新聞の家族間伝播(でんぱ)力の確認  「就職活動時におけるメディア利用調査」から

 朝日新聞大阪本社広告局では2007年8月に大学生や保護者などを対象に「就職活動のプロセスにおいて、情報源として選択されているメディア」を探索するインターネット調査を行いました。今回は関西圏での調査結果を中心に紹介します。

問題意識

 インターネットや携帯電話など、個人を特定できるIT機器から、緻密(ちみつ)なセグメント化が進む雑誌や個人視聴率が重視されるテレビまで、one to oneやパーソナルマーケティングへの注目はメディアの分野にも拡張しています。

 一方で、個別化の限界を示唆するかのように「家族割」「友達親子」「母娘消費」といった、人と人、中でも「家族」のつながりや関係性、帰属意識に対応させたマーケティングの実践が最近目立っています。

就職に影響する家族メディアとしての新聞

 新聞は「世帯」に向けて届けられる「家族メディア」の性質を持っています。

 「新聞だからこそ発揮できる人と人とをつなぐ力や、共有される情報の存在を確認したい」という課題に対し、人生の大きなポイントである就職活動という局面を切り取れば、うまく顕在化させることができるのではないかと考え、調査に臨みました。

調査結果

家族間を段階的に流れる新聞の情報

 まだ就職先の候補を選定している段階では「就職情報サイト」が一番多く利用され、二番手に「両親、知人等の意見」が位置します。相談相手には大学の友人や就職課の担当者なども多く挙げられています。→(図1)

 これが最終的に就職先を決定する段階に進むと、「両親、知人」といった「人」の意見がより尊重され、相談した相手では母親と父親がかなりの部分を占めることがわかりました。→(図2)

 そして、保護者への調査からは、子どもにアドバイスをする際に参考にしていたものは新聞であることが確認できました。→(図3)

就職先を決めるときは、親に相談その親の情報源である新聞

 就職活動の進行プロセスを見ることから、学生はそれぞれの段階で適した媒体から情報を集め、周囲とも相談しながら進路を決めている姿が確認できました。そして、その一番の相談相手である親の主要な情報源として新聞があり、当事者へ間接的に影響を及ぼしていることも確認されました。

 他者に相談する、相談を受けるという行為は「ただ判断を仰ぐ」という無自覚な行為ではなく、志向や順序付けを整理し、外に出して合意形成を目指すことであり、コミュニケーション能力の根幹であると言えます。

 就職先決定の際にそのような実践を行い、「両親、知人等の意見」を参照したと答えた人を「就職情報サイト」を参照したと答えた人と比較すると、前者は内定の時期が比較的早く、内定社数も多い様子が見られます。→(参考)

 昨今の売り手市場下では、複数の内定を獲得した学生が、終盤になって1社を選ぶという状況が増加しており、今後はその段階での情報収集や相談の機会が増えていくと推測できます。内定辞退やミスマッチを防ぐためのフォローとして、就職活動終盤でのコミュニケーションが改めて注目されます。

おわりに

 私が就職活動をしたのは99年ですが、電話帳数冊分にもおよぶ情報誌や会社案内が届いていたことを記憶しています。企業からの連絡も家庭の電話にあり、家族から就職活動が「見えていた」と言えます。今はメールやPCでのやりとりが中心となり、保護者にとって就職活動はブラックボックスになっているのではないでしょうか。

 この状況はふだんの生活や消費行動においても同じなのかも知れません。その点で今回の調査は就職活動時のみならず、社会全般を通しても伝達しにくくなっているコミュニケーションをドライブさせる装置、という新聞の持つ要素を確認できました。

(営推・クリエイティブユニット 北原昭彦)

調査概要

調査方法 ●インターネット調査(Yahoo!リサーチスタンダード利用)

調査エリア ●関西版:大阪/京都/兵庫/滋賀/奈良/和歌山

首都圏版:東京/神奈川/千葉/埼玉

調査時期 ●2007年8月2日~2007年8月7日

調査対象 ●

学生/第2新卒編

・就職活動をする予定のある四年制大学在学中の3年生

・就職活動をしている(した)四年制大学在学中の4年生

・ 2005年4月以降に入社した第2新卒

保護者編 ・ 四年制大学在学中の3年生または4年生の子を持つ保護者

有効回収数 ●学生/第2新卒編 関西版358人 首都圏版371人

保護者編 関西版955人 首都圏版954人

今回は関西版の結果から、大学4年生と保護者のデータを紹介しています。「就職情報サイト」のスコアは当調査の回答者がインターネット上でモニター登録をしている人であることに留意してみる必要があります。