ポイ捨てはやめてリサイクル

 ロンドンにいて、よく日本の印象について耳にするのが「街や電車がきれい」という話題。東京にいたときにはなかなか気付かなかったが、確かにロンドンに比べるとゴミを目にする頻度が少ない・・・。というよりは、ロンドンはとにかくポイ捨て大好きな街で、道端だろうがバス、電車の中だろうが、なんでもその辺に放ったらかす。いまでこそ五輪を前に吸い殻入れの付いたゴミ箱の設置が進められているが、そんなものがあろうがなかろうが、吸い殻のポイ捨ては当たり前。ロンドン名物の2階建てバスに乗れば、座席にペットボトルやサンドイッチの容器が放置されているというのは日常茶飯事である。そしてこのポイ捨ての代名詞のひとつが“新聞”である。

 ロンドンはフリーペーパーがひしめいており、ここでいう「新聞」というのはフィナンシャル・タイムズやガーディアンといった有料紙ではなく、メトロやイブニング・スタンダードといった無料のもの。とくに地下鉄駅を中心に配布される「メトロ」は、皆が手にするのはよいが、読んだ端から座席や通路にポイ。駅の係員が大きなゴミ袋とハサミを手にせっせと回収するわけだが、車内に放置されるものまではなかなか手がまわらない。あまりに数が多いためドアの開閉に支障をきたしたり、ダイヤの遅れの原因となったりすることもある。そこで、この春はその対策として、ロンドン交通局がこんな広告を登場させた。

  シンプルな文字とイラストで統一された広告のコピーは3種。
1) あなたの読んでいる新聞はゴミです
2) この広告はゴミです
3) ゴミ箱に捨てられないものは、運行ダイヤを遅らせます

  この業界に身をおく者としてはかなり刺激的なコピーだが、サブコピーで「地下鉄に放置された新聞はドアの開け閉めの障害となり、運行ダイヤを遅らせます。新聞をご自身でゴミ箱へ、そしてリサイクル!」と入る。この広告自体は「メトロ」に掲載されると同時に地下鉄の中や、構内の屋内広告として掲出されている。

  五輪まで100日を切り、期間中の交通渋滞や公共交通機関の乱れが心配されるロンドン。このキャンペーンもそれを見越しての一環ではあるが、いい意味で活字大好きのロンドンっ子たちの悪癖は、そう簡単に是正されるわけもなく・・・。大会組織委員会は「世界中のみなさんの期待を裏切らない」と力説するが、ぜひクリーンな街とスムーズな公共交通機関の運営という点でも期待を裏切らないでほしいと、切に願う今日このごろである。

(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 林田一祐)