「コンテンツマーケティング」

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 高品質なコンテンツを核としたマーケティング。従来のデジタル機器(PC、タブレット端末、スマートフォンなど)に加え、様々な端末(時計、ブレスレット、眼鏡など)がインターネットに接続してゆく事象を意味するI of T(Internet of Things)により、「あらゆるデバイスで常にメディアとつながる環境」が始まる。メディア接触や時間の細分化が進む中、人々を魅了する高品質なコンテンツの重要度が増してくる。

 「コンテンツマーケティング」は、生活者が興味を持つ情報を、コンテンツ(自社サイト、ブログ、ソーシャルメディア、メールマガジン、動画など)として提供し、ブランドとのエンゲージメントや商品の購買などにつなげるデジタルマーケティングの手法とされている。しかし、今後はより大きな視点に立ったマーケティング手法として注目すべきである。

 21世紀に入り、ソーシャルメディアやスマートデバイスの普及で生活者のメディア接触は急速に細分化が進み、(生活者が取得する)情報量は増加する一方である。さらにその情報接触は、「生活者主導のコミュニケーション」が中心となりつつある。こうしたメディア環境下では、生活者のアクセス情報を活用したターゲティングや個別カスタマイズ精度の向上、生活者の様々な情報接触環境を考慮し常に使いやすい情報の提供を目指すなど、ビッグデータ分析を活用した生活者の情報体験の高付加価値化がメディアやコンテンツの接触拡大につながると言える。

 従来、コンテンツは生活者の支持を目的に提供され、広告はブランドの製品・サービスの売り上げ拡大を目的に提供されてきた。しかし、オウンドメディア(自社サイト)やブランド(商品)が主役となる動画などは、広告ではあるが本質的にはコンテンツであるように制作されるため、その境界線が曖昧(あいまい)になってきている。双方が受け入れられるには、生活者とブランドのエンゲージメントがカギとなる。これを実現するには、コンテンツ制作時に、メディア全体を俯瞰(ふかん)する構想とデータに基づく生活者とのエモーショナルな関係を創るストーリーテリングが重要度を増し、さらにそのコンテンツに接した生活者に深いブランド体験を提供することが必要となる。そして広告にも、生活者をひきつけるコンテンツとして、ソーシャルメディアなどを利用し話題を喚起するなどの口コミが期待される。

 「コンテンツマーケティング」では、発信者のメディアやデバイスに束縛されないクリエーティビティーが求められる。また、生活者とブランドのエンゲージメント構築も目標であるが、既存のCPMやCTRでは計りきれない。今後は、生活者とブランドのエンゲージメントの価値・効果指標の確立も課題になると言えよう。

勝野 正博(かつの・まさひろ)

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 研究主幹

博報堂に入社後、ラジオ担当として20年、メディアバイイングプランニングを中心に、一社提供番組のプロデュースや音楽・スポーツイベントの企画・運営などを経験。2003年博報堂DYメディアパートナーズ設立からデジタルメディアを担当、08年からi-メディア局長として検索エンジン広告やソーシャルメディア関連のソリューション開発などを行う。メディアビジネス開発局長を経て14年4月よりメディア環境研究所にて、「次の10年のメディアビジネス」を模索する日々を過ごしている。
東京大学 情報学環教育部 非常勤講師