マイキー、ドラケン、人気キャラクターが全国の朝日新聞に登場。コミックのキャラが登場する47都道府県別の新聞広告で地元愛を盛り上げ、大きな話題に。

 今、若者の間で絶大な人気を誇るコミック「東京卍リベンジャーズ」。2021年春よりアニメ化や映画化と話題が続き新たなファン層が広がるなか、講談社は24巻の発売に合わせて47都道府県別の新聞広告を朝日新聞に掲載。同時に東京駅でのポスター掲示や書店でのキャラクター等身大パネルの設置、ポストカードプレゼント企画と立体的な企画は大きな話題を生み出した。ツイッター上では「#オレの地元が最強」をつけた投稿が盛り上がりを見せ、結果的に単行本の売り上げ向上にもつながったという。講談社宣伝部の田幸志朗氏に、本キャンペーンの狙いや反響について伺った。

人気作品の認知を新聞広告でさらに拡大

 東京卍リベンジャーズは17年から「少年マガジン」で連載が始まり、21年4月にアニメ化、7月に映画が公開された。ファン層が大きく広がるなか、24巻が発売された9月17日に、47都道府県別で内容を切り替えた15段カラー新聞広告を朝日新聞全国版で掲載。まずはこのタイミングで新聞広告を展開した意図を伺った。

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2021年9月17日 東京本社版朝刊(東京都内版)
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 「もともと原作の単行本はよく売れていたのですが、アニメが始まったことで売り上げに拍車がかかり、7月の映画公開でさらにファンが増えました。おかげさまで重版が毎週のようにかかる状況でした。ただ映画やアニメのファンが必ずしもコミックを購入してくれるわけではありません。同時に普段はコミックを買わなくても、話題になっている作品には興味を示す層もかなりいます。それで人気が盛り上がっているこのタイミングで、コミックにそれほど関心が強くない層も含めた幅広い人に、この作品の魅力を伝えたかったんです」
 そこで全国規模で幅広い年代にリーチできる、新聞による広告展開を決めた。47都道府県で原稿の切替ができる特性も大きな魅力であり、各地の地元愛をテーマとすることで方向性はスムーズに決まったという。
 「最近は若者の地元志向が強まり、地元愛の強い若者が増えています。それもあって前々から、各地を盛り上げるような企画をやりたいと思っていたところにクリエーターからの提案がありとんとんと話が進みました。『東京卍リベンジャーズ』の登場人物は、地元愛の強いヤンキーたち。都道府県別での展開と親和性がとても高いと思ったんです。打ち合わせを重ね、地域ごとに異なるキャラクターが登場し、地元の言葉で語る今回の企画が実現しました」

新聞広告と同時に、駅でのポスター掲示や書店でのパネル展開などリアルな場、ツイッターで話題を盛り上げムーブメントを生み出す

<各画像をクリックするとそれぞれの地域の紙面が表示されます>

北海道支社版
東京本社版
名古屋本社版
大阪本社版
西部本社版

※一部紙面のみご紹介しています。こちらの詳細は、下記の記事で全てご覧いただけます。
人気コミックのキャラクターが47都道府県異なるクリエイティブで登場!

 今回のキャンペーンは、新聞を核に駅や書店などのリアルな場、ツイッターを上手に活用することで話題を盛り上げ、一種のムーブメントをつくりあげた理想的な事例といえる。講談社はまず、9月13日に47都道府県別のポスターを東京駅に掲出。公式ツイッターでキャンペーンの開始を紹介するとともに4日後の朝日新聞紙面で切替広告を掲載することを予告した。この時点からファンを中心に機運が盛り上がり、掲載紙を入手したいとの問い合わせも届いていたという。
 事前に盛り上がりがあったことをふまえ、9月17日の新聞広告掲載当日の反響は非常に大きなものとなった。多くのファンが朝からコンビニに走って新聞を購入。「うちはドラケンだった」等紙面を写真に撮って載せたツイートがあふれ、「東京卍リベンジャーズ」のワードはツイッターのトレンド入り。「もう売り切れて買えなかった」との投稿がある一方で、47都道県すべての紙面を集めたという猛者もいる。
 「自分が暮らす県の新聞をたくさん買い、ほかの県の紙面と交換された方もたくさんいたようです。東京で暮らす若者が田舎の両親に電話をし、買いにいってもらったという話も聞きました。この新聞広告をきっかけに、いつもは遠く離れた友人や家族が地元のことに関する会話をする。そんなコミュニケーションツールになったなら、嬉しい限りです。この新聞広告は地方自治体やJAなどからも『地元を盛り上げてくれてありがとう』など感謝の言葉や問い合わせをいただきました」
 新聞広告が掲載された17日には全国の書店に、新聞と同じビジュアルの等身大の立て看板も設置。さらに単行本を購入した人に特製イラストカードをプレゼントするキャンペーンも実施した。「東京駅のポスター、新聞紙面、さらに書店の立て看板と一緒に撮った自分の写真と、一人で何度も投稿してくださる方もいました。この作品をこれまで支えてくださったファンの方に喜んでいただけて何よりです」

ファンに喜んでもらうとともに新たな読者も獲得。売り上げが一気に伸び重版へ

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田幸志朗氏

 今回のキャンペーンは大きな話題を生んだだけでなく、コミックの購買にもつながった。キャンペーン全体を通じてPOSによる売り上げデータは10倍になり、3日で単行本が100万部以上売れたという。
 「新刊にあわせて既刊23巻も多めの重版をかけていたのですが、キャンペーン開始以降すぐになくなり、改めて重版をかけました。『今回、初めて単行本を買った』というツイートもよく見かけたので、新たなファンも開拓できたと手ごたえを感じています。キャンペーンは大成功といえそうです」
 最後に、あらためて今回のキャンペーンを通じて、田幸氏が感じた新聞メディアの魅力や可能性について伺った。
 「今回の企画では、デジタルの時代だからこその新聞という紙、モノとしての価値の大きさを実感しました。毎朝、自宅に届くのも新聞の大きな特徴です。ネットと違い、同じ日のほぼ同じ時間に多くの人が一斉に目にするわけで、紙面を見た時の驚きや感動をSNSで共有する喜びも大きい。また新聞は一種の社会の公器で、信頼性の高い真面目な媒体です。だからこそそんな媒体で、今回のような遊び心のある広告を載せると話題になりやすい。今後もそんな新聞の特性を活かしながら、多くの方に喜んでいただけるキャンペーンを展開していければと思っています」