ウェルビーイングの取り組みをどう伝えるか

 SDGsに続く世界的な潮流として「ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)」に注目が集まる中、社員や顧客の満足度を高めるために、この考えを導入する企業も増えている。
 幸福学の第一人者でウェルビーイング学会代表理事の前野隆司氏、同学会副代表理事の宮田裕章氏が審査委員長を務める「WELLBEING AWARDS」を創設した背景について、実行委員会のメンバーであるHakuhodo DY Matrixビジネスプロデューサーの佐藤克志氏、朝日新聞社総合プロデュース本部の石川拓磨に聞いた。

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左:Hakuhodo DY Matrix 佐藤氏 右:朝日新聞社 石川

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ウェルビーイングの視点を導入することで起きるビジネスブレイクスルー

SDGsとウェルビーイングの違う点、同じ点

石川 SDGsもウェルビーイングも、すべての人が幸せに生きられる社会を目指している点では同じです。SDGsはどちらかというと、人間と社会、環境の関係性のなかで社会の仕組みを改善していくことに焦点を当てています。いっぽう、ウェルビーイングは「多様な一人ひとり」からスタートし、誰もが持続的に幸せに生きられる理想の未来を目指している。ここが大きな違いです。

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佐藤 なぜ今注目が集まっているかについては、「WELLBEING AWARDS」の応募開始に合わせて開催したウェビナーで、前野先生が①心理学の研究が進んできていること ②経済第一から違うものを重視しようという世の中の流れがあることーの2点を挙げていました。SDGsとは人が中心に来るところに違いがあり、WELLBEINGを分解して個別目標を設けたのがSDGsと言えるとも発言されています。

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前野隆司氏、宮田裕章氏が登壇したWELLBEING AWARDS開催記念ウェビナー「ウェルビーイングとビジネスは共立するのか」(2021年11月25日開催)の録画視聴のできる特設サイトはこちら

人材マネジメント分野からマーケティング分野へ広がるウェルビーイング

 「日本でのウェルビーイングの導入は、健康経営や働き方改革など人材マネジメント分野が中心だったが、今後はマーケティング分野での導入が広がっていく」
 Hakuhodo DY Matrixが2022年11月に発表した経営者と担当者を対象とした調査レポート「ザ・ウェルビーイングレポート Vol.2」からは、今後のビジネスアクションにむけた動向を見て取ることができる。

佐藤 ウェルビーイングをマーケティングに活用している人たちを分析していくと、仕事への満足度が高い傾向が見られました。理由を分析すると、「どうしたら顧客を幸せにできるか?」という大きな問いを考える中で、創造性が刺激されるとともに、よい仕事をしている手ごたえを感じ、仕事へのやりがいとモチベーションが刺激されているという実態が見えてきました。この高いモチベーションは、周囲の社員や経営者にも伝播し、チーム・社内の雰囲気も良くなります。このポジティブな連鎖を「ウェルビーイング・バリューチェーン」と名付けました。
 多くの企業が悩まれているZ世代への対応のヒントもここにあるのではないかと考えています。また企業がパーパスを考えるうえでも、ウェルビーイングの視点は欠かせないものになっています。

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ザ・ウェルビーイングレポート Vol.2をダウンロードできる
Hakuhodo DY Matrixのサイトはこちら

日本のウェルビーイングのかたちを、みんなでつくりあげるための「WELLBEING AWARDS」

「WELLBEING AWARDS」に参加する理由

 「WELLBEING AWARDS」は、人々のウェルビーイングを向上させている①商品やサービス ②活動 ③組織を対象に「社会インパクト」「アイデア」「そこから生まれた価値や影響力といったアウトカム」という幅広い観点での取り組みを第三者視点で評価する。 参加することで朝日新聞関連メディアに掲出され広く告知されるとともに、受賞の場合は「WELLBEING AWARDS」のロゴマークの使用や、朝日新聞社が有する様々なコミュニティーの場で、ウェルビーイングに取り組む他の企業とのつながりをつくれることも大きなメリットになるだろう。

審査の過程で理想のウェルビーイングを模索し、優れた事例を社会に発信

 ウェルビーイングは広い概念であることもあり、その意義はなんとなくわかっていても「具体的にどう取り組めばいいのかわからない」といった声も多い。だからこそ、優れた事例を集め、社会に発信することが重要だと、石川は言う。

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石川 すでにウェルビーイングに取り組まれている企業や団体はたくさんありますが、先進的な取り組みだけに、その意義が社内でも十分に伝わっていなかったり、評価につながっていなかったりすることもあると聞きます。そのような取り組みを第三者的に評価することで、応援したいと考えています。優れた事例を社会に積極的に発信し、いいところをみなさんにどんどん取り入れていただき、ウェルビーイングが社会に大きく広がっていくことを期待しています。

佐藤 日本におけるウェルビーイングとビジネスの新しいかたちを「WELLBEING AWARDS」を通して企業のみなさんとともにつくりあげていきたいと考えています。
 さまざまな人の価値観が受け入れられ幸せに暮らすことができる、最大“多様”の幸福を叶えられる社会の実現を目指す。そのために、ウェルビーイング・マーケティングの考え方を発信し、ウェルビーイングな社会への推進に貢献したいと考えます。是非みなさんの取り組みを教えてください。

WELLBEING AWARDSの募集要項・スケジュールは下記画像リンクから