超高齢社会に向けて、認知症の治療を支援する新商品を発表

 「保険組曲Best」など、時代のニーズを捉えた保険商品を業界に先駆けて開発し、支持されている太陽生命保険。この3月には、新商品「ひまわり認知症治療保険」を発表した。今後の展望や新商品の特徴などについて、代表取締役社長の田中勝英氏に聞いた。

田中勝英氏 田中勝英氏

──まず、今年の展望について聞かせてください。

 これまで十数年をかけて準備してきたことが整い、いよいよ本格始動できる年を迎えました。さかのぼること15年前、お客様窓口のある支社の作業にかかる人員は、膨大な数にのぼりました。作業とはつまり、書類をコピーして、きれいに分類して……といった単純な事務作業です。作業はそれなりに達成感があるので、人はついそれに時間を割く。しかし、仕事というのは本来、新たな価値を生むべきもので、作業から新たな価値は生まれません。当時の私はお客様サービス部門にいて、業務の自動化やペーパーレス化など、作業の効率化に努めました。

 2010年には業務改革をスタート。営業職員用の携帯端末をより高機能なものに一新し、契約申し込みのペーパーレス化などをはかりました。さらに昨年は、これまでの取り組みの集大成として、「業界最高水準の業務効率」「強い営業力」「高いお客様満足」を同時に実現するため、「EVOLUTION’15」という業務改革プロジェクトに取り組みました。

 こうした努力の結果、支社の単純な事務作業をなくすことにより、作業に割かれていた人数を開発や営業に移行し、新たな価値の創造とお客様とのコミュニケーションに振り向けられるようになりました。

──業務改革に力を入れたそもそもの理由とは。

 ターニングポイントは、2005年に社会問題に発展した保険金の不払い問題です。「請求がないため支払いを行わない」という請求主義から、「請求がなくとも支払うべき」という案内主義に、業界全体がシフトしました。当社としても真摯(しんし)に反省し、お客様とのコミュニケーションを拡充。「お客様を追いかけてでも保険金を支払え」と号令をかけ、70歳以上のお客様の全軒訪問も始めました。

──全軒訪問を通じてどんな課題が見えてきましたか。

 給付金を請求していないお客様もいました。中には「請求できるのは知っているが、あえてしなかった」という方もいて、その多くが「高齢になると、病院で書類をもらったり、請求書類を書いたりするのが面倒だから」という理由からでした。そうしたことのないよう、当社の営業が丁寧にご案内し、手続きのサポートを行っています。

──この3月に認知症の治療を支援する新商品を発表しました。

 厚生労働省によると、認知症患者は2025年には2012年の1.5倍の700万人に達し、65歳以上のシニア層の約5人に1人が認知症になると言われています。そうした社会を見据え、業界で初めて「ひまわり認知症治療保険」という商品を開発しました。

 認知症は、早期にケアや治療を行うことで、進行を遅らせたり、症状を緩和させたりできる病気です。新商品は、認知症と診断され、時間・場所・人物のいずれかの認識ができなくなり、その状態が180日継続した場合に給付金をお支払いするものです。

 この保険に加入することで、認知症に前向きに向き合い、健康な老後をお送りいただきたい。お客様の幸せに貢献し、超高齢時代を迎えた日本社会の課題解決に寄与できる生命保険会社を目指していきます。

──看板商品「保険組曲Best」が、女性や高齢者を中心に支持されています。

 「保険組曲Best」は、長く保険業界の常識だった「主契約+特約」という商品の仕組みを業界で初めて全廃し、主契約を自由に組み合わせてお客様のニーズに合った保障内容を選べるようにしました。保険をシンプルにして、不払いや誤払いを減らす狙いがありました。おかげさまで支持が広がり、2008年の発売以来、累計販売件数が200万件を超えました。加入年齢を85歳まで拡大するなど、商品は進化し続けています。

──女性アスリートの支援に積極的です。

 当社のお客様も社員も女性が多く、女性支援は事業と密接に結びついています。そうしたことから、女性アスリートを支援する活動を続けています。ラグビー女子日本代表は5年前の発足時から支援しており、これからもオフィシャルスポンサーとして応援していきます。アイスホッケー女子日本代表、女子プロゴルファーのテレサ・ルー選手の応援もしています。当社が支援する選手たちは成長が著しく、それはちょっとした自慢です(笑)。

 ちなみに、3年前の創業120周年の節目に実施した社名の知名度調査の結果と比べると、今の数字は倍に伸びています。広告展開に加え、支援しているスポーツの躍進も大きく関係しているのではないかと思っています。

──仕事を続ける中で、転機のようなものはありましたか。

 ちょうど30歳の時に、ある団体の保険商品の企画を任されたのですが、なかなかうまく運ばず、本社から「名誉ある撤退をせよ」と言われました。失敗したら退社しようと覚悟を決めて企画成立を目指していた時に、担当専務が「納得できるまでやれ。骨を拾ってやる」と励ましてくれましてね。この時、「自分が評価されたい」という欲が一切なくなり、仕事の成功自体が目的になりました。仕事への向き合い方が変わったという意味で、一つの転機だったと思います。

──リーダー信条は。

 「夢を持てない人はリーダーの資格がない。夢を伝えられない人はリーダーの資質がない」「過去に責任を持ち、未来に夢を持つ」。この二つの言葉を常に肝に銘じています。

──愛読書は。

 開高健が大好きで、全作読んでいます。小林秀雄も好きな作家で、全集をそろえました。中国語を勉強していたので、中島敦や武田泰淳など中国史に精通する作家の作品も多く読みました。大学時代に読んだ中で今も心に残っているのは、村上一郎の『草莽論 その精神史的自己検証』、武田泰淳の『司馬遷 史記の世界』、井伏鱒二の『厄除け詩集』などです。

田中勝英(たなか・かつひで)

太陽生命保険 代表取締役社長

1954年香川県生まれ。77年慶應義塾大学経済学部卒。同年太陽生命入社。2000年契約サービス部長。取締役、常務取締役、お客さまサービス本部長、代表取締役専務執行役員などを経て、09年代表取締役副社長兼営業本部長。11年4月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、田中勝英氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.83(2016年3月15日付朝刊 東京本社版)