テクノロジーの進化によって顧客一人ひとりを把握することが可能になり、メールなどを使いながら自動的にアプローチすることを可能にしたのがマーケティングオートメーション。元々はB to B領域を中心に、見込み客を育成し、顧客化することを主な目的に開発されたこのソリューションは、メールなどオンラインを中心に発展してきた。
ここ数年、マーケティングオートメーションという言葉を頻繁に見聞きする背景としては、デジタルテクノロジーの進化はもちろん、リアルタイムにOne to Oneでアプローチしたいというマーケティングニーズがある。マーケティングオートメーションによって実践できることを、ごく簡単に説明すると下記の通りだ。
1.リアルタイムで見込み客や顧客の状態を自動的に把握
2.リアルタイムで一人ひとりにふさわしいマーケティング施策を自動的に実行
マーケティングオートメーションとは、マーケティング活動における一連の作業を自動化することであり、マーケティングオートメーションツールと呼ばれるシステムが大量の顧客一人ひとりに対して実行する。
まず、対象となる見込み客や顧客の状態を、メールの開封状況やウェブサイトでの行動履歴などを通じて把握する。目的に応じてそれぞれの行動をスコアリングすると、見込み客を関心度別にセグメントすることも可能になる。メールやLINEの配信、ウェブサイトの出し分けやアプリのプッシュ通知など、セグメントごとのシナリオに基づき事前に設定すると、自動的に実行される。マーケターはこの一連の活動を常に監視しながら、より効果が得られるシナリオを継続的にプランニングしていく。このように、従来のマーケティング活動と比較すると、マーケティングオートメーションは見込み客や顧客一人ひとりと常に並走する運用型のマーケティング活動といえる。つまり、デジタルテクノロジーによって自動的に実行するマーケティングオートメーションツールと、マーケターが運用を通じて適切に設定するシナリオ、この両輪によってマーケティングオートメーションの成果は最大化されるのである。
このマーケティングオートメーションを通じた具体的なマーケティング活動は主にメールを中心に浸透してきたが、最近ではLINEのメッセージ配信や、取得したCookieをもとにDSPによる広告配信などにも、タッチポイントが拡大している。
一方で、特にスマートフォンを経由したメールの効率が一定水準に飽和しつつある実態がある。LINEなどSNSを活用した施策に対する効果の最大化が期待される一方、スマートフォンを通じて取得したメールアドレスを活用した施策の成果は厳しいケースが多く聞かれる。
そこで注目されるのがオフラインである。例えばダイレクトメール(DM)は、パーソナライズやオファーの工夫によって開封率が飛躍的に向上する。判型によってはスマートフォンの画面にはない、面によるインパクトや説得力は大きい。また、例えば金融商品や住宅メーカーなどを対象に、ウェブで資料請求を行った見込み客をセグメントすればアウトバウンドコール(※)を行うこともできる。
オンラインを中心としたマーケティングオートメーションの手法は確立されつつあるが、今後はオンラインとオフラインをリアルタイムに掛け合わせ、より効率良く見込み客や顧客を育成・優良化する仕組みに取り組むことが重要だと考えられる。
(※)企業やコールセンターなどから電話をかけること
博報堂DYメディアパートナーズ ダイレクトマーケティングビジネスセンター ダイレクトビジネスプロデューサー
営業、クリエイティブプロデューサーを経て、2010年よりダイレクトマーケティングに従事。ダイレクトビジネスプロデューサーとして新規顧客獲得におけるクリエイティブ開発やメディアプランニングなど一貫したプロデュースを行うほか、顧客の育成・優良化を目的としたCRMの開発・運用プランニングにあたるなど、フルファネルでの事業拡大を実践し、マーケティングオートメーションでオンライン/オフラインを横断したソリューションを開発。オンラインでの行動をリアルタイムに把握し、その結果に基づいたDMを自動的に出し分け、自動的に発送するソリューションをいち早く実行。