楽天グループの強みと「貯蓄から資産形成へ」の機運を生かし、さらなる成長を目指す

新規口座開設数4年連続NO.1、NISA口座開設数3年連続No.1、iDeCo新規加入者3年連続No.1(※)、総合口座は800万口座超と、好調が続いている楽天証券。その背景や今後の取り組みについて、代表取締役社長の楠雄治氏に聞いた。(※2022年3月30日現在、楽天証券調べ)

──好調が続いています。その背景や理由についてどのように分析していますか。

2303_top_rakutenshoken_01
楠雄治氏

 楽天証券の強みは、楽天グループ各社のサービスを利用すると貯(た)まる「楽天ポイント」で投資信託などが購入できる「ポイント投資」や、「楽天カード」クレジット決済での投信積立など、楽天経済圏の一員であることを生かしたサービスです。この3月には、楽天グループのオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」決済での投信積立設定者が、昨年6月のサービス開始以来わずか約9カ月で100万人を突破しました。

──昨年に岸田総理より「資産所得倍増プラン」が打ち出され、年末の税制改正大綱ではNISAの恒久化と投資枠拡大などが発表されました。人々の今後の投資動向をどのように予測しますか。

 例えばつみたてNISAの上限金額は現在年間40万円ですが、2024年以降は120万円まで引き上げられます。当社のつみたてNISAのお客様の約2/3は投資枠の上限いっぱいまで資産運用をされており、その中には「非課税枠が広がればもっと増額したい」というお客様が多くいらっしゃいます。ですから、すでに楽天証券の口座をお持ちのお客様の投資額はさらに拡大すると見ています。また、新たなお客様も増えると予測しています。日本の個人の金融資産は2000兆円にのぼり、その半分以上は銀行預金として眠っています。投資のメリットの拡大とともに「貯蓄から資産形成へ」の機運はますます高まっていくと予測しており、特典がつく新規加入キャンペーンなどにも力を入れています。

──多様化する投資家のニーズに対応するために、競合との差別化や、組織・グループ全体として取り組んでいることは。

 この4月に1株から投資できる「かぶミニTM(単元未満株取引)」を開始します。通常取引は100株単位(単元)ですが、取引単位に満たない単元未満株を1株から売買できるサービスです。例えば1単元100株の銘柄の株価が1000円の場合、通常取引の場合、10万円からの取引となりますが、「かぶミニTM」では、1株1000円から売買が可能です。1株から取引できる米国株に加え、日本株についても有名企業や成長企業への投資が小口から気軽に始めることができるようになります。

 資産に余裕のあるお客様に向けては、楽天証券が提携するIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を通して、お客様のライフステージに沿った資産運用を長期的にサポートしています。ちなみに当社では、国内でいち早くお客様のお預かり資産に連動してIFAの報酬が増減する「管理口座コース」の提供を開始しました。楽天証券がIFAのお客様から取引のつどいただいていた売買手数料を従来よりも安く、または0円とする代わりに、お客様の預かり資産残高に一定の率を乗じた額を管理口座料としていただき、当該管理口座料からIFAへの報酬が支払われる仕組みです。アメリカではこのようなコミッション型(売買手数料)からフィー型(預かり資産に応じた報酬体系)へ転換するアドバイザーが増え、顧客の信頼を獲得しています。日本でもお客様とウインウインの関係が長期的に続く残高フィーモデルを定着させていきたいと思っています。

──今後の課題について、お聞かせください。

 現在、先述の「ポイント投資」やクレジットカード・電子マネーでの投信積立サービスに加え、スマートフォンでの取引の充実化や、お客様とそのご家族が保有する楽天証券の総合口座を家族登録することで、お客様ご自身とご家族がそれぞれの取引に応じて様々な特典を獲得できる「家族プログラム」などを提供しています。こうした生活の一部として楽天証券を活用できるような仕組みを今後さらに充実させていきたいと考えています。

 また、オンライン上での取引だけでなく、より踏み込んだ資産運用のコンサルティングサービスの向上を図り、豊富な知識と実務経験を持ったアドバイザーの充実にも努めています。

──様々なキャリアをお持ちです。今も心に残っている学びや職務の経験についてお聞かせください。

2303_top_rakutenshoken_02

 最初の就職先は人工知能の最先端を走っていた日本ディジタルイクイップメント(現・ヒューレット・パッカード)で、システムエンジニアとして8年間勤めました。後半は大手生命保険会社の資産運用のシステムを総入れ替えする案件の受注にセールスエンジニアとして関わり、最後の1年はシステムの開発部隊を率いるプロジェクトマネジャーを任されました。創業したてのスタートアップと一緒に開発に取り組んだのですが、苦労しながらも楽しそうにプロジェクトに取り組むスタートアップの人たちの姿を見て、自分でビジネスをやってみたいという思いが芽生えました。

 1994年にシカゴ大学ビジネススクールへ留学。96年にMBAを取得後、アメリカのコンサルティング会社・ATカーニーの東京オフィスに入社しました。ここではクライアントのBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング=ビジネスのプロセスを抜本的に見直し、業務、フロー、管理機構、情報システムなどをデザインし直すこと)などを担当しました。そして3年目の時に楽天証券の前身にあたるDLJディレクトSFG証券が設立されたニュースを知り、門を叩(たた)きました。アメリカでの生活やコンサルティングの仕事を通してネット証券ビジネスの勢いを目の当たりにしていたからです。当時社長の國重惇史さんとの初面談の日に「明日から来て」と言われ(笑)、ネット証券の世界に入りました。ネット証券ビジネスを始めてから気づけば今年で24年目。今振り返ると、最初の会社でスタートアップの人たちの輝きを見たことが私の大きな転機だったような気がします。

──リーダーとしての信条は。

 「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己を盡(つくし)て人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし」。『西郷南洲遺訓』の25条にある一節で、日々の行動指針としています。

──愛読書は。

2303_top_rakutenshoken_03

 先に触れた『西郷南洲遺訓』は何度も読み返しています。ビジネス書は『イノベーションのジレンマ』、紀行本は『深夜特急』、小説は『不毛地帯』に影響を受けました。最近の本では故・岡本行夫氏の『危機の外交 岡本行夫自伝』が心に残っています。

楠雄治(くすのき・ゆうじ)

楽天証券 代表取締役社長


1962年広島県生まれ。86年広島大学文学部卒。同年日本ディジタルイクイップメント(現・ヒューレット・パッカード)入社。96年シカゴ大学ビジネススクールMBA取得。同年A.Tカーニー入社。99年DLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)入社。2006年10月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、楠雄治氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.143(2023年4月9日付朝刊 東京本社版)3.7MB


「リーダーたちの本棚」の連載が書籍化されました。詳しくは以下の関連記事をご覧下さい。

【関連記事】
朝日新聞広告特集「リーダーたちの本棚」の連載が書籍化『私をリーダーに導いた250冊』が刊行