「ビューアビリティーとユーザビリティー」

Keyword

配信したインプレッションのうち、実際にユーザーがその広告を閲覧できる状態にあったインプレッションの比率をビューアビリティーと呼ぶ。ここでいうユーザビリティーは一般的な「使い勝手」という意味ではなく広告配信におけるユーザー配慮を指す。

 ビューアビリティーという指標が注目されたのは、2014年12月にGoogle社が発表した「インプレッションのうち、56.1%はビューアブルインプレッションと認められない」という調査結果がきっかけではないだろうか。

Think with Googleより

Think with Googleより

 さらに2015年9月、同社が「Google Display Network入札方式にvCPM(Viewable Cost Per Mille)を採用する」と発表し、ビューアビリティーは広告業界全体の課題に発展した。

 ビューアブルインプレッションは、米メディア指標協議会(MRC)と米インターネット広告団体(IAB)が発表したガイドラインで、「スクリーンに広告面積の50%以上が1秒、動画の場合は2秒以上表示されたインプレッション」と定義されているが、広告主と媒体社、両者のこの定義に対する意識にはギャップがあり、広告主・媒体社共通の業界標準の策定には継続した議論が必要な状況と言える。

ビューアブルインプレッションの定義

ビューアブルインプレッションの定義

広告面積の50%以上が1秒(動画の場合は2秒)以上表示されたインプレッションをいう

 Google社の調査結果の背景には、これまでのアドテクノロジー進化の変遷も関係している。これまでのデジタル広告、特に運用型広告は、クリックやコンバージョンが主な成果指標だった。アドテクノロジーは「どれだけクリック単価が安いか」「どれだけコンバージョン単価が安いか」に焦点を当て、広告主主導で進化してきた。そして、投資対効果の追求という合理性ゆえにデジタルマーケットも急速に拡大した。

 広告を掲載する媒体社は、収益性を高めるために広告枠を乱立させ、広告主の需要を満たしてはいるが、その結果として、広告起因のページの表示遅延やコンテンツ表示領域の縮小といった、ユーザビリティーの悪化を招いている状況だ。

 ビューアビリティーにおいても、所定の水準に達した広告枠のみの購入や、一定のビューアビリティー水準をキープすることをKPIとした広告運用が広告主主導で行われている状況である。ほとんどが広告枠単位のビューアビリティー評価となっているが、ビューアビリティーはサイト訪問ユーザーのコンテンツ閲覧行動の結果によって生まれる要素であり、本来はオーディエンス単位のビューアビリティー評価を行うべきである。

 ユーザーのエンゲージメントが高いコンテンツは、サイトの滞在時間を増やし広告の視認性を高めるという調査結果が出ており、ビューアビリティー評価には「広告枠×オーディエンス×コンテンツ×デバイス×クリエーティブ×位置(アクセスした場所)」といった、ユーザーを絡めた分析が必要不可欠となる。

 今、デジタル広告業界で求められているのは、よりユーザーに近い媒体社によるユーザーに寄り添った形のビューアビリティーの分析・評価である。これには広告枠のビューアビリティーの把握に加え、サイト訪問ユーザーのオーディエンスプロファイルとその広告反応(ビューアビリティー、CTR、CVR…など)を分析し、その結果に基づいたコンテンツ閲覧経験の改善も併せて進めていかなければならない。

 このようなコンテンツを閲覧しているユーザーを基点としたビューアビリティーの評価を推進することで、ユーザーに適切なコンテンツ(広告コンテンツを含む)を届ける環境が整備され、ビューアビリティーの向上、更には健全なマーケット構築につながっていくと考える。

 これらを実現させるためには、広告主、媒体社それぞれが個別に推進するのではなく、独立した第三者によるユーザー基点のビューアビリティー評価とマーケット構築が必要である。

佐藤将樹(さとう・まさき)
佐藤将樹氏

サイバー・コミュニケーションズ データソリューション・ディビジョン データマネージメントアーキテクト

入社以来一貫してアドネットワーク、アドエクスチェンジ、DSP、SSP、DMPなどのアドテクノロジー事業の実務と商品開発に従事。現在は最先端のアドテクノロジーを活用したカスタマー・データ・プラットフォームの開発を行うほか、多様化するデータを活用した広告手法や統合メディアプランニング手法の企画立案を推進。2017年8月より現職。