マーケティングキーワード

「ソロ男」

博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー 荒川和久氏
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 ソロ活動系男子の略称。親と同居していない一人暮らしの20代~50代の独身男性で、仕事を持ち、親などに経済的依存をしていない人たち。趣味や自分の時間を大切にする。彼らの消費意欲は高く、世代を超えた共通の価値観を持って消費行動をする特徴がある。

 男性の生涯未婚率は近年増え続け、将来的には3人に1人の男性が生涯未婚のままの時代がくると予想されている。未婚だけではなく、晩婚化や離婚率の上昇なども勘案すると、男性が独身で活動する期間(ソロ活動期間)はかつてないほど拡大していると言えよう。

 人数のボリュームが拡大し、活動する期間が長くなれば、そこに新たな消費のポテンシャルが生まれてくる。しかも、ソロ男は、既婚男性のように購入する際に、奥さんの顔色をうかがい了承を得る必要もない。本人が自分のために思う存分消費できる。それがソロ男の旺盛な消費力を動かしている。

 「消費は女性が作る」と言われる。直近の家計調査の単身男女で比較すると、確かに消費性向は単身女性の方が高い。しかし、月あたりの消費支出の実額が高いのは単身男性の方である。品目別に見ても、「調理食品」「茶類・コーヒー類」「酒類」などは二人以上世帯の家族とほぼ消費額が変わらない。ソロ男は一家族分を一人で消費しているのだ。にもかかわらず、彼らソロ男は今までマーケティングのターゲットとして注目されてこなかった。

 なぜだろうか?

 ソロ男は概して自分の主義主張を明確に持ち、何かに強いこだわりを持っている。頑固で、あまのじゃくで、へそ曲がりという性格も見られる。消費においては企業側の「売らんかな」の姿勢を嫌い、乗せられないように動く傾向が強い。つまり、広告などマスマーケティングが機能しにくい層だと片づけられていた。

 確かにその通りである。「キャンペーンや景品は買う商品に影響を与えるか?」という質問をすると、ソロ男の37.5%、実に4割近くが「影響されない」と回答。ソロ男でない人たち(非ソロ男)が23.8%であることから、約14%もソロ男の方がその意識が高い。何かプロモーションなどの仕掛けをしても、ソロ男はそれに反応しにくいということだ。<図1>

 ところが、プロモーション施策の具体例を提示して、おのおのに反応するかどうかを聞くと意外な結果となった。「企業の販促に踊らされない」と言う傾向に反し、実際の行動面では大きく影響を受けているのもソロ男だった。全てのキャンペーンの施策でソロ男の方が非ソロ男のスコアを上回っている。特に、「値引き」や「限定商品」などの仕掛けの反応率が高い。<図2>

 「企業の販促には踊らされないと言う半面、値引きやクーポンなどに敏感に反応」という一見矛盾する意識と行動。これはソロ男の消費に見られる、典型的な意識と行動のギャップでもある(=ソロ男の自己矛盾行動)。例えば「長生きにはこだわらないと言いながら、健康食品が気になる」など、「言ってることとやってることが違う」とも言える。

 一言でいえば、面倒くさい人たちだが、そんな彼らを動かすには作法がある。作法にのっとりさえすれば、彼らは消費でお金を使うことをいとわない。むしろ彼らは消費をしたがっている。なぜなら、「自分のためにお金を使う」、それが彼らソロ男の幸せに直結しているからだ。

 課金ゲーム、アイドル商法、コミケの隆盛など、ソロ男が動くと、そこには今までなかった新たな需要が創造されてきたことは確かだ。デモグラ論法では説明できない年齢や世代を超えた、共通の価値観で消費している点にも注目したい。しかも「一度決めたブランドを継続して買い続ける」という一途な性質を持つソロ男は、息の長い優良顧客となり得る可能性を秘めている。ただし、「ソロ男向け」などと声高に叫ぶと、一斉に拒否されるので注意を要する。

 市場のコモディティー化が進み、ただでさえ競争が激化する中、女性や主婦ターゲットのシェアの奪い合いには限界がある。ソロ男のようにソロ活動消費をする人たちが大勢いる社会には、今までにはなかった未来が待ち構えているはずだ。ソロ男の旺盛な消費力を刺激して、新しいマーケットを創造することを真剣に考える時代になった。

荒川和久(あらかわ・かずひさ)

博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー

自動車・飲料・ビール・食品・流通・通販等幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手掛ける。2014年「博報堂ソロ男プロジェクト」を立ち上げた。著書に『結婚しない男たち~増え続ける未婚男性ソロ男のリアル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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