メッセージを込めて全国各地の取り組みを発信

 「教育や子どもについて、ともに考えませんか?」。こんな呼びかけとともに、日本教職員組合は全国で進める教育への取り組みを伝える全面広告を、2009年11月3日の朝日新聞朝刊に出稿した。出稿の経緯やねらいなどについて、同組合中央執行副委員長の高橋睦子氏に聞いた。

全国各地で行われている取り組みが
一目で分かるクリエーティブに

――今回の全面広告出稿の経緯を聞かせてください。

 昨年11月20日、「子どもの権利条約」が国連で採択されてから20年がたちました。日本では1994年に批准され、当組合でも子どもの最善の利益を最優先に考えて、学校現場から教育を改革していかなければと各地域で活動を進めてきました。特に20年を迎えた昨年は、11月20日に照準を合わせ「教育改革全国キャンペーン2009」と銘打って、全国で様々な取り組みを展開してきました。

 しかし、個々の取り組みをその地域に住む方々や組合員は知っていても、全国で展開されているという情報は伝えきれていませんでした。また、各地域でも多くの人に広く知られているか、というと、それも疑問でした。そこで、新聞広告の出稿に踏み切ったのです。

――数あるメディアの中から新聞広告を選んだ理由は。

 新聞は部数が多いので、読者に確実に届くと見ています。ウェブサイトも効果的だととらえ、日教組のホームページをリニューアルして様々な情報を発信していますが、ウェブは自分からアクセスするというアクションを起こしてもらわなければならない。その点、新聞の購読者であれば1日1回は目を通すでしょう。新聞の全面広告に、何かしら目につくキャッチフレーズがあったり、インパクトのある内容を盛り込めたりすれば、おそらくほとんどの読者が目を留めてくれます。そうした特性をかんがみ、多くの人に私たちの活動について知ってもらうためには、新聞の全面広告が最も効果的ではないかと考えました。

 また、朝日新聞は全国で読まれており、読者の中には保護者の方もたくさんいます。新聞広告が、教員と保護者の方とのコミュニケーションのきっかけになれば、という期待もありました。

 

社会との対話を重視
双方向のコミュニケーションを目指す

2009年 11/3 朝刊 2009年 11/3 朝刊

――クリエーティブで工夫した点、こだわった点などは。

 「全国すべての地域で取り組んでいる」ということと、「各地域ではどんな取り組みをしているのか」という具体的な情報を、1ページの広告で見やすく、分かりやすく表現したいと考えました。そこで思いついたのが、地図で見せる方法です。イメージは「全国の天気予報」。一目で全国の天気も、自分の地域の天気も分かりますよね。情報は盛りだくさんだったのですが、アイコンなども活用して、分かりやすく見えるよう工夫しました。

 あとは、どうしても日教組がやると「堅い」というイメージを持たれがちなので、専門用語などは使わず、シンプルで平易な表現を心がけながら、「地域の人とともに教育について考えている」という思いを伝えようとしました。

――反響はどうでしたか。

 掲載後のアンケートでは、とても好評でした。特に若い人ほど「教育のことを真剣に考えていることが伝わってきた」と受け止めてくれたようです。過去の政権との対立構造などを知っている方は、日教組に対してマイナスのイメージを持っていることが多く、これまでそのイメージを払拭(ふっしょく)できないでいました。身近なところで教育について一緒に考えていきたい、というメッセージをきちんと発信し、プラスのイメージを持ってもらいたい。この広告にはそんな思いもあったので、好意的な回答は非常にうれしく感じています。

 組合員からの反響もよく「見たよ」「いい広告だね」という声も聞こえてきました。学校現場は非常に忙しく、また、教育という営みは成果がすぐに実感できる仕事ではありません。それだけに、全国の教職員仲間の取り組みを知り、互いにがんばっていると感じることは、元気や勇気をもらえます。そういう意味でも、今回の広告で、組合員たちのモチベーションが高まったのでは、と感じています。

――広告を含めたコミュニケーションについて、今後の展望、課題などを聞かせてください。

 今、私たちは「社会的対話」をとても重視しています。組合という団体の中だけでやっていてはダメ、もっと外に出て社会の人と広く話をしよう、と。さきほども触れましたが、組合のホームページを充実させたり、新聞広告やチラシなどを出したりしているのもその一環です。また、年に一度開催される「日教組教育研究全国集会」も、 多くの一般の方々と教育について語り合う場になるよう努めています。とにかく、まずはこちら側から定期的に発信することが重要です。さらに、一方的な発信にならないよう、社会からの反応、意見を受け取れるようにならないといけないと思っています。今後は広告出稿の効果的なタイミングを含め、いろいろと工夫しながら取り組んでいければと考えています。