ロンドンの広告賞

 カンヌライオンズ(the Cannes Lions International Festival of Creativity)やD&AD(British Design and Art Direction)など、「広告祭」や「広告賞」といわれるイベントは世界各地で開催されている。クリエーティブ重視のものや、キャンペーンの成功度を測るものなどテーマは多種多様だが、9月8日にロンドンで行われたM&M Global Awards 2011は、全17部門で賞を授与。総勢700人以上の関係者が正装で集うビッグパーティーで、夕刻から深夜2時すぎまで今年も華やかに開催された。

 業界誌『M&M(Media & Marketing)』は欧州(読者の割合は英国が45%、また英国を除く欧州圏で52%)を中心にグローバルな視点でメディアやマーケティングに関する情報を雑誌やオンラインで提供しているので、ご存じの方も多いと思う。今年のGlobal Awards全17部門にはそれぞれスポンサーが付いているのだが、メディア関連ではニューズウィークやハーバード・ビジネス・レビュー、ニューヨーク・タイムズなどが名を連ねている。

 特にニューヨーク・タイムズは授賞式の目玉のひとつであるAgency Network of the Yearを提供している。Agency Network of the Yearとは、その年最もアクティブに活動し、顕著な成果があった広告会社が表彰される。ニューヨーク・タイムズは賞のプレゼンターとして国際広告担当の副社長が登壇し、発表後には会場でラッピング号外を配るなどして自社のブランド向上に努めていた。

 今年はMediaComがAgency Network of the Yearを受賞。確かに同社が携わった作品がいくつか連続して受賞していたので、これは納得の結果だ。M&M Global Awardsはそれぞれの部門の候補(ショートリスト)が平均して5つ前後(少ない部門は2つ、最も多い部門で9つ)発表されており、当日その中から受賞団体が発表されるかたちで進むのだが、まさにその場で受賞を知った関係者はアカデミー賞張りの喜びを表して、大盛り上がりである。

 ただカンヌやD&ADほど審査の方針や基準が事前にあまり浸透していないのと、事前に参加者が候補作品をじっくり見る時間がないので、私のようなビギナーには少々難解な部分もあった。また評価コメントがその場ではないので、「○○が受賞」といっても「おめでとう!」で終わってしまい、後になってオンラインで詳細を確認するという流れだ。それはそれとして、英国および欧州の広告関係者が盛大に集い歓喜する姿に、この国の広告業界の勢いを垣間見た次第である。

 カンヌ国際広告祭が今年から”Advertising”の文字を外し、カンヌライオンズへ正式名称を変更した。また最も受賞の基準が厳しいと評判のD&AD“イエローペンシル”賞も、その意義と目的を再度問う時期が来たのではないか、と業界誌『Campaign』などを中心にさかんに話題となっている。「広告」がプリントやオンラインといった媒体ごとに語られる時代から、より複層的な取り組みやソーシャルネットワークなどを駆使した試みが求められるように変わっている今日、こういった賞もその形をうまく時代にあわせていく必要が生じているのであろう。

 しかしロンドンで開催されるこの手の広告関連のパーティーは、不思議と木曜開催で終了が深夜2時。パーティーのつくりや楽しみ方にも、やはりお国柄があるものである。

(広告局ロンドン駐在 林田一祐)

M&M Global Awards 2011のパンフレットとニューヨーク・タイムズラッピング号外

M&M Global Awards 2011のパンフレットとニューヨーク・タイムズラッピング号外