早いものでもうすぐクリスマス。ロンドンもクリスマスムード花盛りである。ただ、東京やニューヨークのように豪華なLED装飾やツリーがひしめくわけではなく、ロンドンのクリスマスはやや地味といえるかもしれない。それでも今年は昨年より豪華な気がするのは、ダイヤモンドジュビリーや五輪、パラリンピックのビッグイヤー、「London2012」の締めくくりだからだろうか。
ヨーロッパでは「クリスマスは家族と過ごすもの」という伝統が健在で、私のまわりの人たちもイギリス国内をはじめ、オーストリアやスペインに里帰りを計画中だ。このあたりは日本の年末年始に似ている。それ故、クリスマス商戦の広告メッセージは「家族」をテーマにしたものが多い。もちろん日本と同じように若年層のカップルをターゲットにしたものもあるが、割合としては少ない。ちなみに若年層向けのキャンペーンで目につくのは、クリスマスプレゼントの定番である香水だ。
最近のデーリー・テレグラフの記事によると、英国人の今年の平均的なクリスマスショッピング予算はおよそ592ポンド(約77,000円)。これは昨年に比べると約46ポンド(約5,980円)高いそうだ。所得格差の大きいイギリスにおいては、こうした費用をローンでやりくりする人たちが、今回の調査対象2,000人のうち約半分だという。さらに調査時点で昨年のローンが残っている人たちが約20%という結果が出ている。
一方で、クリスマスショッピングを当て込んで意気盛んなのが、ネットショッピング業界である。世界最大級のインターネット通信販売、「eBay」のネットキャンペーンはオンライン広告がうるさいほど目につく。アマゾンの基幹配送センターには、臨時で1,000人以上が増員され、スーパーマーケットの最大手、「セインズベリー」はクリスマスと新年に向けて、約5,000人を臨時に雇用する予定である。
これだけ聞くと景気がいいように聞こえるが、10月の小売業界の売り上げは前月比で2カ月ぶりのマイナス基調となった。0.8%のマイナスだが、これは4月以来のマイナスで、ちょうど五輪、パラリンピックなどのビッグイベントを終えたことが理由なのか再び懸念材料とされている(数字は英国統計局発表)。
ここ数日、ドイツからは恒例のクリスマスマーケット(市内の中心の広場でクリスマスグッズから食べ物まで様々なものが売られる露店)の話題もニュースで取り上げられ、欧州全体でホリデームードがヒートアップしている。そして穏やかなクリスマスが終わると、お待ちかねの冬のセールが一斉にスタートする。街中がセール一色になる小売業界の華やかな商戦も、もう間もなくである。
(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 林田一祐)