イギリスはここのところ記録的な長雨が続いた。朝日新聞デジタルの「ロンドン・オリンピック・ページ」でコラムを執筆中のマクギネス真美さんのツイートではないが、「すでにロンドンの夏は終わった」とか「次、夏日が来るのは9月の数日かしら」などとイギリス人はみな真面目顔で語っている。実際、スコットランドやウェールズ地方では洪水被害も起こっており、なんだかおかしな夏を迎えつつある。
そんな中、6月のあたまにはエリザベス女王(2世)の在位60周年を祝うダイヤモンド・ジュビリーが盛大に開催された。初日のボートの祭典は途中から大雨。月曜夜の記念コンサートこそ晴れたものの、最終日の記念ミサとパレードはやはり雨にたたられた。それでも熱心な国民や観光客が街に繰り出したわけだが、この一大イベントを数字から見てみると次のようになる。
・ボートの祭典「ロイヤル・ページェント」の沿道観覧者数 120万人
・記念コンサートのテレビ視聴者 1,470万人
・バッキンガム宮殿前のガーデンでピクニックに消費されたワイン 1万本
・皇室御用達高級食材店「フォートナム&メイソン」では週末だけで3,000杯のグラス・シャンパンが消費されるなど、店としては通常の売り上げ40%プラス
とにかくよく雨の降った連休だったにもかかわらず、この数字を見る限り、いかに現在の英国王室、エリザベス女王が支持を集めているかお分かりいただけるだろう。当然、新聞各紙も連日皇室関連を大特集。別刷りに記念ピンナップ、国旗などなど様々なおまけやグッズを付けてのセールス合戦で、連日「Royal Edition」「Souvenir Issue」といった見出しが躍った。一方、広告はスーパーや小売店が「celebrate」 や「join the party」といった触れ込みで食材などのセールを競ったが、日本でよくみかける記念コインやグッズの販売・告知といったものはあまり見かけなかった。
こうしてみると国民総祝賀ムードにも見えるが、アンチ・ロイヤリストの人たちはさっさと国外へ旅行にお出かけ。ボートイベントが見られる「特等席」である、テムズ川沿いの高級アパートに住んでいるにもかかわらず、固く扉を閉ざす人の様子が、ホームパーティーで盛り上がる別フロアの光景とともにBBCで中継されたが、この辺のかたくなさもイギリスらしい風景であった。
経済効果100億ポンド(約1兆2,400億円)ともいわれるこの大祝賀フィーバー、賛否両論あるとはいえ、ギリシャからポルトガル、スペインへと飛び火したユーロ危機問題や記録的な失業率の上昇など険しい報道が続く欧州において、珍しく明るい話題だったといえよう。
(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 林田一祐)