ドイツ車のプレミアムブランドとして、コアなファンを持つアウディ ジャパン。今年1月に社長に就任した斎藤徹氏は、長く自動車業界の海外事業部門で培った経験を生かし、アウディブランドの躍進を目指している。
──昨年、アウディ ジャパンに入社、今年1月に社長に就任しました。アウディブランドを、どのようにとらえていますか。
アウディ ジャパンに入社する以前は、主に海外販売を担当し、ヨーロッパ、中近東、ロシアなどを渡り、その後は高級ブランド部門を統括しました。アウディは、以前から元気のある高級ブランドとして注目していました。
縁あってアウディ ジャパンに入社しました。改めてすべての車種に乗って実感したのは、商品力の高さです。企業人人生の集大成として、持てる情熱のすべてを注ぎたいと思っています。
──今後、注力していきたいことは。
日本の登録車マーケットにおける輸入乗用車のシェアは約9%、うち70%以上をドイツ車が占めます。ドイツ車の中でアウディは4番手。市場参入が遅れたことが主因だと考えます。裏を返せば、伸びしろが大きいということ。アウディの商品力を持ってすれば、ドイツ車のトップも十分に狙える。現在足りていないのは、ブランドバリューの発信です。販売店の拡充やブランドコミュニケーションの強化を進めることで、成長に弾みをつけていきたいですね。
──アウディブランドの魅力とは。
アウディのクルマには、様々なユニークバリューがあります。デザインはシンプルで無駄がなく、それでいて主張があり、長くつき合っても飽きがこない。心の豊かさの追求とともにミニマリズムに価値を置く人が増えている中、アウディの機能美はますます注目されていくでしょう。快適な走り、燃費の向上、プラグインハイブリッドなど、イノベーティブな技術にも注目して欲しい。また、見えないところまで生真面目に作り込んでいる。例えばトランクルームのシートをめくると、鉄板まで塗装をかけ、丁寧に出っ張りを除いていることがわかります。そうしたアウディのユニークバリューを、広告宣伝にとどまらず、あらゆる場で伝えていきたいと考えています。
──今年の展望は。
今年は新型車の投入が相次ぎます。2月には8年ぶりにフルモデルチェンジした主力セダン「A4」を発売。3月には10年ぶりにフルモデルチェンジした新型SUV「Q7」を発売し、入荷を待っていただくほどの人気となっています。4月にはステーションワゴン「A4アバント」を発売。また、7月にはフルモデルチェンジするスポーツカー「R8」のデリバリーを開始。「R8」は自動車レース「SUPER GT」で活躍しています。
商品の鮮度が上がる今年は、過去最高だった一昨年の31,413台を上回る台数の販売を目指しています。
──これまでに培った経験を、アウディでどのように生かしていきますか。
クルマという商品は、ハードの確かさはもちろん、お客様の信頼や安心を守ることが重要で、プレミアムブランドは、特にそれが問われます。以前プレミアムブランドを担当していた時には、ブランドマネジメントの難しさと醍醐味(だいごみ)の両方を経験しました。培ったノウハウは、アウディでも大いに生かせると思っています。
また、海外事業部門では、ヨーロッパエリアも担当したので、アウディドイツ本社の考え方を理解し、異文化のスタッフと協調していくのは難しくありません。そうしたことも自分の強みだと思っています。
──リーダー哲学は。
第一に、明確なビジョンを持つこと。第二に、ビジョンの実現策を練り、腹に落とすこと。第三に、ビジョンを社員やディーラーとシェアし、ともに実現を目指すこと。ビジョンを具体的な言葉にすると、「アウディを憧れのブランドに」。日本のクルマユーザーに、「アウディに乗りたい!」「アウディが欲しい!」と切望してもらえるようなブランドに育てていきたいですね。
──愛読書は。
好きな作家は、『南海放浪記』を書いた白石一郎や、『坂の上の雲』の司馬遼太郎、『天平の甍』の井上靖など。異国の人や文化に接して学び、成長した人物の物語が好きです。ロシア駐在時には、ロシアを舞台にした『おろしや国酔夢譚』を面白く読みました。登山が趣味なので、山岳や自然に関する名著を文庫化しているヤマケイ文庫をよく読み、特に田部重治の『山と溪谷』を愛読しています。
アウディ ジャパン 代表取締役社長
1960年東京生まれ。82年慶應義塾大学経済学部卒。同年日産自動車入社。主に海外事業部門でキャリアを積み、日産ロシア社長、日産ヨーロッパ上級副社長、インフィニティ部門統括執行役員などを歴任。オーテックジャパン代表取締役最高執行責任者(COO)を経て、2015年4月アウディ ジャパン販売代表取締役社長に就任。16年1月から現職。
※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、斎藤 徹氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)