登山やトレッキングを楽しむ「山ガール」。釣りを楽しむ「釣りガール」。反対にインドアでのんびりするのが好きな「家ガール」など、「○○ガール」という言い回しは女性の趣味の最新動向を知る上で非常に便利だが、そんなガール語録に最近加わったのが、今回のキーワードである「動ガール」だ。
動ガールを簡単に定義すると「ユーチューブなどの動画共有サイトに自分で撮影した動画を積極的に投稿する女性」。スマートフォンの普及を背景に、その気になれば誰でも簡単にビデオ撮影して共有サイトに投稿できる時代に、多くの動ガールが出てくるのは時代の必然だ。
それだけでは「で、なに?」という感じなのだが、自分の化粧をすっぴんから完成形まで詳細に撮った動画が最近話題になっており、これでもかというくらい数多くの化粧メーキング動画が実際にアップされていることが興味深い。
百聞は一見にしかず。ぜひともユーチューブで「メイク」と検索してみてほしい。100万回以上も再生されているものもあるから驚かされる。中でも、動ガールのカリスマ的存在としてよく名前が挙がるのが「佐々木あさひ」さんだ。起点は自分のメークテクを知ってほしい、褒めてほしいという素朴な気持ちだったとしても、こうなると化粧メーキング動画はもはや商品紹介コンテンツとして立派に機能している。ソーシャルメディアマーケティングの最新手法として、今回のコラムで取り上げる次第である。
企業も動ガールのPR力を取り込もうと動き始めている。その先駆けになったのが化粧メーカーのレブロンだ。同社によれば、「ブランドの看板モデルとしてハリウッド女優を起用する一方、一般女性に商品をPRしてもらうことで消費者に身近に感じてもらうことが狙い」であり、「動ガールを起用した商品の売り上げは好調」だという(J-CASTニュースより)。
マーケティング的な意味でのPRの定義としては、「商品情報を企業自らが発信する広告に対して、信頼される第三者が発信するもの」が一般的だ。その第三者の代表格としてマスメディアや有識者が機能しているわけだが、ネット時代の今、有力な第三者に動ガールが新たに加わったのである。いや、消費者と同じ目線に立って課題や悩みを共有している動ガールは、マスメディアや有識者よりもはるかに強力なPR力を有していると理解すべきだ。
今後は、「動ボーイ」という言葉こそないが、動ガールの男性版もどんどん登場してくるだろう。動画共有される商品のジャンルも、化粧品からいろいろと広がっていくことも想像に難くない。ソーシャルメディアマーケティングの最先端の取り組みとして、動ガール(ボーイ)たちを活用しない手はない、と考える。
なお、動ガールの第一人者である前述の佐々木さんは、ユーチューブからの広告収入で生計を立てているそうだ。自己顕示欲を満足できて収入も得られる動ガールもハッピー。等身大ユーザーの先進ノウハウを視覚的に学べる閲覧者もハッピー。そしてもちろん、PRしてもらい、売り上げが伸びて企業もハッピー。その意味で、動ガールはマーケティング的機能だけではなく、「世の中の幸福の総量」を増大させる、ネット時代ならではの社会システムとしても意義深いのではなかろうか。