスマスに合わせて、朝日新聞朝刊にインパクトの強い新聞広告を掲載した。その理由について、大黒屋ホールディングス 代表取締役社長の小川浩平氏は次のように話す。

 「当社は上場企業として、新聞広告を通じて社会に対するメッセージを発信したいと考えています。特に、当社の展開する中古ブランド品リサイクル事業は、サステナブルな社会を実現する3R(リデュース・リユース・リサイクル)の要素を満たす社会的に意義のある事業です。当社ではこれまでも、新聞広告を通じて「物を大切にする心 」を伝えるメッセージ広告などを展開してきました。クリスマスの時期は、当社にも数多くのブランド品が寄せられます。プレゼントとしてブランド品をもらった人も、リサイクル店を通じてブランド品を購入した人も、商品を大切にして欲しいという願いを込めました」

 クリエーティブは、2019年2月にリニューアルした企業ロゴに基づき、コーポレートカラーの黄色を基調としている。モノクロの新聞紙面の中でひときわ目をひく黄色に、クリスマスシーズンらしく大きなリボンでラッピングされたプレゼントボックスのイラストを置いた。その意図について小川氏は次のように語る。

大黒屋ホールディングス 代表取締役社長 小川浩平氏 小川浩平氏

 「私の中で、クリスマスに消費者に強いインパクトを与えるブランドコミュニケーションといえば、大きなリボンをあしらったカルティエのラッピングビルというイメージが強いんです。 当初、新規出店した店舗で、カルティエのようにビル全体をプレゼントボックスに見立てた装飾を行おうと考えていました。結局それは実現しなかったものの、そのアイデアについて相談していたクリエーティブディレクターが、新聞広告のクリエーティブとして昇華してくれました」(小川氏)

 小川氏は、クリエーティブディレクターが試作した広告イメージを見た時、多くの人の目に留まると出稿を即決したという。

 「実際の広告を最初に見た時、コーポレートカラーの黄色が目を引き、大きなインパクトがあると思いましたね。それに加えて『すべてのブランド品が永く愛されますように』というコピーは、社会に対して強く響くメッセージになると感じました。一つ一つのブランド品を無駄にせず、様々な人の手から手へと渡りながらも長く大切にされて欲しいという当社の願いが存分に込められています」(小川氏)

 小川氏は、デジタル広告をはじめとした広告戦略について、社員とともに現場で陣頭指揮をとっている。その際、大切にしているのは「クリエーティブは、一貫してプロに任せること」(小川氏)。ビジネスサイドのメンバーが大きく修正を加えたり意見をさし挟んだりせず、自社のことをよく知るクリエーターの提案に全幅の信頼を寄せているという。

 クリスマスイブの掲載後は、少し皮肉の効いたメッセージと、インパクトのあるカラフルなビジュアルが多くの人々の関心をひき、ツイッターを中心に大きな話題となってTogetterでまとめられたり、いくつものWebメディアで取り上げられたりするなどして拡散していった。

 「当社のメーンターゲットは40~60代の中高年層です。しかし今回、ツイッターを中心に話題が広がったことで、若年層の間でも当社のことが認知されたことをとてうれしく思っています。せっかく話題になったので、これからはこの話題性を店頭への集客や、買い取り、売り上げにもつなげられたらと考えています。WebサイトやWeb広告、店頭と連動する新聞広告を企画できたらいいですね」(小川氏)

売り上げ重視のデジタル広告、ブランドイメージを積み重ねる新聞広告

 近年、大黒屋では、リスティング広告を中心としたデジタル広告に力を入れている。中でもデジタル広告の定量的な効果測定を緻密(ちみつ)に行い、PDCAを回して成果を上げることを重視してきた。一方、マス広告については、クリスマスやバレンタインなど多くのブランド品が贈答されるタイミングに合わせて、ターミナル駅でOOHを掲出したり、テレビCMを放映したりするなど同社のイメージを刷新するようなクリエーティブを展開している。

 「たとえば、2019年のバレンタインには、関東エリア初のテレビCMとしてラグジュアリーブランドのファッションショーのような世界観のCM『鑑定』篇を制作しました。それと同時に、新宿駅のスーパープレミアムOOHにも巨大な屋外広告を掲出。このOOHは運良くチョコレートメーカーの広告に挟まれ、大きな話題となりました。また、同時期に、『鑑定総額1億円を目指せ!お宝は家にあるキャンペーン』と題し、各家庭に眠っているブランド品の写真を特設サイト上の応募フォームから送信すれば、そのアイテムの簡易鑑定金額を算出する企画も実施。中古ブランド品を買い取りに出したことのない、若年層や新規ユーザーにも、大黒屋の鑑定力を実感してもらい、買い取りという行為を身近に感じてもらうことを狙った企画でした」(小川氏)

 売り上げやコンバージョンに直結しているデジタル広告に対し、今回のようなブランディングを目的とする広告に関して、小川氏は「コツコツと回数を重ねることで、少しずつ当社のイメージを形作っていくもの」と捉えている。

 「今回のようなブランディング広告はすぐに売り上げやコンバージョンにつながるものではありません。しかし、繰り返しメッセージを発信し続けることで、3Rやサステナブルな社会に貢献したいという当社の意欲が社会に伝わるはずだと信じています。今後は、当社のメーン顧客層である40~60代を狙って、企業ロゴなどを前面に押し出した新聞広告を展開してみたいですね。それに加えて、新聞の強みである販売店網を生かして、折り込みチラシやポスティングと組み合わせ、店頭やWebサイトへの導線をつくるといった施策にもチャレンジできればと思っています」(小川氏)

 小川氏は、親・子・孫と三世代マーケティングが可能な新聞広告の強みを有効活用し、家族のコミュニケーションが活性化するような広告を企画してみたいと、意欲を語った。