近年、新聞広告がTwitterで話題になることが増えている。Twitterで話題になる広告には、何か共通点があるのか。新聞広告とTwitterをどうやって掛け合わせれば、会話を生み出すことができるのだろうか。Twitter Japan 執行役員 広告事業本部長の松山歩氏に、Twitterと新聞広告の相性をはじめ、話題化のコツや全体設計のポイントなどについて聞いた。
新聞とTwitterの共通点はニュース性があること
まず、マーケティング活動におけるTwitterの役割について、松山氏は次のように説明する。「Twitterの役割を端的に言うと、メディアとメディア、メディアと利用者、さらには利用者と利用者をつなぐ『架け橋』のような存在だと考えています。新聞をはじめ、テレビやインターネット、雑誌、イベントなど、様々なメディアと接点がある生活者が、それぞれで体験したことをTwitterで語り、その場にいなかった人にも体験が伝わっていく。そんな広がりを生み出せるところが、Twitterの強みだと思っています」
新聞とTwitterの共通点については、「どちらもニュース性があること」と松山氏。Twitterには新しい情報を求めている利用者が多く集まっており、1次情報で信憑性のある新聞の情報は安心してリツイートしたり、掲載されている情報に対して意見を述べたりできるのだという。2019年新聞オーディエンス調査によると「SNSで広げたくなる広告媒体」として、新聞広告はテレビCM、SNS広告に次いで3位。ニュースサイトや動画サイトの広告よりも、注目されていることが分かっている。
新聞広告がTwitterで話題になりやすいのは、広告の紙面をリアルに手にして見る「体験」が伴うからだという。「新聞広告の魅力は、リアルに触れる紙に掲載されていること。つまり新聞広告は、リアルな体験を提供できるということです。それはテレビやインターネットの広告にはない、新聞広告にしかない価値だと思います。やはりリアルなほうが体験の密度が高く、シェアする気持ちが起こりやすいんです。写真に撮ってTwitterにアップすることも、体験の1つ」
Twitter広告の特徴は、いわゆるバナー広告ではなく、広告もツイートとして発信されることだ。企業やブランドも個人のユーザーと同じアカウントの1つで、そこに優劣はない。タイムラインに流れてくる広告も、個人のユーザーのツイートと同じように表示される。「ツイートを介して、企業とユーザーの会話が生まれたり、会話を見られたりすることができる。Twitterでの会話をきっかけにブランドを良く知ることができたり、ファンになったりもする。そんなところも、Twitterの面白さだと思っています」
話題化に必要なのは3日間会話が続くテーマ
Twitterでの話題化のコツについて、松山氏は大きく5つのポイントがあるという。それは「72時間の法則」「会話のネタを提供する」「モーメントを捉える」「Twitterで初出しを行う」「リーチの初速をできるだけ高める」。その中でも特に重要なのが「72時間の法則」だ。「これまで話題になったツイートを分析すると、1日限りの施策ではなく、3日間くらい会話が起きて初めてムーブメントになることが分かっています。2、3日継続してTwitterで話題になると、テレビや雑誌で取り上げられたり、インフルエンサーが会話をはじめたりするので、世の中ごとになっていくのです」
では、会話を継続させるためにはどうしたらいいのだろうか。その方法の1つが、多くの人が関心を持つ社会的テーマを選ぶことだという。「たとえば多くの人が疑問に思っていることを問いとして新聞広告を通じて発信する。そこにSNS用のハッシュタグを設定しておくことで話題を拡げるといった手法が考えられます。Twitterとしてもチャレンジングな意見広告を応援していきたいと考えています。」
「会話のネタを提供する」というコツについては、ユーザーがTwitterでどんな会話をしているのか、ソーシャルリスニングをして丹念に調べることが必要だという。「何もないところから会話を始めるのは難しいんです。意見広告は比較的会話が生まれやすいけれど、それでもユーザーが反応しやすいテーマやフレームワークを考えることは重要だと思います。既存の会話を基に企画して盛り上がった施策の1つが、アメリカのハインツ社の事例です。ハインツ社はケチャップで有名ですが、マヨネーズを発売しました。その発売前に『ケチャップとマヨネーズを混ぜたソースを作ったら買いますか?』と問いかけ、投票を実施。Twitterで話題化を図ったところ、大成功。その要因は『ケチャップとマヨネーズを混ぜる』という会話がTwitterで行われていることを知っていたからです」
他にも、会話のネタを提供する方法として、Twitterには簡単に引用リツイートができる『カンバセーショナルカード』という仕組みもある。「あなたはどっち派? といった質問などイエスノーで答えられる内容であれば、より一層、会話に参加するハードルを下げることができます」
小型広告や号外など記号性の強いデザインを活用する
情報発信のタイミングの設計も、話題化に大きく影響するという。例えば、真摯な声をTwitterで集めたいときは、新聞広告はティザーとして掲載して会話の土壌をつくり、Twitterで一気に認知を高めていく。一方、Twitterをティザーとして活用し、ローンチのタイミングで新聞をはじめマス広告を大々的に展開するというパターンもある。「広告の内容によって、いろんな設計の仕方があると思います。Twitterにも『スポットライト』という1日限りのサービスがあります。検索画面の上をジャックできるので、新聞広告とタイミングを合わせることで話題化を狙うことができます」
こうした施策ができるのは、新聞特有の魅力である「日付を限定して掲載ができる」からだ。新聞広告とTwitterをうまく連動させることで、話題化の5つのコツの1つ「リーチの初速を高める」こともできるという。「次々と情報は発信されているので、時間が経つと忘れられてしまうので、同じタイミングで日本全国の人たちに情報を届けることは、話題化のためには重要です。知っている人が多ければ多いほど話題になりやすく、キャンペーンやハッシュタグの認知が一定以上にならないと、会話は広がりません」
話題になったキャンペーンやハッシュタグなどを分析すると、ユーザーが会話に参加する動機として「14の気持ち」があるという。その中で「共感したい」という気持ちは、特に社会的なテーマを投げかけるときに特に大切なことだという。ただ、社会的なシリアスなテーマで対立構造をつくる仕掛けは容易ではなさそうだ。「日本で成功している対立構造の広告は、お菓子の味やブランドの呼び方など、ライトな内容がほとんど。ただ、近年は企業が社会的な存在意義やフィロソフィー、環境に対する考え方などを基準にブランドを選ぶ時代にもなってきています。そんな時代背景を考えると、社会的なメッセージで共感を得ることはとても本質的なテーマであり、大切なことだと思います」
新聞広告とTwitterを組み合わせて共感を呼ぶ方法として、松山氏は最後にこう話す。「ユーザーの共感や反応を得やすくするためにも、ハッシュタグのコピーはとても大切。朝日新聞で展開されていた国際女性デーの広告のように、ハッシュタグを新聞広告の小型など独自のスペースで展開することも、モーメントを生みだし、インパクトを与えることができそうです。あと、新聞の号外の『記号性の強いフォーマット』はソーシャルで映える。号外のような速報とTwitterは親和性があるので、今後も活用の仕方はあると思っています」
Twitter Japan 執行役員 広告事業本部長
Twitter Japanの執行役員 広告事業本部長として国内大手広告主様担当部門をリードし、顧客中心主義の組織構築、業務運用体制の構築に従事。1999年東京大学工学部卒。
1999年から2005年までは読売広告社にて営業を担当し、インターネット広告の提案活動を推進。2006年から2014年までは、日本マイクロソフト株式会社にて、広告事業部門の部長として主に広告会社様担当組織をリード。2014年にTwitter Japan入社後は広告主担当部門の部長として主に、消費財、通信業界等を担当。@ayumu_matsuyama