「ビッグデータ」とは、名前のとおり「大きなサイズ(大量)のデータ」のことを指すが、最近では以下のような特徴を持つものを「ビッグデータ」ととらえることが多い。
特徴1) 大容量である
特徴2) 非定形で多種多様である
特徴3) リアルタイム性が高く、高頻度に生成される
例えば、ウェブサイトのアクセス履歴や検索履歴、ウェブサイト上での生活者の書き込み、企業が所有する販売記録や申し込み記録等の顧客データ、位置データ、電力使用量など各種センサーから得られるデータ、音声データや動画データといったものが、「ビッグデータ」にあたる。
「ビッグデータ」に注目が集まっている背景として、
1)デジタル化に伴う情報量の爆発的な増加により、企業が大量のデータを生成・取得できるようになった
2)取得した大量のデータを蓄積→処理→解析するためのテクノロジーが急速に進化した
ことが挙げられる。
検索サービスのグーグル、ECサイト運営のアマゾン、SNSのフェイスブックといった企業は、「ビッグデータ」を独自に取得し、自社の事業成長実現のために戦略的に活用している代表的な企業である。
こうした「ビッグデータ」をマーケティング領域に活用する新しい動きが、さまざまなところで起きている。
なぜ、マーケティング領域において「ビッグデータ」が注目され、活用されているのか。それは、生活者の実行動そのものを「蓄積された大量のデータ」として定量的に分析し活用することが、事業の効率化や付加価値向上実現のために有効であることに、さまざまな企業が気づき始めたからである。
「ビッグデータ」のマーケティング活用例としては、ネットマーケティングを中心に以下のような取り組みがある。
・例1 企業がソーシャルメディア上に書かれた自社や競合に対する生活者の声(評判や意見など)を定点的にモニタリングしてアイデアやヒントを収集し、新商品開発や顧客サービス向上に生かす。
・例2 ライフログ(※注1)を活用し、生活者のウェブ上での行動を競合サイトと比較した上で自社サイトの課題を発見。サイト来訪者を増やすための広告戦略や、コンバージョン(※注2)を向上させるサイト内コンテンツの開発に生かしていく。
・例3 統計処理に基づいて売り上げ予測モデルを作成し、コンバージョンの最大化を実現するための広告出稿プランを策定。広告投資のPDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を運用していくことで、ROI(費用対効果)を最適化していく。
・例4 スマートフォンなど携帯端末に内蔵された位置情報システムを活用し、生活者が今いる場所の近くにある店舗の割引クーポンを、生活者の携帯端末に配信していく。
上記は「ビッグデータ」をマーケティングに活用した事例のごく一部に過ぎないが、こうした「ビッグデータ」をマーケティングに活用していく「ビッグデータ・ドリブン・マーケティング」が、次世代マーケティングの主流になっていくのではないだろうか。
もちろん、「ビッグデータ・ドリブン・マーケティング」を実践していくにあたり、データの機密管理や、データを活用できる人材の育成を始めとして、今後解決していかなくてはならない点は多くあるが、マーケティングの視点に絞ってみると、以下2点が重要であると思われる。
1)売り上げ、生活者調査、顧客のクチコミ・評判、ウェブのアクセスログなど、多岐にわたるデータを統合し、運用・管理していく「統合」の視点。
2)可能な限りリアルタイムでデータを分析し、仮説検証を繰り返しながら、継続的な改善につなげていく仕組みを構築していく「高速PDCAサイクル」の視点。
いずれにせよ、「ビッグデータ」の分析から抽出された知見を蓄積し、有効に活用していくことが、企業が競争に勝つ上でますます重要になってくることは確かである。
2011年10月に博報堂が、高度なデータ解析技術を持つブレインパッド社と協業して開発した「Digital Marketing Manager」は、ビッグデータ解析により企業の高度なネットマーケティング実現を支援する、「ビッグデータ・ドリブン・マーケティング」実践のためのサービスである。
注1 ライフログ:ネットユーザーのサイト閲覧や検索に関する全履歴データ
注2 コンバージョン:会員登録、資料請求の獲得数、商品購入など、マーケティングにおける成果指標のひとつ