100を超える国々で活動する世界最大の自然保護NGO、WWF。消費大国日本の資源利用が世界の各地域に影響を与える中、「世界の生物多様性を守る」「再生可能な自然資源の利用を持続可能なものとする」「環境汚染と浪費的な消費の削減を進める」との使命を掲げ、産業界に働きかけている。WWFジャパン業務室・法人グループ長の粟野美佳子氏に聞いた。
利益をあげるための不当な行為を問う
──CSRに対する考え方は。
WWFが定義するCSRとは、「利益をどう使うか」ではなく「利益の上げ方」を指します。つまり、利益の一部を環境活動に充てるというのではなく、利益を出すため、無秩序な自然破壊が行われていないか、不当な児童労働が発生していないかなどを企業に問うていく。欧米に比べ、日本企業はCSRをコンプライアンスやイメージアップの一環ととらえている向きがあり、メディアも含めた意識改革の必要性を感じています。
── 企業に対し、どのような働きかけをしていますか。
ビジネスセクターを巻き込む。対決でなく対話を追求する。大きくこの2つが基本方針です。
WWFは、森林、淡水生態系、海洋、野生生物、地球温暖化、有害化学物質などの側面から環境保全に取り組んでいます。特に、
●林産物調達(森林破壊に加担しないような製品購入の推進)
●水産資源調達(海洋環境に配慮した持続可能な漁業の推進)
●CO2排出削減(WWFとの対話を通して削減目標を掲げ、実行をWWFと第三者認証機関が検証する『クライメート・セイバーズ・プログラム』への参加の呼びかけ)
を、企業活動に密接な取り組みとし、責任ある行動を求めています。
── WWFとパートナーシップを組むことの意義は。
WWFが提示した厳しい基準を乗り越えていること自体が、企業独自の環境行動と一線を画し、世界的な評価につながります。「クライメート・セイバーズ・プログラム」への日本の参加企業は、現在、佐川急便とソニー。その他水資源保護と温暖化防止に取り組むコカ・コーラ、黄海周辺の環境保全活動を支援するパナソニックなど、様々な企業がWWFとの連携プロジェクトを実施しています。
── 今後、働きかけを行っていきたい分野はありますか。
アマゾンや東南アジア等の熱帯林消失の主たる原因は、大豆、サトウキビ、パームなどの農園開発で、植物性製品を猛烈に消費している産業構造に問題があります。小売り企業に適正な商品の仕入れ、販売を働きかけるなど、深刻な現状を訴えていきたいです。