「成長の糧は至る所にある」木村 慎が語る仕事③ ―普遍的なニーズを追った―

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請求業務のデジタル化はどうか

 私が当社インフォマートの存在を知ったのは、新卒で総合食品商社に入社し、その後転職したIT会社で懸命に働いていた頃でした。「食品」の仲介を「IT」で行うインフォマートのマッチングビジネスは、まさに私の二つのキャリアと重なり、この会社で働きたいと人材会社を通して社長面接までこぎ着け、入社がかないました。31歳でした。
 入社後は、食品の「買い手」である外食業者と、「売り手」である卸売業者や生産者にシステムを利用して頂くために奔走していました。例えばある焼肉店にシステムレクチャーをした時は、遠方にある加工処理工場に行き、ハンバーグを作っている横でプロジェクターをつけて説明を行いましたが、そばでタマネギを刻んでいるので、涙を流しながら説明することもありました。
 このお店のように、こだわりの食材を使われている外食店が日々の受発注を行うのが当社のシステムで、仕入れ業務の効率化や棚卸しなどがスムーズになるので、その価値はきちんと理解され、業績も着実に伸びていました。
 一方、フード業界など一つの業界に特化する仕事だけでなく、次の柱として、「業界特化」とは逆の発想をして、ほぼ全ての事業で必要とされる業務は何かと「業務縛り」で当時の社長(村上勝照)が考えたのが、請求業務のデジタル化でした。
 個人事業主から大企業まで、ほとんどの事業には請求書の作成と発送に向けた事務作業が不可欠です。その手間のかかる作業の改善ニーズを見極め、デジタル化すれば役に立つのではないかと。
 それを実現したのが「BtoBプラットフォーム 請求書」でした。請求書の作成も送付もインターネットなら時間と経費を大幅に削減できます。しかし、使ってもらえばその便利さが分かるはずだと全社を上げて営業しても、なかなかすぐに従来の紙からの変更とはいきませんでした。

「働き方改革」で波が来た

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木村 慎氏

 商品化してからしばらくは、システムの改良を重ねながら諦めずに細々と契約を頂く状況だったのですが、ある時、銀行の人からコンペ参加の提案を受けました。それはシステムではなく請求書を印刷、封入する業務委託企業の公募です。発注者は大手清涼飲料メーカー。紙の請求書を扱う会社が公募に集まる中、私たちの「電子請求書」も提案することができて、結果、採用して頂けたのです。
 この飲料メーカーの請求書発行数は月に十数万通。業務は月末に集中し、請求書を作成、封入する社員の残業時間の改善は働き方改革の課題の一つだったそうです。電子化を行うことによって改善が進むと評価を受けた時は、諦めずにやってきて本当に良かったと思いました。やがてこれを機に、業界の流れが導入検討へと動き始めていったのです。
 例のない思い切った試みで不安もあり、また軌道に乗るまでには気が遠くなるほどの月日がかかりました。長く続いている商習慣に挑むのは簡単ではありません。でも、必ず貢献できるのなら粘ること、その大切さを痛感しました。

木村 慎(きむら・しん)

(株)インフォマート クラウド事業推進部門、事業企画・戦略営業部門 取締役


1976年東京都生まれ。2000年慶應義塾大学商学部卒業。総合食品商社入社後、経営支援サービス会社を経て07年インフォマート入社。電子請求書サービス「BtoBプラットフォーム 請求書」の立ち上げに従事、19年同事業執行役員、22年から現職。