社員一人ひとりの個性を生かして人間味あふれるホスピタリティーを

 グループ71社、海外33拠点。建設、不動産仲介・管理を核に、金融、ホテル、出版、高齢者支援など多岐にわたる総合サービスを展開するスターツグループ。同グループの強みや最近の活動などについて、村石久二会長に聞いた。

──24歳の時に起業されました。その動機について聞かせてください。

村石久二氏村石久二氏

 私は高校卒業後、銀行に就職しました。父の戦死後、女手一つで4人の子どもを育ててくれた母親を早く楽にさせたいという思いがありました。役員になるつもりで入行しましたが、頑張るほどむなしさを覚えました。しだいに「一度きりの人生、このままでいいのか」という思いが膨らみ、7年目の春に退社。大手を辞めるからには大手を目指したいと、消去法で不動産業を始める決意をしました。

 創業当初から漠然と頭にあったのは、5万人規模の企業です。売り上げや利益のためにその規模を求めたのではありません。人や自然の調和を尊重できる、情のわかる大集団を作りたい。これまでの企業社会にないヒューマニズムにあふれた、地域や社会とともに永続的に発展できる会社を作りたい。そんな発想でした。

──スターツグループの活動内容は。

 当社は、地域に根ざした「総合生活文化企業」を旗印とし、建設・土地有効活用、不動産仲介・管理を中心とした「ストック型収益積層ビジネス」を軸に、金融、ホテル、出版、高齢者支援、保育など、人々の暮らしに密接なサービスや商品を提供しています。

 国内では、安定経営の礎となる不動産管理物件数が2016年11月現在、住宅は53万戸を超え、駐車場は13万台を超えます。ビルや施設の管理は1,500件と着実に増加しているほか、総合不動産店舗「ピタットハウス」が全国568店舗、高齢者支援・保育施設が75事業所と、ネットワークを拡大中です。

 また、21カ国33都市において、日系企業の海外進出にともなう不動産仲介、コンサルティングを軸に、レンタルオフィス、時間貸し駐車場、レンタル工場やホテルの開発まで、各国のニーズに合わせたサービスを提供しています。

──人材育成を重視されています。

 当社は創業当初から「人が、心が、すべて。」という理念を掲げています。業界としてはめずらしく、歩合制は採用していません。数字や売り上げよりも顧客満足度を重視しているからです。グループ全体が成長を続けてこられたのは、何よりも人の力です。長期的、複眼的に物事をとらえ、お客様と真摯(しんし)に向き合い、個性を生かして人間味あふれるホスピタリティーを発揮する。そうした人財の育成に日々腐心(ふしん)しています。

村石久二氏

──スターツグループの強みと、最近のトピックは。

 スターツグループの強みは、事業企画から設計、建設、テナント募集、建物の運営管理、不動産の売買、証券、保険、信託、資産継承など、不動産に関わるあらゆるサービスをワンストップでスピーディーに提供できることです。また、不動産業以外の事業とのシナジーも生まれています。

 国内だけでなく、海外の社員とも「人が、心が、すべて。」という理念を共有し、ネットワークを広げていきたいと考えています。

 最近のトピックとしては、国内は、流山おおたかの森駅前市有地活用事業、タイムレスタウン新浦安プロジェクト、ホテル エミオン 東京ベイ新館新築工事などが進行中です。海外は、カンボジアでホテル エミオン プノンペンを施工中、フィリピンではレンタル工場の運営を開始しました。

──昨年、「澄和」という一般財団法人を作りました。

 澄和(とわ)は、「平和な世界の実現に貢献したい」という思いで設立しました。具体的な活動としては、人や自然の調和に努める方の顕彰や、ドキュメンタリー制作・支援などを行っています。今年発表した第1回「澄和Futurist(フューチャリスト)賞」では、原爆詩の朗読を続ける吉永小百合さん、沖縄戦の語り部活動を続ける中山きくさん、戦没画学生慰霊美術館「無言館」を表彰させていただきました。

 私の理想は、競い奪いあうことよりも、助け合うことで発展していく社会です。「所得が多少減っても、みんなで分配して困っている人を助けたい」「企業収益の一部を寄付にあてるのは当然」といった価値観が広まるような活動にしたいと考えています。

 目下の夢は、営利を目的としない、人と自然の調和を実現する「澄和の里」を作ること。森があり、おいしい水が湧き、果実が実り、美術館もある。そんな場所を作れたらと思っています。

村石久二氏

──経営信条は。

 お客様目線。自然体。この2つです。私は女性に囲まれて育ったせいか、厳しくも愛情を忘れない、母親的な経営を自然としてきたような気がします。役員たちからは、「村石さんは母なる灯台で、自分たちは灯台の光を頼りに行きつ戻りつする船だ」などと言われます(笑)。

──愛読書は。

 城山三郎さんの著書です。若い時には人物伝に魅せられ、50歳を過ぎてからは随筆にのぞく反戦への思いに感じ入りました。中でも『静かに 健やかに 遠くまで』は愛読書です。

村石久二(むらいし・ひさじ)

スターツコーポレーション 代表取締役会長兼グループCEO

1944年長野県生まれ。63年須坂商高卒。大和銀行(現・りそなホールディングス)入行。69年千曲不動産(現・スターツコーポレーション)創業。2000年から現職。自著「夢現」「汗生」「種実」「澄和」(いずれもスターツ出版)を10年毎に出版。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、村石久二氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.92(2016年12月27日付朝刊 東京本社版)3.8MB


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