高齢者の自立を促すサービス業を創造する

 「生涯リゾート生活」というスローガンを掲げ、高級老人ホーム・リゾート・海外展開という三つの柱でシナジーの創出を図っているロングライフホールディング。代表取締役社長の遠藤正一氏に聞いた。

──日本の高齢者福祉について、どのように考えますか。

遠藤正一氏 遠藤正一氏

 私は、当社のような民間が立ち上がってこそ、日本の高齢者福祉に明るい未来が開けると考えています。社会福祉法人は、福祉の志や使命感がなくても、形式基準を満たせば国の補助金をもらって運営できます。政府の補助金事業は、「とにかく事故さえ起こさなければいい」という発想になりがちです。その結果、利用者が「自分で何かしたい」という欲求を奪ってしまう。つまり、コストと人手をかけて過剰な介護をすることで、高齢者の自立の機会を奪い、いきいきと輝けるセカンドライフを奪っているんです。

──ロングライフホールディングは、「高齢者の自立を促すサービス業を創造する」という概念で活動しています。

 「老いるとは楽しむこと、耐えることではない」。これは、1998年から2001年にオーストラリアの高齢者担当大臣を務めたブロンウィン・ビショップ氏の言葉です。全くその通りだと思います。日本社会は、行政もマスコミも、高齢者をひとくくりにして「かわいそうだから、助けなければ」と、弱者扱いする向きがあります。私はそういう社会の風潮には反対です。

 日本の総人口に占める65歳以上の人口の割合は3割近く、その多くが団塊世代です。団塊世代は、多様な消費文化を持ち、高品質を知っています。好奇心旺盛でアクティブで、やりたいことを実現する時間とお金もある。

 当社は、「生涯リゾート生活」というコンセプトを掲げています。具体的には、リゾートのような心地よい環境、空間、サービスを通じてお客様が本当に求めている満足を届けています。

──ロングライフのサービスの特徴は。

 ロングライフの老人ホームは、風、光、水、緑など自然との共存を重視するなど、設計やデザインにもこだわっています。お客様のお子さんやお孫さんが気に入って長居していかれる光景も多く見られます。質の高い身体ケア、24時間365日体制の医療サポート、健康的でおいしい食事なども徹底しています。また、お客様が培ってこられた文化的背景を尊重し、有名店で食事を楽しむクラブやお稽古ごとを楽しむクラブなどを企画しています。10年以上前からお客様の海外旅行も企画しています。認知症の方や、車いすの方をお連れすることもあります。

──中国、インドネシア、韓国にも事業を拡大しています。

 ケアサービスの国際貢献を通して、アジアの、ひいては世界の平和に少しでも貢献できたら……。そんな思いから、海外進出を決めました。中国では青島市に有料老人ホーム、インドネシアのジャカルタではケア付きリゾートレジデンスを建設。韓国では在宅介護サービスを展開しています。

 当社の事業は、現地の行政にも影響を与えています。例えば青島市では、当社の取り組みがモデルケースとなったことで、「民間中心のケアサービスによって高齢者の自立を促す」という考え方に立脚した介護保険制度ができました。青島市のような取り組みが中国全土に広がれば、優れたケアサービスが日本以上に浸透するかもしれないと思っています。

──リゾート事業の展望は。

 当社と早くからつき合っていただきたいという思いから、リゾート事業の構想を練ってきました。今年9月には函館に駒ケ岳を臨む「ヒルズテラス函館」、10月には湯布院の温泉街からほど近い「湯布院別邸」がオープン。来年春には石垣島にプライベートビーチを擁する「コーラルテラス石垣島」、夏には箱根に富士山を臨む「箱根別邸」をオープンする予定です。

 いずれも、その土地でしか味わえない料理やアクティビティー、自然を最大限に生かしたおもてなし空間、ロングライフ流のホスピタリティーを提供していきます。ロングライフが運営する老人ホームへ入居される会員の皆様に向けた特典もつけています。

──高齢者介護の課題にどう取り組んでいきますか。

 ロングライフの優位性は、フリーダイヤル一本で必要なケアサービスがわかることです。オムツや介護ベッドの相談から老人ホームの相談まで、すべてです。実は私自身、母親が認知症になった時にパニックになってしまい、何から始めたらいいのかわからなくなってしまったんです。その時、当社のサービスに助けられました。

 高齢者介護は、介護される人の文化的背景、質の高い身体介護、環境、この三つを分けて考えないといけません。「家族が全部やらなければいけない」と気張ってしまうのがいちばん良くない。身体介護はむしろ家族ではなく、ノウハウを持っているプロに任せた方がよい場合が多いのです。介護される人が「家族に迷惑をかけている」「下の世話をさせて恥ずかしい」などと思い悩んでしまうんです。

 家族は、一緒におしゃべりしたり、映画や芝居を見たり、外食したりして、楽しい時間を共有したらよいのです。事業を通じてそうしたことも提唱し続けていきたいですね。

──愛読書は。

 学生時代に「自分は何のために生まれてきたのだろう」と思い悩んでいた時に出会い、心が救われた『聖書』です。今も常に傍らにあります。

 私が「おやじ」と呼び、一生の師と仰ぐ「聖隷福祉事業団」の創設者、長谷川保の半生をつづった『夜もひるのように輝く』も大切な心の書です。

遠藤正一(えんどう・まさかず)

ロングライフホールディング 代表取締役社長

1955年大阪府生まれ。77年近畿大学法学部卒。79年聖隷福祉事業団入団。86年関西福祉事業社(現・ロングライフホールディング)創業。2002年ジャスダック市場上場。08年ロングライフホールディングに社名変更。著書に『おもろい人生ここにあり!』(鳥影社)など。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、遠藤正一氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.88(2016年8月26日付朝刊 東京本社版)