ロンドンでも華やかなクリスマスムードから年の瀬が迫るにつれ、「この1年を振り返る」のような紙面企画を目にするようになった。こういった企画は万国共通のようで、さまざまな角度から2011年が総括されている。そんな中から、今回は表題のトピックを紹介したい。
チュニジアからエジプトなどアラブ諸国へ飛び火したジャスミン革命やロンドンでの暴徒問題など今年ほど大きな出来事の影にファイスブックやツイッターといったSNSが大きな役割を担った年もなかっただろう。フェイスブックにはさまざまなメディアの記事をコミュニティーに知らしめる「シェア」といった機能があるが、2011年を通してどのニュースがどこのソースから最もシェアされたのか、という数字が先ごろ発表された。
まずはアメリカ版のベスト5から。1位は日本の東日本大震災関連で、これ以外にも8位にランクインしている。
1. Satellite Photos of Japan, Before and After the Quake and Tsunami (New York Times)
2. What teachers really want to tell parents (CNN)
3. No, your zodiac sign hasn't changed (CNN)
4. Parents, don't dress your girls like tramps (CNN)
5. Father Daughter Dance Medley (Yahoo)
※()内はシェア元のソース
続いてイギリス版のベスト5。
1. The world at seven billion (BBC)
2. Tatt-poo for cheating (The Sun)
3. The shocking truth about the crackdown on Occupy (The Guardian)
4. Amy Winehouse: Tributes paid to dead singer (BBC)
5. Austrian driver allowed 'pastafarian' headgear photo (BBC)
歌手のエイミー・ワインハウスの突然の死などはご当地だし、アメリカ版にくらべてかなり軽い話題が上位にきているのが特徴的。ちなみにこのイギリス版でも日本の震災は13、16位にランクされている。それぞれ個々のエピソードも興味深いが、もうひとつ興味深いのがそれぞれのソース部分。アメリカ版とイギリス版ともにニューヨーク・タイムズ(NYT)以外はすべてフリーのオンラインサイトからのシェア。NYTも月間20本まで無料の「メーター制」なので、読者の間口としてはやや広めなメディアであり、自由に「シェア」ができるようになっている。このようにSNSで高い注目を集めるソースとしてはフリーであることが重要な要素となっている。
今や若年層の必須アイテムとなりつつあるスマートフォンに標準装備されているSNSはこの層には当たり前のツールである。その機能のひとつであるシェアは、実は若年層とニュースメディアを密接に近づける重要なタッチポイントである。こういったアクティビティで日ごろから接しているメディアが、いつのまにかその個人の情報源として固定されていくであろう。
ガーディアンやBBCがさまざまなニュース報道の場面でも積極的にツイッターやフェイスブック、インスタントメッセンジャーのBBM(ブラックベリーメッセンジャー)を取り込む姿勢は顕著である。もちろん好意的なツイートやコメントばかりではないだろうが、その後の記事や紙面づくりに取り込んでいる姿は、我々も大いに参考にする余地があるのではないだろうかと常に感じさせられている。
先のロンドン暴動の際には「フェイスブックで扇動した」という理由で20代の青年2人に禁固刑の実刑が言い渡された。また議会もSNSの影響力を重視し、これに即した法案作りに動いている。急速に成長したSNSと従来型メディアの関係、そしてそれを取り巻く社会環境の変化・・・2012年も目が離せない話題となるに違いない。
(広告局ロンドン駐在 林田一祐)