刺激的な人と情報の交流の場
昨年に続き、カンヌライオンズに行ってきた。私にとって、2度目のカンヌだ。
まず感じたのは、参加者の多さ。今回は名称の変更もあって注目度が高く、日本人の積極的な参加も目立ったように感じた。
カンヌの魅力はなんといっても受賞式以外のアクティビティーの多さ。毎日いくつも催されるセミナーでは、世界の潮流を知ることができ、選考の場面で選考前の作品や応募ビデオを見ることもでき、パーティーではたくさんの刺激的な人たちと出会いその交流は帰国後も続く。空いた時間には、ニースやモナコ、エズなど南仏の自然と文化と食まで堪能できてしまう。広告に携わるすべての人は若いうちに一度はカンヌに行くべき、と力説したい。
昨年は、自分が作品をエントリーさせた部門を見ることに注力したが、今年はそれがない分、全体を俯瞰(ふかん)することができた。昨年の受賞作のキャンペーンに多く見られた「いかに生活者を巻き込むか」に長けていることは、もはや前提条件となり、生活者自らの積極的な接触・発信を誘発するような素晴らしいキャンペーンやクラフトが多かった。シビれるようなレコードやCDをゲットしたらDJになってそれをすぐにかけて、みんなに知らせたくなるような感覚――。PARTYの原野守弘氏の言葉を借りると、自分の「コレクションにしたくなるような」作品たち。フィルム部門グランプリのWrite The Future(Nike)やフィルム部門ゴールドのEntrance(Heineken)、Kaleidoscopic Fashion Spectacular(Target)などが、私にとってのそれにあてはまった。
新聞社社員としては、今までの「新聞という“媒体”をどうおもしろく使おう」という発想から新聞本来の機能や新聞社の持つコンテンツをどう強力なアイデアとして昇華させるか、そんなことを考えたカンヌライオンズ2011だった。
また、印象に残った場面のうち一つは、AKQAによるセミナー「フューチャー・ライオンズ」でイナモト・レイ氏が、石巻日日新聞の震災翌日の油性ペンで書かれた号外を紹介したとき。カンヌでは、海外の参加者から震災後の日本を心配する声が聞かれていたが、ちょうど創刊100周年の石巻日日新聞に対し、イナモト氏の呼びかけで満員の会場全員が総立ちでバースデーソングを歌った光景は圧巻だった。
(東京本社広告第1部 鈴木麻友美)