専門チームの連携が可能にする運用体制とデザインの維持
──運用を成果に結びつけるには、どうしたら良いのでしょうか。
入江:最初の設計段階で、デザインやシステムを更新しやすいものにすることは重要なことです。
永田:具体的には、変化しない部分を定義し、変化を許容するところも決めていきます。デザインが崩れていかないように守るところは守りながら、柔軟性のあるものを目指す。ある程度の型をつくりますがそれはゴールではありません。運用体制のスピード化とデザイン強度の維持の両立は今のトレンドでもあります。
入江:複数年にわたって効いていくであろう本質的な提案ができると、企業もブランドを大切に育て、守っていこうという意識になっていくはずです。企業のカルチャーも変わっていきます。一発の打ちあげ花火を上げる仕事とは違う、クライアントとの関係性を築くことができるし、ブランドに貢献できているなと感じることが多いですね。
──クライアントにとっては心強いパートナーだと思います。
入江:認知をあげたり集客したりすることも大切です。それと同時に、広告できてくれたお客さんに使い続けたいと思ってもらうためには継続的なサービスが必要になる。どちらも提案して、クライアントを支えていきたいと考えています。デザインはかっこいいけど、使いづらい、更新しにくいというケースは非常に多いと感じています。
永田:成果に結びつけることや、運用性を担保したものを前提につくっていく。そのためにも、ブランディングwithコンバージョンが必要になると考えています。
──最後に、生活者エクスペリエンスクリエイティブ局のスローガンであり、連載のテーマでもある「愛されるDX」については、どのように考えていますか。
永田:これまでクリエイターとエンジニアが協力してアウトプットを生み出すのは難しいと言われてきました。お互いを気持ち良く接着させていくことが、テクニカルディレクターの役割でもあると思います。スタッフ同士が尊重しあえる=愛のある関係性というのは、難しい課題をDXで解決していくことにもつながるはずです。
入江:結局は「それがあったらうれしいのか」を一人の生活者の目線で考えられるかだと思います。DXやテクノロジーといっても、難しく考えず、まずは一人の人間としてどう感じるか。その感覚を忘れないようにするためにも、愛されるDXというスローガンを掲げています。
ゲームやSF映画の中で描かれていることを、現実社会で実現させたらどうなるか考えてみるのもおすすめです。例えば、サッカーゲームの中でシュートをきめた選手を360度、高速で映し出すリプレイ画像をどうやって現実で実装するか。頭で考えすぎてこねくりまわすのではなく、心と体で考えるくらいの気持ちで自由な発想を生み出そうとすることが、博報堂らしいDXなのかな、と思います。
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 局長代理/hakuhodo DXD 主宰
マーケティング/クリエイティブ/デジタルを統合したコミュニケーションプラニングの知見と、広告を超えた新しいサービス開発の知見をかけ合わせ、企業や事業やブランドの成長に貢献。日本マーケティング大賞、ACCグランプリ(マーケティング・エフェクティブネス部門)、モバイル広告大賞、東京インタラクティブアドアワード、カンヌ、アドフェストなど受賞。
博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 エグゼクティブディレクター
テクニカルディレクションを基軸に、オンラインコミュニケーションにおけるクリエイティブディレクションおよび統合プロデュースを対応。