強みは商用車とディーゼル。技術力とサービスの手厚さを世界へ

 商用車とディーゼルエンジン事業のリーディングカンパニーとして、国内をはじめ、海外百数十カ国に販売網を持ついすゞ自動車。今年創業100年、来年設立80年を迎える。同社の取り組みについて、代表取締役社長の片山正則氏に聞いた。

──昨年10月、21年ぶりにフルモデルチェンジした大型トラック「ギガ」を販売しました。

片山正則氏 片山正則氏

 省燃費の追求、安全性の追求に加え、データ通信とインターネットを融合し車両データを遠隔で解析する仕組み「MIMAMORI」を標準搭載するなど、情報通信による遠隔サポートも備えたトラックです。おかげさまで高い評価を受けており、販売も好調です。

 21年ぶりのフルモデルチェンジには、特別な意味があります。というのも、前回の「ギガ」に携わった技術者を含め、21年の間に定年を迎えたベテラン技術者が大勢います。その間、絶えず技術の伝承を続け、長い時を経てフルモデルチェンジに挑み、乗り越えたのです。新しい世代でその達成感を味わえたことは、当社にとって大きな出来事でした。

 ちなみに、新生「ギガ」の1台目の出荷を見送るセレモニーには、「ギガ」に携わったスタッフたちが、工場からあふれるほど集まりました。そうやって送り出した車が高い評価を得ていることが、若い技術者たちの自信と誇りにつながり、次なる挑戦につながればと思います。

──大型バスの販売も好調です。

 バス事業は主に、日野自動車との合弁会社ジェイ・バスで行っています。大型バスは、安全性の高い車両をいかに早く、いかに低コストで提供できるかということが、社会的に求められています。日野自動車とは常にいいライバル関係にありますが、バス事業では競争でなく協調し、自動運転化などを見据えて技術開発に努めています。

 現在、国内は、訪日外国人やシニア層のバスツアーが好調な他、安全性能の高いバスへの買い替え需要も増えており、成長を維持していきたいと考えています。

──海外事業の強化を推進しています。

 当社は、国内ではトラックのメーカーというイメージが浸透していますが、海外では、ピックアップトラック「D−MAX」のメーカーというイメージがかなり浸透しています。実際、海外販売台数の半数はピックアップトラックで、タイを拠点に製造し、およそ100カ国で販売しています。当社のピックアップトラックの強みは、物を「運ぶ機能」に優れていること。その軸足をぶらさずに販売網を広げていきたいですね。

──海外での人材育成に積極的です。

 2008年からフィリピンのレイテ島タクロバン市のTESDA(フィリピン労働雇用省技術教育技能開発庁)において、貧困家庭の子女を対象とした自動車整備士養成学校に対する教育支援活動を行っています。

 教育期間は2年間で、衣食住と生活費は当社がサポート。一期につき約20人を半年に一度募集しています。卒業生たちの進路にしばりはないのですが、2年間の学びを通じていすゞに共感してくれた人たちが、同国のみならず各国のいすゞでメカニックとして活躍しています。

──系列の販売会社からメカニックのスタッフを派遣する取り組みも始めました。

 当社は製品力に加え、メカニックの技術力の高さやアフターサービスの手厚さによってお客様との信頼関係を築いています。そこに大きく貢献しているのが全国の販売会社です。販売会社に海外での技術指導という可能性を広げたところ、「入社時には海外勤務など想像もしていなかったが、ぜひ挑戦したい」と名乗りを上げる人が出てきました。

 昨年11月に、そうした海外組が一時帰国して発表を行う場を設けたのですが、いきいきと輝いている姿に圧倒されました。語学力に自信がなかった人も、「現地の人と働く目的が一緒なので、自然と思いを共有できる。言葉の壁は問題にならない」と語っていました。こうした日本人エンジニアや、日本人エンジニアの指導を受けた在外エンジニアの活躍により、海外事業にいい回転が生まれつつあります。

──年に1回、「ワールドサービス技能コンテスト(I−1グランプリ)」を開催しています。

 I−1グランプリは、世界中の優秀なサービススタッフやメカニックを集めて技術力と知識を競う競技会で、昨年は34カ国が参加しました。大会は毎回大変な盛り上がりで、各国各社の社長もやって来てスタッフたちを応援する光景が見られます。こうした活動を通じて、エンジニアのモチベーションアップと技術の発展に寄与していきたいと考えています。

──今後の展望を聞かせてください。

 今、自動車業界は大きな変革期を迎えています。動力やエネルギーの多様化、自動運転の進化をはじめ、シェアリングエコノミーの文化が広まる中でのライドシェア(相乗り)ニーズの高まりなど、「乗り方」に対する新たな提案も生まれています。当社は創業以来、技術の連続性を強みとしていますが、変化を迫られる可能性もあります。そうした変化の時代において、技術を専門としてきた自分の経験を生かしていけたらと思います。

 その一方で、会社の基盤をつくっているのは、工場の日々の営みです。工場の現場が常にカイゼンを図れる仕組みを整え、定着させていくことも怠りなく進めていきます。

──リーダー信条は。

 私がことあるごとに社員に伝えている三つのキーワードがあります。「3現主義」(現場・現物・現実の重視)、「PDCAサイクルの徹底」〈 Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)〉、「全員が問題解決者」。いずれも「現場」に関することです。常に現場を意識できるリーダーでありたいと思います。

──愛読書は。

 90年代初め、社内で風土改革の機運が高まった時に、自分もマネジメントについて学ぼうと、『企業進化論』を読みました。個人と会社との距離感をどう保ったらいいのか、本書を通じてつかむことができました。この他、『IE問題の解決』『失敗学のすすめ』『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』なども、組織論を学ぶ上でとても役に立ちました。

片山正則(かたやま・まさのり)

いすゞ自動車 代表取締役社長

1954年山口県生まれ。78年東京大学工学部卒。同年いすゞ自動車入社。2007年取締役。09年常務執行役員。11年専務執行役員・アセアン現地事業統括泰国いすゞ自動車副会長。14年副社長。15年から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、片山正則氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.89(2016年9月27日付朝刊 東京本社版)