猛烈な経済成長を支える、アグレッシブな上海っ子

 上海に出張した。20年ぶりに訪れた街は、想像はしていたものの全く別の姿だった。貧乏暇ありの学生時代、上海は大阪南港から鑑真号に乗って約2日かけて海路を行く、遠い街だった。今回は、成田から快適な空の旅。巨大な浦東空港へ到着後、市内へは、最高時速429kmも出るというリニアモーターカー「磁浮」に乗って10分足らずだ。乗車したバスが交差点で通行人を引き倒しても、それをかき消してしまうほど騒然とした街の光景にショックを受けた前回の旅。隔世の感を禁じ得なかった。

 それにしても、街の発展ぶりはすさまじい。街全体が消費文化を楽しもうとアグレッシブに膨張している印象だ。上海の駐在員によると、1カ月ほど訪れない地域があるとそこには新しい建物が立ち並び、お店がオープンしていることも不思議ではないという。最近上海っ子に人気のスポット「田子坊」に飲みに連れて行ってもらったが、古い路地裏にオープンしたての小じゃれたバーやレストラン、ブティックが軒を連ね、若者が思い思いに楽しんでいる。仕事の後、都内の夜の街に繰り出すのと何ら変わらない。かつて友人と入って悲しいぐらいにまずかったラーメン屋は、今も上海のどこかで営業しているのだろうか。

 サービス業の前線では、多くの若者が働いていた。小奇麗な身なりで接客マナーもよく、丁寧。現地の広告営業パートナーに聞くと、セールスにかかわる仕事を持つと多くは基本給が極めて低く設定され、歩合給が収入の大半を占めるそうだ。給料を増やし豊かな都市型消費生活を楽しむには、必死になって営業活動を続けなくてはならないわけだ。そして必死にやれば、結果が出るマーケットがあるのだろう。パートナーも例外ではなく、確かに広告の営業スタイルが非常にアグレッシブだ。
 目覚ましい経済成長を続けるパワーの源泉を、彼ら若者に見た気がした。

(東京本社広告局業務推進部 川田直敬)