11日、東日本大震災から1年を迎えた。英国メディアもその直前からさまざまな記事を掲載し、立ち直る日本と変われないでいる日本を様々な角度から伝えた。BBCがオンラインで提供した「日本の震災:そのとき、そしていま」というページなどは、各地の震災直後と今を立体的に示すなどして、1年という時の流れを広く報道した。
チャリティー活動も日本人コミュニティーが主催するものからローカルのものまで、大小さまざまなイベントが開催され、それは現在も続いている。もちろん好意的な側面ばかりではなく、特に原発に関する内容には手厳しいものも少なくない。しかし自分自身が営業で各国を回っていても「日本国民の(震災直後の)冷静な対応と自制力には敬服した」とか「最近、地震は起きていないのか」などと様々な声をかけていただくことが多いのは、最近「アジアといえば中国」という風潮が顕著ななか、依然日本への注目度が高いことの表れだと感じている。
1年前のこの欄で、英国の新聞「インディペンデント・オン・サンデー」が「がんばれ日本、がんばれ東北」と1面ぶち抜きで応援紙面を作って発行したというエピソードを紹介したが、今回はそれに応えた在英日本大使館の事例を紹介したい。 (1年前のコラムはこちら⇒https://adv.asahi.com/overseas/contents160001/11053538.html)
同紙のメッセージは瞬く間に英国の他メディアや日本のメディアでも紹介されたが、この3月11日には林景一・駐英国特命全権大使のメッセージ入りの全面広告が同紙に掲載された。「ありがとう、英国。がんばれ、東北。」と描かれた広告デザインは1年前のインディペンデント・オン・サンデーを模したもの。
「2011年3月11日に壊滅的な津波が日本を襲い、およそ2万人の方がなくなったか、いまだ行方不明です。インディペンデント・オン・サンデー紙は日本、そして最も甚大な被害を受けた東北地域の人々への支援の声を掲載しました。本日は、日本からのメッセージをお届けします」(日本語訳・筆者)
こう示された広告には、林大使のメッセージが続く内容で、これまでの支援への感謝と今後の日本への友好関係継続を訴えた。
とかく、かしこまったアプローチになりがちな行政機関の広告の中で、この広告はタイミングもデザインも実にセンスがよかったと思う。もちろん同紙の読者数は限られるので局地的なキャンペーンであったことは間違いないが、私のまわりのロンドンの日本人コミュニティーでも「あのセンスはよかった」と話題になっている。時を同じくして、タイムズ紙やガーディアン紙などでは子どもの被爆を懸念する親の声やPTSD(Posttraumatic stress disorder:心的外傷後ストレス障害)を懸念する記事が紙面に踊ったが、そのような中でこのページは、改めて広告のあり方を考えさえてくれる好例として、可能性を感じさせてくれた。
(朝日新聞社 広告局 ロンドン駐在 林田一祐)