「地の塩、世の光」をモットーに社会に貢献する人間を育成する

 文理融合型を目指した相模原キャンパスの開学、全学共通の教養教育「青山スタンダード」の導入など、近年、新しい知の環境作りに積極的に力を入れる青山学院大学。今年4月には2学部を新設し、国際社会における日本の知的資産である「文化」と「情報」に斬新なアプローチを試みる。昨年12月に学長に就任した伊藤定良氏は、「新しい器に、充実した中身を盛り込むのが自分の使命」だと語る。

青山学院大学学長伊藤定良さん 伊藤定良氏

── 全入時代を迎えた今、大学を取り巻く環境をどうご覧になっていますか。

 少子化を背景に、大学は冬の時代といわれて久しく、厳しい競争にさらされています。自分たちの独自性や魅力をいかに訴え、社会に理解してもらうか。今、さまざまな改革が各大学で行われています。

 ただし大学という場が、学生が“知”と出会い、学びによって成長する場であることは変わりません。青山学院の場合でいえば、キリスト教信仰に基づく建学の精神という伝統の上に、発展することが基本です。本学のスクールモットーは「地の塩、世の光」。マタイの福音書にある言葉ですが、社会を清め、光を照らして導く、社会に有用な人材を送り出すことが私たちの務めです。この教育方針を堅持しながら、「社会、そして世界と共に歩む大学」として歩んでいきたいと思っています。

── 中高一貫校への入学希望者が増加するなど、教育への関心が低年齢化しています。青山学院は幼稚園から大学院までを擁しますが、その特徴をどのように強めていきますか。

 本校の特色のひとつは、創立以来、「英語の青山」と言われるほど定評のある英語教育です。今年の春からは、一貫教育の中でその伝統を生かす「4・4・4制」という新しい試みが立ち上がります。このカリキュラムでは小学校1年生から高校3年生までの12年間を4年ごとに区切り、語学教育を実践的に強化し、さまざまな国際交流も図っていきます。

── 今春から、総合文化政策学部、社会情報学部の2学部がスタートし、経済学部には現代経済デザイン学科が新設されます。

 総合文化政策学部では、社会の中の文化芸術活動をマネジメントできる創造力と実務能力を兼ね備えた人材を育成します。青山キャンパスの周辺には、文化的な刺激が満ちています。街の個性をバックに、文化の多面的なあり方を研究する学部が欲しいと思いました。

 社会情報学部では人文社会学と情報科学の二つを柱に、現代社会の基盤となっている「情報」を研究し、組織や社会のあり方を読み解いていきます。学部を設置する相模原キャンパスには理工学部がありますから、研究面で相乗作用が出てくることも期待しています。

 現代経済デザイン学科は、国や市場といった従来の経済の枠を超えて、「公共」「地域」といった視点から新しい社会経済システムを設計できる能力を育むことを目指しています。

── 今、学生や親、社会から、大学に何が求められているとお考えですか。

 高度化した社会を生きるため一番大切なのは、自分の頭で物事を考えることです。自主性や自立心をもって行動できる学生を育てることが、大学の社会貢献であり、企業が求める人材育成につながるのではないでしょうか。

 学生たちによく言うのは、「小さな問いを大切に」ということです。ネットにアクセスすれば、答えが簡単に見つかるかもしれません。だからこそ自分で考え、他人や書物からの多様な考え方に触れて、答えを見つける手間をかけてほしいと思います。キャンパスは、異なるバックグラウンドをもつ学生や教員が集い、新しい価値観や考え方から知的な刺激を受けながら、自己を形成するための場なのですから。

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 新学長としてのスローガンを尋ねると、「新たな『知』への挑戦。21世紀の教育研究という原点にこだわってみたいと思います」と、柔らかな表情の中に固い決意をにじませる。昔から和洋問わずの多読派。最近は山本周五郎や藤沢周平など、市井の人々の清廉な生き方を描いた物語にひかれるとか。「『男はつらいよ』も全部見ています」。西洋史家の意外な一面がのぞいた。65歳。

略歴
1966年
東京大学文学部卒業
1972年
東京大学大学院人文科学研究科 西洋史学専門課程博士課程 単位取得済退学。文学修士
1978年
青山学院大学文学部に就任
1987年
同大学教授
2004年
同大学文学部長。文学研究科長
2007年
同大学学長(任期は2007年12月から2011年12月まで)
専門はドイツ近代史。歴史学研究会、史学会、社会思想史学会、日本西洋史学会等に所属

撮影/星野 章
(『広告月報』2008年03月号)