ライフコース様々なバブル世代 「いいもの」へのこだわりは旅行でも

 「バブル世代」は、若いころに海外旅行を楽しんでいた世代でもある。この点に注目したシンクタンクのJTB総合研究所は「バブル世代のライフスタイルと旅行消費に関する調査」を実施した。調査結果から見える彼らの現在の消費行動、旅行への意識はどのようなものか。企画調査部主任研究員の早野陽子氏と客員研究員の守屋邦彦氏に聞いた。

景気の低迷が続き「堅実派」が多数に それでも「魅力的ならば予算を超えても買う」

早野陽子氏 早野陽子氏

――今回の調査を実施された経緯、狙いを聞かせてください。

 当社では、「生活者の消費行動と旅行」に関して、様々な世代について調査をしています。今回は「バブル世代」を取り上げました。定義はいろいろありますが、今回は「1959年~70年生まれ」を対象としました。この世代は80年代後半~90年代初めの好景気を、大学生や若手社員として経験しています。自動車、スキーやテニス、海外旅行、ファッションブランドなど多様なモノやコトの消費を経験しています。そのため、本当にいいものを知っている世代と考えられます。

 ここ数年、団塊の世代を中心としたシニア世代が大きなマーケットとして注目されていますが、シニア以外と考えると、若いころにバブル景気を経験し、消費意欲が高いだろうと予測される「バブル世代」に着目したのです。具体的には、当時の消費や旅行の経験も含めて、消費や旅行に関する意識・行動などについてアンケートしました。

――調査結果から見えてきた「バブル世代」とは。

 彼らは5つのタイプに分類できました。「積極調和」「高アンテナ」「シンプル合理的」「モノよりコト」「メリハリ消費」です。このうち、「トレンドに敏感」「本当に気に入ったものは価格にこだわらず手に入れたい」「話題のスポットが好き」といった特徴を持つ「高アンテナ」タイプ、流行には遅れをとらないようにチェックし、ある程度は旅行にも行っている「積極調和」タイプという、いわゆる「バブル的価値観」をいまだに持つタイプは全体のわずか2割程度とわかりました。「バブル世代」の多くは、バブル崩壊、その後の不景気の時代を経て堅実的になっている、と言えます。

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調査結果をもとにバブル世代を5つのタイプに分類した(提供:JTB総合研究所)

調査結果をもとにバブル世代を5つのタイプに分類した(提供:JTB総合研究所)

 最も多かったのが「シンプルな生活を求め、無駄なお金は使わないけれど、本当に気に入ったものなら価格にはこだわらずに手に入れる」という「メリハリ消費」タイプでした。堅実にはなっているものの、かつての「モノ・コト消費」の豊富な経験から「いいものを見る目」をしっかり持ち、魅力を感じたものに対しては積極的に消費したいという意欲はある、ということだと見ています。

守屋邦彦氏 守屋邦彦氏

 また、男女機会均等法が最初に施行された世代でもあり、終身雇用制度の崩壊も目の当たりにし、働き方、結婚や出産といったライフコースが、上の世代に比べて多様化、複雑化しています。40~50代を迎え、子どもの教育費だけでなく、介護など親の問題も出てきている。こうした状況とともに、収入も支出も世帯によって様々ですから、当然消費習慣も変わってきます。実は調査前には、「バブル世代とひとくくりにはできないのでは」という仮説を立てていましたが、結果として意識にも、実際の消費行動にも、かなり幅があることが見えてきました。

 もう一つ興味深かったのが、日用品以外の買い物の情報源が、男性、女性とも「新聞の折り込みチラシ」が最も多かったことです。この世代が20代だったころは『ポパイ』『ぴあ』など情報誌が創刊されよく読まれていました。インターネットが普及した現在でも、チラシや雑誌、カタログ、パンフレットといった紙媒体からも情報を収集する傾向があるようです。とはいえ、男女とも3割以上がネットも活用しており、紙媒体とデジタルメディアの両方を上手に使いこなしている様子が見えてきました。

潜在的な消費意欲を刺激する 商品開発やコミュニケーションがカギ

――「バブル世代」は、若い頃に海外旅行を楽しんでいた世代でもあるかと思います。旅行に対する意識は。

 海外に行くだけでなく、現地でスキーやビーチリゾートを楽しむなど、旅行についても経験値が高いのがこの世代の特徴です。彼らの現在の旅行先について調査したところ、既婚者にはハワイやグアムなどのリゾート地が、単身者にはアメリカ西海岸や香港が人気でした。いずれも、若いころに行ったことのある地域で、繰り返し訪れている人も多いようです。

 旅行に対する意識では、「今後5年の間にお金をかけたいこと」の1位が「旅行」という結果が出ており、全体的に関心が高い傾向があるようです。とくに「高アンテナ」タイプや「モノよりコト」タイプは旅行に関心が高く、自分で好きなように手配する個人旅行を選びます。一方、「積極調和」タイプや「メリハリ消費」タイプは「そこそこ旅行好き」なので、おトクで手間がかからないパッケージツアーを……と分かれ、ここでも一つにはくくりきれない「バブル世代」の姿が見えます。

 とはいえ、やはり旅行に関しても、「クオリティが高い」と思えば予算を超えてもお金を出すと考えている人が少なくなく、「特別な体験ができる」「こだわりのパッケージツアー」など魅力的なコンテンツを用意することで、需要を喚起していくことができるのでは、と考えています。
旅行はもちろん、消費についても「バブル世代」の潜在的ニーズを刺激し、心を動かすような商品やサービスの開発、メディアをうまく使い分けた情報発信やコミュニケーションがこの世代を動かすカギを握っているのではないでしょうか。