国民の立場から見て、官公庁のコミュニケーションはきちんと伝わっているのか。また、問題点は。日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の最高顧問、三村光代氏にお話をうかがった。
情報が届きにくい所に目を配った広報が必要
── 協会の活動について。
当協会は、消費生活アドバイザーと消費生活コンサルタントの資格をもつ会員で構成しています。アドバイザーは、企業と消費者の架け橋として、コンサルタントは消費者の知恵袋として活動しています。協会は今年設立20年、会員数は3,800余名です。
消費者救済事業や調査研究など、協会の活動は多岐にわたります。代表的な取り組みとして「ウイークエンドテレホン」があります。会員の多くが自治体の消費生活センターに勤務していますが、行政が休日の週末に、電話相談を受けています。相談業務は1991年にスタートし、昨年は裁判外紛争処理機関としての認定を法務省からいただきました。会員の多くが各省庁や地方行政の審議会に委員として参加し、施策等に消費者の立場から意見を述べるなど参加しています。行政、業界団体、消費者関連団体などの関係機関との交流も行っています。
── 活動を通じての官公庁コミュニケーションの印象や疑問は。
ウイークエンドテレホンにはいろいろな相談が寄せられますが、例えば、期日内であれば購入契約の解除ができる「クーリングオフ」に関する相談が目立ちます。消費者はクーリングオフという言葉は知っていても、契約相手の企業への通知が「期間の最終日の消印有効」とは知らないことが多いのです。実際は日曜でも郵便局の当日の消印があれば、契約は無条件で解約できます。でも「日曜は郵便局があいていないから」と思い、与えられた権利が行使できないケースも少なくないのです。このような、必要で重要な情報が消費者に届いていないと痛感します。
確かに役所に出向けば説明の書いてあるパンフレットがあったり、最近ではホームページなどに詳細な説明がありますが、すべての人が、いつでも役所に行ける、インターネットを閲覧できるとは限りません。むしろ、「情報弱者」のお年寄りなどが困っていることの方が多いのです。消費者の生活に直接的に損益を与えるものは、パンフレットを作ればよい、ホームページに載せればよい、だけでは不親切でしょう。また、難しい言葉遣いや表現が多いですね。
── 最近、官公庁の新聞広告による情報発信が増えています。
新聞は、大体どの家庭でもとっていて、毎日確実に配達される媒体です。そこに情報が載っていたり、情報がどこにあるのか説明してくれていたりすれば、「情報にたどり着けない」といったことは少なくなるものと期待します。
だからといって細かい文字でびっしり説明すると、読む気も失いがち。ポイントを押さえてホームページなど情報の場所に誘導する、Q&Aやクイズ形式といったおもしろそうな構成にするなど、読ませる工夫は必要でしょう。