「アトリビューション」

 「アトリビューション(Attribution)」とは「帰属、帰すること」という意味で、もともとは金融のパフォーマンス評価で、あるリターンがポートフォリオのどこから生み出されたのかという貢献度要因分析を指す。最近では広告業界、特にネット広告業界において注目されている概念である。

 例えば、検索連動型広告から購買にいたる行動を分析する「コンバージョン分析」では、検索ワードごとの効果測定のほか、測定ツールによっては直接そのコンバージョンの前にクリックされた他の広告が把握できるものがある。コンバージョンの直前に反応(クリック)した広告の効果を“直接効果”といい、そこに至るまでに反応した広告の効果を“間接効果”と呼ぶとすれば、サッカーで最終的にゴールを決めるのが直接効果であり、そのゴールに至るまでのパスが間接効果ということになる。現在では広告のクリックだけでなくインプレッション効果(広告を見た、または広告が露出された)も、バナー広告の第三者配信という手法で測定が可能になっている。

 問題は、効果を生んだ要因として評価されるべきは直接効果なのか?あるいは間接効果なのか?ということだ。またそれぞれにウエートを付けるとしたら、どのような考え方で加重するべきか?ということだ。
実は現状のインターネット広告においては明確な回答はなく、個別のケースごと、商品カテゴリーごとに評価の方法を決めているのが実情だろう。

 このアトリビューションという概念は、測定ツールや広告サーバーの進化によってネット広告業界で普及しはじめているが、テレビや新聞といったマス広告にも広げて考えることができるだろう。テレビCMや新聞広告に接触し、最終的にネットで検索をして商品を購入する、といったクロスメディアの経験は誰にでもあるはずだ。アトリビューションの概念は、現状ではインターネットの中で完結しているが、マス広告においても直接効果、間接効果というアトリビューションの考え方が望まれているのではないか?

 特に筆者が属するダイレクトビジネス(通販)業界においては、広告と購買を直接的に結びつける考え方は一般的だ。だが、間接効果の考え方を取り入れなければ、直接、購買には貢献していないように見える広告をそぎ落としていくことになり、最終的には広告の出稿が減り、売り上げ自体も先細りになってしまう恐れがある。

 まだ課題は多いとは言え、科学的な広告効果の解明を考える上でアトリビューションという概念は注目に値するだろう。