通信会社として「つながる」のは当たり前 「dマーケット」で新たな魅力を提供

 ソーシャルメディアの普及を後押ししているのがスマートフォン(スマホ)の普及だ。機器とサービスを提供する通信会社はこうした現状をどのように見ているのか。また今後、どのような戦略を打っていくのか。NTTドコモ マーケティング部プロダクト戦略担当課長の武岡雅則氏と同担当主査の鍋谷大介氏に同社の戦略を話してもらった。

シニアやキッズなどのフォロアー層にもスマホ市場は拡大中

武岡雅則氏 武岡雅則氏

――スマホの普及状況を聞かせてください。

 契約台数の伸びはもちろんですが、幅広い層に普及してきています。例えば、昨年あたりから広く普及してきているのが主婦層です。今後はシニア層や子どもなど、いわゆるフォロワーと呼ばれる層に拡大するのも確実と見ています。2、3年前に購入したイノベーター層はすでに2台目のスマホへの買い替えの時期に入っており、今年は「普及から浸透へ」という時期に入ると予測しています。

 その背景には、ソーシャルメディアの普及やスマホ用アプリの開発が進んだことなどが挙げられますが、当社をはじめ通信会社がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマホに移行しやすい施策を行ってきたことも普及を促したと見ています。当社ではスマホ向けの割引プランの導入、iモードで利用していたアドレスやコンテンツ、サービスをそのまま移行できる「spモード」や「dメニュー」というスマホ専用のポータルサイトの運用を始めました。こうしたサービスの導入もあって、機種変更の際にスマホを選択する契約者が増えてきているのです。

――スマホの普及によって大きく変化する通信市場にどう挑みますか。

 現在、当社が目指しているのは「総合サービス企業」です。通信事業は当然これまで通り、取り組んでいきますが、それだけでは市場が限られてしまう恐れもあります。そこで、サービス事業をビジネスのもう一つの柱としていく考えです。すでに異業種への出資や買収を進め、物販といった分野にも事業を広げています。

 総合サービス企業として最も象徴的な取り組みが「dマーケット」です。ビデオ、アニメ、ミュージックといったデジタルコンテンツの有料配信に加え、物品のショッピングも始まり、急ピッチでストアを増やしています。これらのストアの特徴は「ドコモ直販」という点です。バックヤードでは色々な企業と提携、協力関係があるものの、直営店としての収益が見込めるのです。購入代金は毎月の利用料金と一緒に請求されるのでユーザーにとっても「便利で安心」というメリットがあります。

 さらにこの春から「ドコモ スマートホーム」という取り組みをスタートします。ドコモのスマホが、タブレットやテレビ、そして多彩な家電機器につながることで、家中いつでもどこでもお好みのコンテンツを簡単に楽しめるようになります。

 具体的には、Wi-Fi専用タブレット「dtab(ディータブ)」と、dマーケットで購入したビデオなどのデジタルコンテンツを家のテレビで楽しめる「Smart TV dstick(ディースティック)」です。いずれも通信回線を使わない端末です。広く認知してもらおうと、5月末まで「Smart TV dstick」が抽選で7万名に当たるプレゼントキャンペーンを展開中で非常に好評です。家庭ではPCを起動するのが面倒な時もあり、すぐに使えるdtabはファミリー層のニーズが高いと見込んでいます。さらに、dマーケットを利用しやすいインターフェースにしたり、子どもでも楽しめるようなホーム画面をダウンロードできるようにしたり、家庭内でも利用しやすいような取り組みも進めています。

※画像は拡大します。

Wi-Fi専用端末「dtab」 Wi-Fi専用端末「dtab」
テレビに接続して使う「dstick」 テレビに接続して使う「dstick」

 タブレット端末は今後さらに力を入れていきます。通信回線を搭載している製品とWi-Fi専用の製品を融合して一つの価値にしていくのか、それとも住み分けて訴求していくのか。画面サイズも7インチと10インチがありますが、それぞれのターゲットをどう捉え、どのようなサービスを提供していくべきか。その答えを出すことで3年後、5年後のビジネスの方向性を描くことができると考えています。

安定した通信インフラを構築しながら その先の「総合サービス」を提供する

鍋谷大介氏 鍋谷大介氏

――スマホの普及によって、「つながりやすさ」「速さ」など、通信状況がユーザーの関心事の一つになっています。

 もともと国家の通信事業としてスタートしている当社は、「安定した通信サービスを提供する」という責務のもと、全国津々浦々まで通信設備を設置し、「つながることは当たり前」という認識で通信事業に取り組んできました。しかし、スマホ利用者が増え、通信アプリが多く使われるようになったことなどで通信回線への負荷は高まっています。通信は重要なインフラで、災害時などに機能不全に陥るなどがあってはなりません。アプリのサービス提供者やOSを提供しているグーグル社といったプレーヤーの皆さんと協力しながら、通信キャリアとして設備増強を急ピッチで進めています。

 一方で、「つながることは当たり前」と認識しているがゆえに、他キャリアに比べてユーザーへの訴求ができていないのでは、という反省もあります。「つながる」というドコモ最大の強みをしっかりとアピールしながら、商品やサービスの魅力をユーザーにもっとコミュニケーションしていかなければと考えています。

――今後の展望、課題などがあれば聞かせてください。

 通信インフラをより拡充し、「つながることは当たり前」の状況を整備した上で、魅力的なプロダクトを提供し、ここ数年のうちに、契約者の大半がスマホという状況にもっていければと考えています。また、タブレット端末の普及拡大も課題です。そのカギを握るのがサービスやコンテンツ。幅広い層のニーズを捉えながら、総合サービス企業として戦略的に未来を描き築いていく考えです。