女性に訴えかけた売り場展開 話題性を追い風に戦略を組む

 社会現象にもなった『女性の品格』を出版したPHP研究所の企画部部長、松本公一氏にお話をうかがった。

コンパクトな体裁が女性の心をつかむ

── 出版からヒットまでの経緯をお聞かせください。

松本公一氏 松本公一氏

 初版は2006年9月で、翌年3月、朝日新聞の書評で初めてメディアで取り上げられたのとほぼ同時期に、10万部を超えました。このころ、二子玉川の書店で女性を中心に支持され売り上げ1位をマークするなど、通常の新書とは違う売れ行きを見せていることがわかり、この店と客層が似ている書店でも女性にアピールしてもらう仕掛けをしました。メディアで次々と大きく取り上げられたことなどもあり、7月には100万部を超え、その年末には200万部を突破しました。

──ヒットの要因は。

 内容が平易で、小さな項目に分かれているため、通勤時間などに「ちょい読み」できること、そうした読み方に新書というコンパクトでスマートな体裁が合っていたことが挙げられると思います。また、昨年4月に著者の坂東眞理子さんが昭和女子大学の学長に就任し、「時の人」として話題になって、メディアから多くの取材があるというタイミングのよさも追い風になりました。ターゲットがはっきりしていることもあって、テレビや雑誌で特集が多く組まれましたが、そうしたメディアの動きに敏感に反応するのも女性です。メディアで大きく取り上げられたことが売り上げに拍車をかける結果になったのでは、ととらえています。

4/5 朝刊 4/5 朝刊

── 第二弾として『親の品格』も発行されました。

 第一弾が落ち着いてから第二弾を出すのが常道ですが、この作品には『女性の品格』が売れているまさにそのタイミングで出すことによって、相乗効果をねらいました。実際、『親の品格』が出たことで『女性の品格』も再び注目され、売り上げに結びつきました。

── 新聞広告でのコミュニケーションは。

 出版当初から定期的に展開してきましたが、100万部、200万部、300万部を超える節目には、「お披露目」として新聞広告を出しました。ただ、300万部を超えた今年4月5日の全15段広告は、あえて坂東さんの名前を前面に出しませんでした。ちょうど季節が春で、「スタートの春に読みたい本」になってほしいという思いがあったからです。これからは、息の長いベストセラーになってくれれば、と考えています。

 坂東眞理子著『女性の品格』(右)と『親の品格』(左)