「世界一の企画会社」を目指す

 今年4月、カルチュア・コンビニエンス・クラブは、組織のフラット化と情報伝達の迅速化を目指してグループ内の組織編成を行うと共に、完全子会社のTSUTAYAをCCCへと商号変更した。「僕が売ってきたのはビデオでも本でもなく、新しいライフスタイルの選択肢」。経営者は社内外にあるリソースを顧客価値に転換するのが仕事だと、増田宗昭社長は語る。

増田宗昭氏

―― 小さなベンチャーとして生まれた会社が、オンラインサービスやカード事業など、事業を拡大しながら成長した中で、トップに必要なこととは何でしょう。
今の社会には多様なソリューションが用意されていますし、誰もがメディアを立ち上げられる時代です。そうなった時に何が起こるかというと、顧客価値競争です。では顧客に選ばれるためのポイントは何かというと、「企画」だと僕は思います。
中でも経営者に大切なのは、「決める」ということです。例えばトヨタさんがプリウスを、最低価格205万円に値下げし、全ディーラーチャネルで売ると決めた。それが経営であり、決めるために必要なのが情報です。ところが組織には階層が付きもので、これが企画や情報の質を劣化させてしまいます。ですから会社をいかにフラット化させるかが重要ですね。

―― カルチュア・コンビニエンス・クラブの将来をどのように描いていますか。
モノも情報も不足していた時は、メディアはある情報を広範囲へ大量に伝えることが大きな役割でした。次の段階では商品やサービスが多様化し、多くの情報から選ぶ必要が出てきます。そこで必要になったのが検索機能。グーグルや楽天、カカクコムなどがその代表例です。そして今は商品の多様化と共に、消費者も多様化した第三のステージです。
これからは、個人と情報とのマッチングゲームが起こります。CCCは一人ひとりが「自分らしさ」を見つけるためのエージェントとなり、リコメンドをする。そのためのプラットホームになることが、今の僕らの目標です。

―― 愛読書を教えてください。
大学時代に読んだ浜野安宏さんの『ファッション化社会』です。浜野さんは、「すべての商品はファッション商品となる」、つまりスタイルとデザインといった個人の好みが購買動機の軸になると宣言しました。この本をきっかけに鈴屋さんに入社しましたが、やがて服は自分の生き方を表現するメディアとなり、社会全体がまさにファッション化しました。
CCCの立ち上げも、浜野さんの「ライフスタイルをプロデュース」するという考え方に影響を受けています。ライフスタイルは、自分の中から急に生まれるものではなく、本や映像作品など、さまざまな情報の中から作られていくものです。一人ひとりのライフスタイルの創造にどれだけ役立つことができるかに、これからも僕らの役割があります。

文/松身 茂 撮影/星野 章

増田 宗昭(ますだ・むねあき)

カルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役社長兼CEO

1951年大阪府生まれ。同志社大学経済学部卒業後、ファッション専門店「鈴屋」に入社。入社2年目で軽井沢ベルコモンズの開発を任されたほか、販促ディレクターなどを歴任。1983年、退社後に「蔦屋書店」を創業。1985年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)設立。CCC代表取締役社長に就任(現任)。2000年4月、CCCを東証マザーズに上場し株式公開。2003年、CCCをマザーズから東京証券取引所市場第一部に市場変更。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、増田宗昭さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.5(2009年7月10日付朝刊 東京本社版)