「データサイエンティスト」

 昨今のビッグデータへの関心の高まりを背景に、「データサイエンティスト」という新たな職種に注目が集まっている。ある意味で時代の過渡期のバズワードと見る向きもあるが、“今世紀でもっともセクシーな職業”ともいわれるデータサイエンティストとはどのような職種なのだろうか?

 まず、今までのデータ分析担当者の役割と大きく異なる点は、決まった情報ソースから取得できるデータを定期的に集計・分析するのではなく、企業の課題解決のために幅広いデータソースを分析対象にしていることだろう。自社の販売データなどのほか、インターネットを経由して日々蓄積される生活者のライフログデータやソーシャルメディアに上げられるクチコミなどの定性データなど、蓄積されるデータは膨大な情報量になる。
  そしてそれらの大量のデータをさばくために、Hadoopのような分散処理ソフトを使いこなすITリテラシーも必要になる。

 極めつきは、ただデータを収集・分析するだけでなく、それらを実際の企業活動に活用する経営者や現場担当者など、他部門に向けて情報加工・説得するコミュニケーション力や表現力も求められる。これがデータサイエンティストとして、今までの分析担当者との一番の違いであり、存在価値ともいえるだろう。従来は、データ分析者の関心と実際のビジネスの現場とがかけ離れた面もあったかもしれない。お互いの問題意識が異なることからのコミュニケーションの食い違いや反目があったかもしれない。データサイエンティストは両者の溝を埋め、コミュニケーションを円滑かつ創造的なものにするために存在するのだともいえる。

 そのような、いわば“スーパーマン”的なイメージ像を思い浮かべると、そのような人間が一体どこにいるか?ということになる。実際に日本には現在、数百人~千人ぐらいしか存在しないとも言われており、その育成が急務である。
  あと数年もすれば、データサイエンティストといわれる人々がもっと増えているかもしれない。いや、その頃にはすでにビジネスの現場ではビッグデータの集計・分析は今よりもっと簡単に行われているのだろうか。

 データサイエンティストとは、増え続ける情報量に溺れんばかりの現状の中で、データを有効に使いこなすためのインフラやノウハウが発明され定着するまでの、時代の過渡期だからこそ注目されている職能といえるかもしれない。