環境負荷低減を可能にし、11月に発表された「第7回エコプロダクツ大賞」で環境大臣賞を受賞した濃縮液体洗剤「アタックNeo」。洗浄力が高く、かつ洗濯時間が短縮できるとして生活者に広く支持されている。ファブリック&ホームケア事業ユニット ファブリックケア事業グループの松岡真司氏に聞いた。
「新しい洗濯スタイル」を提案
──「アタックNeo」を開発した経緯について、聞かせてください。
環境に配慮した製品開発に取り組む中、アタックNeoは洗浄力に加え、特に「節水」に着目して洗浄成分の研究を進めてきました。その結果、少量でも抜群の洗浄力を発揮し、すすぎが1回ですむ泡切れのいい高濃度の液体洗剤が完成しました。商品設計においては、洗濯にまつわる生活者の日常調査を通して、重量のある洗剤が買い物の負担になっていること、収納棚が洗剤でいっぱいになっているといった、まだ顕在化していないニーズを発見し、「コンパクト化」といったコンセプトを固めていきました。
──開発段階ではどのような苦労や工夫がありましたか。
コンパクト化を実現するためには、従来の液体洗剤と比べて大幅に水分を減らしつつ、洗浄力を保てる新成分の開発が必要で、研究チームが一番苦労したポイントです。パッケージは、女性の手でも容易につかめるサイズにこだわりました。しかも、当社液体洗剤比2.5倍の高濃度なので、従来洗剤と同じ回数使える分量になっています。
──コミュニケーション戦略のポイントは。
発売開始は2009年8月でしたが、それに先がけた6月、当社は新CIを発表し、あわせて「いっしょにeco」をテーマとする「環境宣言」を掲げました。「環境宣言」を象徴する商品の第1弾として打ち出したのが「アタックNeo」で、発売までの2カ月間にPR活動を徹底しました。その結果、新聞やテレビでニュースとして取りあげられ、発売前にかなりの商品認知が進みました。
まったく新しいタイプの商品だったので、「本当にそんな少量の洗剤で汚れが落ちるの?」「本当にすすぎ1回で泡がきれいに落ちるの?」といった生活者の不安も予測されました。そこで、広告展開においては、洗浄力を特徴とする「アタック」のブランド資産を最大限生かしつつ、そういった不安にも応えていくことを心がけました。また、訴求先は「消費者」でも「ターゲット」でもなく、すすぎ1回という新しいお洗濯スタイルを一緒に広めていく「パートナー」として位置づけ、コミュニケーション活動を行っています。
──具体的な施策とは。
新聞、テレビ、店頭での告知活動を軸とし、その他、雑誌、サンプリング、ウェブなどを通じたコミュニケーションを展開。エコイベントも開催し、汚れ落ち実験や泡切れ実験を行いました。さらに、ハード面のアプローチも必須と考え、家電メーカーや家電量販店と情報交換を行い、洗濯機で「すすぎ1回」の設定をした場合に効果を発揮する洗剤として、店頭のPOPなどで推奨していただくように働きかけました。
機能価値のみならず、生活価値や環境価値を訴求
──流通の反応は。
コンパクト化したことにより、従来1本しか置けなかったスペースに2本置けるようになり、商品棚の回転効率が上がったと大変好評です。棚に複数が横並びになるので、「登場感」を打ち出すこともできました。店頭には商品説明のリーフレットを配置し、「すすぎ1回」の設定方法や、「アタックNeo」のベネフィットとしての節水、エコなど新しいお洗濯スタイルをアピールし続けています。
──メディアによって訴求内容をどのように変えましたか。
洗浄力などの機能価値や、洗濯時間が削減できる生活価値など、一般に訴求したい内容はテレビCMで伝え、社会的メッセージが伝わりやすい新聞広告では、節水・節電につながる環境価値について重点的に訴求しました。新聞広告は、1万人を対象とするモニター募集も行いました。新しい提案の商品だけに、いかにトライアルに誘導するかが課題で、今もサンプリングはとても重視しています。新聞広告には多くの応募が集まり、影響力を改めて実感しました。
──生活者の反応は。
「洗濯時間が短くなったおかげで、朝、子どもの相手をする時間が増えた」「洗濯のストレスが減った」「節水、節電につながった」「エコについて意識するようになった」といった喜びの声がたくさん届いています。こうした生の反響を積極的に広告展開にフィードバックし、さらなる浸透に努めています。
──今後の展望は。
コンセプトを同じくする競合商品が増える中、洗浄力や濃縮率の高さなど独自性を継続的に打ち出し、シェア拡大を目指しています。また、11月に超コンパクト柔軟剤「ハミングNeo」を発売し、2011年1月には超コンパクト柔軟剤入り液体洗剤「ニュービーズNeo」が発売となります。今後は「Neoシリーズ」を花王の新たな商品ラインとしてアピールしていくつもりです。