クリック・ツー・コールとは、ウェブ画面やアプリケーション上に表示されている電話番号や「CallMeボタン」をクリックすると企業のコールセンターなどに自動的に接続され、あとはオペレーターとの会話を通じて注文したり、質疑応答したりできるシステムの総称である。
このシステムは2005年ごろには既に存在していたが、当時はPCに通話用マイクを接続してボイスチャットを楽しむ人々を除けば縁遠い存在だったので企業もさほど力を入れていなかった。しかし、スマートフォンの普及によって、事態が一変しつつある。
スマートフォンではアプリを使ったり、ウェブ画面を見ながら、同時に電話をかけて会話することができる。ただし正確に言うと、これは普通の電話機能を使っていない。実は、データ通信と同様にVoIP技術(IP電話の技術)を使って会話することが可能になった。言うなれば「疑似電話」である。この疑似電話は音質面で通常の電話よりもやや劣り、通信速度が遅いと音声が擦れたり飛んだりするが、近年の携帯電話通信速度が向上したことによって、実用上の問題はほぼ解消されたと言ってよいだろう。
消費者にとって、クリック・ツー・コールのメリットは大きい。購入を検討している消費者は、まずウェブやアプリを使って効用や使用者の体験談を読む。そして気になった商品について、クリック・ツー・コール機能を使ってコールセンターに直接電話をかけ、オペレーターに直接尋ねてみることで、商品に対する納得感を深めることができる。
特に情報リテラシーが相対的に弱いシニアにとって、ウェブに掲載された情報を理解するのが難しい場合も少なくないだろう。そのような消費者にこそクリック・ツー・コールは福音ではなかろうか。
一方で企業側にとっても、クリック・ツー・コールは大きなビジネスチャンスになる。クリック・ツー・コールでは電話回数を直接的に反映した広告料金を払う方式が一般的で、ウェブ閲覧数やクリック数に応じた料金設定よりも格段に費用対効果が高い。しかもインターネット経由の会話なので、コールセンターの通信費用も従来の着信課金システム(フリーダイヤル)よりこれまた格段に安く済む。
先行している米国ではスマートフォンとクリック・ツー・コールのコラボによって、問い合わせ数が200%も増えた一方で、新規顧客獲得コストは30%も減少したケース(自動車保険)や、ウェブ閲覧者当たりの契約率が2%から20%に跳ね上がったケース(健康補助食品)が報告されているなど、その効果は抜群だ。日本でも、「スマートフォン×クリック・ツー・コール」がネットショッピングの革命児として急伸していくことに疑う余地はない。
なお、「目は口ほどにモノを言う」ということわざがあるように、消費者への説得力をさらに高めるためには、オペレーターが顔を見せて会話する、テレビ電話機能をもったクリック・ツー・コールの登場もそう遠い話ではあるまい。