英国の地殻変動~政界・メディアの変化~

 4月から広告局ロンドン駐在として着任し、前任者に代わって当コーナーを担当します。どうぞよろしくお願い致します。

 ロンドンへ来た当初、メディアの関心事は、やはり2010年5月6日に行われた英国総選挙だった。与党・労働党に対して、最大野党である保守党、第3党・自由民主党の三つどもえの争いは、英国で初となる「選挙のためのテレビ討論会(計3回)」開催など、新しい取り組みへと発展。結果は、野党保守党が勝利したものの、議席は過半数におよばず、与党労働党は大敗。混迷する新政権の行方が注目される。
また、着任早々に起こったのが、アイスランドの火山噴火だ。当初は「噴火」そのものに関する報道が主だったが、欧州のいくつかの空港が再開され始めると、経済的損失や各国政府・関係機関の対応の温度差などへと視点が移り始めた。4月20日を境に各国の空港も再開したが、航空業界団体である国際航空運送協会(IATA)は噴火から6日間の欠航による損失総額は、17億ドル(約1,585億円)にのぼるとの推計を明らかにするなど、深刻な事態となっている。

 さて、ここで最近のメディアの話題を紹介しよう。
英国の高級日刊紙『インディペンデント』のオーナーであり、旧ソ連国家保安委員会(KGB)元スパイだったロシアの富豪、アレクサンドル・レベジェフ氏が、系列の日曜紙『インディペンデント・オン・サンデー』をわずか1ポンドで買収した。これを目の当たりにした英国の有力紙『ガーディアン』が、業界向けの雑誌などへ『インディペンデント』を皮肉った広告を出稿。その広告には、ロシア伝統のキリル文字と反転した文字をあしらったインディペンデント紙のロゴの下に“Owned by no one. Free to say anything. ”(誰にも所有されない。言いたいことを言う)と記され、アレクサンドル・レベジェフ氏を皮肉った。これを受けた同氏は、ツイッター上でガーディアン紙に対し、この広告への御礼を表明し、なかなかスマートな反撃に出た。英国の有力紙同士の粋なコメントの応酬で楽しませてもらった。
続いてその『インディペンデント』は、総選挙を前に「1週間1ポンドの試読キャンペーン」を展開。4月21日の朝を皮切りに、連日広告部分を抜いた40ページ特別版を自社原稿でラッピングし、地下鉄駅などで配布した。また、同時に駅構内のスクリーンで動画広告を流すなど、目を引くキャンペーンを実施。実際に部数へどう影響したのか、今後が楽しみだ。
とかく話題に事欠かないインディペンデント紙だが、経営者が変わり、その真価が問われるのはこれからといえる。

(広告局ロンドン駐在 林田一祐)

↓『インディペンデント』を皮肉った『ガーディアン』の広告について報じたウェブサイトのニュース記事
http://www.campaignlive.co.uk/news/993654/Guardian-knocks-Lebedevs-Independent-print-ad/?DCMP=ILC-SEARCH

『インディペンデント』の40ページ特別版が配布された(写真は、ハリーポッターで有名なキングスクロス駅)

『インディペンデント』の40ページ特別版が配布された
(写真は、ハリーポッターで有名なキングスクロス駅)