「O2O(オー ツー オー)」

 「O2O」(または「OtoO」)とは、Online to Offlineの略で、リアル店舗での購買行動とインターネットの連携のことを指す。例えば、ネットの価格比較サイトを参照して最安値の価格を知ったり、ユーザーや購入者が発信するクチコミを参考に購入商品を決定したりすることなどが挙げられる。家電のように購入単価の高い商材では、リアル店舗で商品を確認した後に“ネットで購入”するという逆パターンもありうるが、多くの場合はオンライン(ネット)からオフライン(非ネット)が多い。

 ネットショッピングが台頭しはじめた2000年前後にも、「クリック&モルタル」(ネットと実店舗の連携)という言葉がはやったが、再び「O2O」という言葉が注目されはじめた背景にはいくつかの環境変化があるように思う。

 一つ目は、スマートフォンなどの新しいデバイスの普及や、レコメンドエンジン、最適化ツールなどの技術の進化により、人々のネットでの商品購入経験が浸透し、EC市場が拡大したことや、それにともない小売業・サービス業のネット対応が加速したことが挙げられる。
特にスマートフォンは、GPSなどの位置情報機能を使ってネットとリアルを連携させることができるため、「コロニーな生活☆PLUS(コロプラ)」などの位置ゲームや、Foursquareのような新しいサービスは、“O2O”的なサービスとの相性が良い。ネット上で位置情報ゲームを提供するコロプラが、鉄道や旅行会社と提携して地方への観光を促進したり、全国の提携店舗から銘菓や特産品をそろえた「物産展」を開催して多くの来場者を集めたりしたことも、O2Oの一例と言えるだろう。

 さらに、「O2O」が注目される背景には、Grouponなどのクーポン共同購入サイトや、カカクコム、食べログなどのクチコミサイト、Twitterなどのリアルタイムメディアの普及・浸透により、購入チャネルや広告メディアとしての役割以外にも販促コミュニケーションツールとしてのネットの可能性が広がったことなどがある。

 そしてなにより、上記のような環境変化を通じて、消費者にとっても企業側にとっても、もはや「ネット(で購入すること)は当たり前のこと」という認識が定着してきたことが大きいのではないだろうか。

 市場規模ではまだまだ実店舗の売り上げがネット販売を大きく上回っているはずだが、今後はその差が徐々に縮まっていくだろう。そして、実店舗とネットとの垣根が消失し、自分にとってメリットのある使い分けを行うようになった消費者の購買心理や行動を、本当の意味で理解できた企業のみが売り上げを伸ばしていくことができるのであろう。