動画で発揮される「本物の言葉」を引き出す取材力 スコッチの王道「バランタイン」の魅力を伝えるタイアップ

 ハイボールという飲み方が普及し、近年大きな伸びを見せてきたウイスキー市場。コロナ禍において、ウイスキーを取り巻く環境はさらに変化している。外での飲酒の機会が減少し、「家飲み」の機会が増えた方たちに魅力をどう訴求していくか。
 そんな課題に目下取り組んでいるのが、サントリーのスコッチウイスキー「バランタイン」。今年6月に朝日新聞社のコンテンツマーケティングのソリューションプログラムADS(Asahi Digital Solutions)と新たなタイアップを実施した。アエラスタイルマガジン監修の動画コンテンツと記事コンテンツを中心に、新聞広告、テレビ朝日CM枠での30秒動画放映、YouTube やTwitter、Facebookなどのデジタル広告を展開するクロスメディアの企画だ。
 俳優・岸谷五朗さんと、バーテンダーで第2代マスター・オブ・ウイスキーの賢人・鈴木勝二さんが、「バランタイン」について語りあう動画コンテンツがベースとなった同タイアップの狙いや反響について、サントリースピリッツ宣伝部の堀江雄太氏、サントリーコミュニケーションズ宣伝部の小川あずさ氏に聞いた。

- Talk About The Scotch - 岸谷五朗、スコッチの王道「バランタイン」を知る

「スコッチの王道」というメッセージを生活者の今のモチベーションにどう合わせるか

 「バランタインは、長い間、スコッチの歴史の中で王道を歩み続けてきました。17年熟成スコッチウイスキーの中では一番歴史が古く、ずっとお客様に愛し続けて頂いてきました。上質でいいウイスキーであるという点はお客様にぜひ感じてもらいたいです」(堀江氏)

サントリースピリッツ 宣伝部
堀江雄太氏

 本企画で重要だったのが、この「スコッチの王道」というコアメッセージを伝えること、そしてターゲットのモチベーションの変化をしっかり捉えることだった。外で雰囲気を愉しみながら飲む機会が少なくなり、「家飲みをより充実させたい」「いつものお酒時間を少し豊かにしたい」という思いから、ウイスキーに対しても「こだわって飲んでみたい」「新しいものを買ってみたい」という期待を持ち始めていたターゲットに、魅力を感じて頂けるコンテンツをどうつくっていくか。
 「今回狙いたかったのはプレミアムクラスの『バランタイン17年』をフックにして、バランタインブランド全体の王道感を伝えながら、最終的にはスタンダードクラスの『バランタインファイネスト』にまで魅力を感じて頂くことでした。上質なイメージを保ちながらも、入り口としてハードルが高過ぎない、いい塩梅(あんばい)で仕上げていただいたと思います」(小川氏)

メディア選択のポイントはメッセージとターゲットの親和性
そしてファクトを魅力的に伝える力

 今回タイアップ先として選ばれたのは、アエラスタイルマガジン。30〜40代の男性ビジネスパーソンを中心読者とし、スーツスタイルの提案からライフスタイル情報まで扱うファッション&ビジネス情報誌だ。
 同誌を選んだのは、伝えたいメッセージとターゲットの親和性があったから、と堀江氏が説明する。
 「アエラスタイルマガジンの読者は、ファッションを選ぶときに王道なものを選びたい、奇抜というよりはちゃんとしたものを選びたい、という思いがある方々です。ウイスキーも、ファッションと同じで、お客様の生活を豊かにする嗜好品(しこうひん)です。モノを選ぶモチベーションの近さはとても大事なところなので、意識して選びました」
 さらに、メディアを選ぶ上で最も重視したポイントが、バランタインの歴史や技術という「王道感」を伝える上での下支えになる、“ファクトを魅力的に伝える力”だったという。
 「バランタインはブレンデッド・ウイスキーといって、多様な原酒をブレンドしてつくるものです。その技術については他と比べても誇れるところがある。長い歴史も含め、細部をしっかり伝えていきたかったので、記事をつくる力、ファクトをしっかりまとめて頂ける力のあるメディアと組ませて頂きたいなと思っていました」(堀江氏)

2021年6月4日 東京本社版朝刊 2021年6月4日 東京本社版朝刊
5段カラー1.4MB
2021年6月11日 東京本社版朝刊 2021年6月11日 東京本社版朝刊
5段カラー1.2MB

 タイアップの肝となったのは、WEB動画。朝日新聞社としてサントリーグループの動画制作を請け負うのは初めてのチャレンジだったが、監督の遠藤尚太郎氏は、過去にも朝日新聞デジタルでの動画制作実績があった。

サントリーコミュニケーションズ宣伝部
小川あずさ氏

 「遠藤監督の過去事例のクオリティーがたいへん高かったので、安心感がありました。遠藤監督をアサインできると事前に聞いていたのもポイントだったと思います。提案いただいた内容がWEBタイアップだけではなくメディアを横断していたのも魅力で、WEBタイアップ・新聞紙面・テレビCMの枠と、タッチポイントを様々なメディアで増やす施策はやはり朝日新聞社ならではの座組みだったと思います」(小川氏)

 「新たなお客様となり得る方が、コロナ禍もありウェブ上でウイスキーを探している傾向が明らかに見られました。YouTubeでおすすめのウイスキーを紹介しているバーテンダーさんのチャンネルなどもよく見られていたので、動画だとより興味をもって頂ける、視覚情報とセットでより魅力を実感頂ける期待はありました」(堀江氏)

動画をやる意味は「本物の言葉」で伝えることができること
そのために必要な出演者とメディアとの関係値

 企画の中身は当初から「ウイスキーに詳しい有識者の推奨」をフックにすることが決まっていた。これまでの調査でも、効果が高いという結果が出ていたからだ。
 ウイスキーの賢人・鈴木勝二さんの対談相手として、抜擢(ばってき)されたのがアエラスタイルマガジンで連載を持つ俳優の岸谷五朗さんだ。
 「動画の中でも岸谷さんに出ていただいたことへの反響は大きかったと思います。元々、朝日新聞社さんはタレントさんのアサイン力がとても高いと思っていますが、その中でも『関係値のある方』を人選案に出していただき、実際にアサインしてもらえたのはありがたかったです。アエラスタイルマガジンで連載をしているという点でも、読者の方との親和性がありました」(小川氏)
 メディアとタレントとの関係値が担保されていた点は、タイアップを成功させるにあたって大きな役割を果たした。そこには、視聴者の広告を見る目が厳しくなってきているという事情もある。
 「最近、お客様がたくさんの広告に触れる中で、その信頼性をより大事にするようになっています。広告を目にしたときに『この広告の言っていることは本当に信頼できるのか』というのをしっかりと見られている。だからこそ、特にインタビュー形式を採った時は、出演者にご自身の言葉で本当の気持ちを話して頂くことが大事になります。」(堀江氏)
 岸谷さんと同誌の藤岡信吾編集長は以前から親交があり、そのため岸谷さんがウイスキー好きでバランタインも愛飲しているという情報も事前に手にしていたという。
 「藤岡編集長が、岸谷さんのことをよくわかっていらっしゃいました。実際に撮影現場でも、ライターさんの横に常にぴったりと藤岡さんがいらっしゃって、岸谷さんを知っているからこその引き出し方、質問の投げ方をされていました。まさに、生の言葉、本物の言葉を引き出す取材力だなと」(小川氏)
 「それが岸谷さんの言葉のリアルさにつながって、最終的にブランドの価値に対する信頼感が得られたんじゃないかと思っています。動画はやっぱりリアルさというか、『本気でこの人、楽しそうにウイスキーの話してるなぁ』っていう温度感が伝わります。動画をやる意味はそこにもあるかもしれないですね」(堀江氏)

 「本物かそうでないか」が問われているのは広告だけにとどまらない。フェイクニュースなどの問題が世間をにぎわせ、受け手の意識が高まる中で、出演者と媒体が普段から築いている「関係値」というものが、今後も良質なコンテンツを生み出す鍵となるのかもしれない。
 実施した施策を分析する際の着眼点は、リーチと、接触した人たちをどう態度変容させたかがポイントになる、と堀江氏。調査結果はまだ分析中だが、SNS上の反応は上々だという。
 「動画内では岸谷さんが劇団の話も語ってくださっていますが、それも含めて興味を持って見てくださったお客様のお声がたくさんあります。本音で語ってもらったからこそだと思いますし、これから調査の分析をするのが楽しみです」(堀江氏)