先月に続いて交通広告の話題である。
聖火リレー用の点灯式も無事に終わり、いよいよロンドン五輪までカウントダウン・・・ではあるのだが、いまだ入国審査に何時間並ぶことになるのか、期間中の専用レーンはどのくらい有効か、など交通関係の話題が地元ニュースをにぎわせている。地下鉄やバスもまたしかりで、施設のアップグレード作業や混雑予想でネガティブな情報が後を絶たない。
そんな中、地下鉄構内やバス停などに一斉に掲出された広告がこちら。
広告主はロンドン交通局と五輪公共輸送機関の連名で、コピーはこんな風にうたっている。
1) 自転車は大会期間中、より早い交通手段かもしれません
2) 大会期間中、移動の一部を歩いたら早く到着するかもしれません
3) 並ぶのを避けて、移動はほかの手段を選びましょう
ほとんど「公共交通機関は避けて、歩きましょう」とも読める内容だが、そもそもロンドンの地下鉄は時間帯によってはすでに運航能力を超えている。日本ではまったく想像がつかないと思うが、とにかく恒常的に遅れるし、止まる。通常運行している状態では「Good Service」と表示されるのだが、「どこかGoodだ!」と、よく日本人コミュニティーで話題になるほどである。
バスは渋滞で遅れると突然行き先を変更して「このバスはここまでになったから皆さん降りてください」という状況は日常茶飯事である。昨年から、先行しているパリなどを見習って共用自転車の設置を進めたが、これがまた曲者。自転車は車道を走らないといけないため、車道に自家用車とタクシー、バス、バイク、自転車がひしめく。さらに自転車は二車線だろうが三車線だろうがおかまいなしに車道を横切るので、危険きわまりないのである。観光客用に車道を走るリクショー(人力車)や足こぎ三輪車については、許可証の是非が議会で提案されている最中、五輪関連でこのキャンペーン。大会期間中、関係車両は優先レーンを走る構想なので、一般の交通については当然ながら、大混乱が想定されている。
それを避けるために、期間中住まいを貸し出して海外へ脱出するという人が少なからずいるし、取引先でも時差出勤や在宅勤務を真面目に検討するところが出始めている。もちろん1万人を超す大会関係者や膨大な数の観戦・観光客がロンドンに押し寄せるので、経済的にはビッグチャンスであることには違いがない。一方で、訪れた人たちにネガティブなロンドンのイメージが形成されなければよいなと、少々複雑な気持ちで今後の動向を見守っている。
(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 林田一祐)