「地域社会のために」医療法人が朝日新聞DIALOGで展開したヘルプマーク啓発キャンペーン

 伯鳳会は、関西を中心に60を超える医療・介護の事業所を傘下に持つ医療法人グループだ。
 「平等医療」・「平等介護」を理念とし、「地域の期待に応え、地域社会のためにある」ことを重視する伯鳳会は今夏、2030年の未来を考えるコミュニティ「朝日新聞DIALOG」のタイアップ広告を中心とするヘルプマーク啓発キャンペーンを展開した 。2021年8月9日に「スタディーツアー編」と「ディスカッション編」の動画と記事をDIALOGのウェブサイトに掲出。2つをまとめた記事体広告を8月10日(ハートの日)の朝日新聞朝刊全15段広告で展開した。グループの広報を担当する、大阪陽子線クリニック放射線部係長の櫻井勇介さんと毛利ひかるさんに、今回の企画展開の意図や同会の広報活動について話を聞いた。

病院と社会の境界線にあるヘルプマークに着目

 今回の企画でヘルプマークを取り上げた意図について「伯鳳会グループが大切にしている考え方を示したかったことが一つ。もう一つは、社会が抱える課題の問題提起と解決策の提示をしたかったからです」と櫻井さんは言う。10年で事業を10倍の規模にした古城資久(もとひさ)理事長の事業方針も「地域社会にとって本当に必要とされているか」を判断基準にしてきたという。

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2021年8月10日付 大阪本社版朝刊1.2MB

 「地域のためにある」医療機関として、伯鳳会のスタッフは「顔の見える存在」として地域医療に携わってきた。しかし、病院で治療を受けた人の生活が必ずしも完全に以前と同じように過ごせるようになるとは限らない。一見普通に見える人が何かしらのハンディキャップ、痛みを抱えて短期間で社会に戻っている現状がある。そういう人たちは病院でスタッフに訴える。「実はまだ痛い」「電車では座っていたいけど、座れたことはない」……。
 「それを知っても病院側は何もして差し上げられません。そこで病院と社会の境界線上にあるヘルプマークに着目しました」
 ヘルプマークは申請すれば誰でも手に入れて身に着けることができる。「マークを着けられる人は、自分で情報を発信しています。しかし、着けていない人でも、何かに困っている人がいるのではないか。電車でずっとスマホを見ているのではなく、少し周りを見てほしい。そういう背景からこのテーマを選び、学生を中心にスタディーツアーとディスカッションで知ってもらうことから始め、ともに理解しながら解決策を考えるプロセスをまとめていただきました」

新聞・動画・SNS・OOHを立体的に活用し、期待以上の反響

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大阪陽子線クリニック 櫻井氏

 「苦しんでいる方に声を掛けたり、手を差し伸べたりすることは誰でもできます。『何かお手伝いしましょうか?』と聞けば、相手の答えはわかります。キーワードは『おせっかい』。自虐的ですが、医療にかかわる人間は基本的におせっかいなんです」櫻井さんは言う。
 「その瞬間に合ったテーマであることを心掛けていた」と言うが、期待以上の反響があった。短期間での接触密度を上げるためのメディアミックスを戦略的に考え、新聞やOOHを活用。また、若い世代にもリーチさせるためハイライトシーンをまとめた動画を動画メディアである「bouncy」とSNSで拡散させた。

(動画)ヘルプマーク知ってる? 大学生が障がい者と向き合った「これから自分にできること」

  櫻井さんは「企業からも、多数の個人からも賛同の声をいただき、取材依頼も来ました。地域から何を求められていて、どうすれば地域の方が健康で幸せな生活を送れるのか。そんな声をいただけるつながりが今回の企画を通じてできたと思います」と評価する。
  朝日新聞DIALOGのタイアップを選んだ理由に「伯鳳会グループとの親和性」を挙げた。「一番感銘を受けたのは『日本の未来を語ろう』という言葉です。私たちが描いているのは未来の社会。そのメンタリティーがこの媒体にはあると考えました」

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大阪陽子線クリニック 毛利氏

 今回の取り組みは「伯鳳会の未来を語ろう」でもあったという。毛利さんは「私たちの活動に賛同してもらえるかどうかは、当事者意識が鍵だったと思います。病気や不調が身近になる40代以上の世代は自分事と捉えていただいたと思いますが、若い世代はそうした意識はまだ十分ではないかもしれません。新聞離れが進む世代に、新聞の魅力や価値をより多く知ってもらって、若い読者を増やすことを新聞社には期待しています」と話す。

 「手間ひまかかった情報が載っている新聞が好き」と話す櫻井さんは「サブスクリプションの時代で、いいものは相応の値段で買うことが当たり前になっています。若い世代の見る目はどんどん肥えているのではないでしょうか。信頼性のある情報には対価を払わなければならないと考えていると思います」とエールを送った。

これまでもさまざまな媒体を検討。小型広告の活用法

  広報の立場から櫻井さんは医療をアピールする難しさに向き合ってきた。「私たちは民間ですが、医療は公共財で、社会インフラの一つだと考えています。どれだけいいものを用意し、どれだけいい技術を持っていても、それを知って使っていただかなければお役に立てません。けれども、医療を知っていただくことはなかなか難しいのです。皆さん病気になるまで考えもしないし、病気になってからだと適切な情報選択ができないこともあります」
 そこで櫻井さんは「ほぼすべての媒体を実験的に試した結果、客観的に評価して新聞の小型広告を継続しています。関心のチャネルが開いていない平時に、忘れられない程度に、ちゃんと存在を示せる小型広告が、費用対効果を含めて理にかなっていると考えています」と話す。
 伯鳳会は2018年12月から「大阪陽子線クリニック」の小型広告を朝日新聞に継続して出稿。近畿2府4県の朝日新聞読者を対象とするJ-MONITOR調査で、クリニックの認知度は当初の10.5%から直近の21年7月29日では66.1%と大幅に上昇した。全業種・全企業の平均認知度50%を10ポイント以上、上回っている。
 同じ調査で「広告が信頼できる」と答えた人の割合も、当初から21.1ポイント上昇し、62.2%に。全業種の平均が40%であることを考えると、新聞自体が信頼度の高い媒体であることに加え、継続出稿による効果が高いと考えられる。

2018年12月~2021年8月 J-MONITOR調査データより抜粋

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2021年7月15日付 大阪本社版夕刊1.3MB

「よりよい医療を提供するために」 SDGsにも取り組む

  地域の医療介護に特化してきた伯鳳会グループだが「横のつながりが十分ではなく、せっかく規模が大きくなった利点を生かし切れていない」課題があるという。そこで、法人の中で互いの強みをグループ内の共通認識として広げていき、災害派遣、技術的な交流、がん治療など一つの病院では解決できないようなことにも連携して取り組んでいこうとしている。
 グループではSDGsにも取り組んでいる。再生エネルギー100%を促進する取り組み「再エネ100宣言 RE Action」に19年8月のスタート時から法人全体で参加。再生可能エネルギーへの転換を進めるだけでなく、使い捨て資材品物10%削減を目指しており、卸業者の配送負荷軽減に至るまで、環境と業務の負荷軽減を模索している。また、2017年にシーメンスヘルスケアとパートナーシップを締結し、世界初となるCT装置と生化学・免疫装置を同時搭載した災害医療対応の「走る災害医療ステーション」となる車両も11月に導入した。
 櫻井さんは「法人の目的は、いい医療を提供することに他ならないのですが、それがゴールではなく、患者さんに社会に復帰していただいてご活躍いただくことが何より大切と考えています。社会を向いた活動には今後も関心を持っていきたいです」と締めくくった。

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