気がつけば瞬く間に秋も過ぎ、加速度的に冬へのカウントダウンが始まったロンドン。午後6時前には日が落ち、街のパブやレストランではクリスマスパーティーの予約が真っ盛りで、冬の休暇を見込んだ旅行関係の広告が目につく。サマータイムも10月で終わり、長い冬が到来する。例年と違うのは、ロンドン五輪のチケット額が発表され、にわかに活気づいていること。開会式チケットの最高額は2,012ポンドで、1ポンド130円として換算しても、ざっと26万円。逆に最も安い席が20.12ポンド。開催が2012年だからということらしいが、それにしてもこの値段は高額では、という声も多い。
そんな折、2010年1~6月の広告出稿額に関する統計が、ニールセン社から発表された。今回はこの数字をもとに、2010年の広告動向をみてみたいと思う。まず世界規模でみた広告出稿額(オンラインとアウトドアは除く)は、総額2,380億ドルで、日本円にしておよそ20兆円弱。前年同期間との比較で112.8%の伸びを記録している。世界37カ国・地域のうちマイナス基調だったのはUAE(アラブ首長国連邦)とアイルランドの2カ国で、それぞれ-5.8%と-3.2%。気になる日本については“±0%で、かろうじてマイナスを回避した”という評価である。
地域ごとに見ていくと、最も躍進したのがラテン・アメリカ(144.5%)で、次いで中東・アフリカ(123.8%)。特に、エジプト(136.4%)とブラジル(150.2%)、メキシコ(140.0%)の伸びが目を引く。アジア・オセアニア地域に目を転じると、インド(132.0%)ともっとも勢いがある。これに香港(123。0%)、インドネシア、マレーシア(122.0%)が続く。オーストラリアおよびニュージーランドは108~109%の伸びで2けた成長には届かなかった。
ただ、このデータでは欧州で最も経済状況が厳しいとされるギリシアや勢いのある中国についてコメントがないので、その点は差し引いて読み込む必要がある。しかし、多くの国で冷え込んだ広告需要の回復基調が顕著になっている。
メディア別にみてみると、地域を問わず伸びが著しいのがTV(115.8%)。この数字は全世界の広告総額の62%に値する額だという。これにラジオ(111.0%)、新聞(109.5%)が続きほぼ2けた増。雑誌が厳しく103.7%で、北米ではマイナス基調だったようである。オンラインは調査対象になっていないので断言できないが、マス広告への出稿が回復していることは、歓迎したい。
この回復基調を支える広告主は、消費財関連、自動車、金融、耐久消費財そして通信関連でそれぞれ2けたの伸びを示している。特に消費財は121.4%の伸びを示し、今回の回復基調のけん引役となっている。地域別の特色では、北米では自動車(117.3%)、欧州はブランド関連(114.9%)が顕著。中でも、圧倒的な伸び率を示したのが、ラテン・アメリカの金融広告(173.9%)。ラテン・アメリカの金融広告は、ちょっとしたバブルだったように思える。
リーマンショック以降、世界的に厳しい話題が続いた広告業界にあって、久しぶりに良い話題である。もちろん我が日本は前年比±0%なので、厳しいことには変わりないのだが、良い意味で世界的なトレンドに乗っていけることを期待したい。今回の集計期間には、バンクーバー五輪とサッカー・ワールドカップのビッグイベントが2つ開催されたことも、マーケットが活性化した一因である、というのがニールセンの分析だ。確かに、ここロンドンではすでに五輪関連の広告も目に付きはじめており、ビッグイベントに寄せる関係者の期待もすでにカウントダウン!?・・・である。
(広告局ロンドン駐在 林田一祐)