街コンとは、市街地全体を舞台に開催される合コンイベントだ。大規模なもので男女合わせて2,000人超が出会いを求めて一つの街に集結する様はまさに圧巻。
2004年に栃木県宇都宮市で始まったそうだが、今では全国各地で開催されており、街の名前の一字を採って「宮コン」(宇都宮市)、「前コン」(前橋市)、「広コン」(広島市)、「池コン」(池袋)、「恵比コン」(恵比寿)などの名称で呼ばれることも多い。筆者が街コンを初めて耳にしたのは高田馬場で開催された「馬場コン」だったが、最初は「おばあさんのコンパってどういうこと?」と不思議に思ったものだ。
実は今、街行く若者たちの過半数以上に「彼氏・彼女」がおらず、「交際相手がいない」若者が年々増加傾向にあるという。
2010年6月に実施した国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(独身者調査)」によると、異性の交際相手がいない18~34歳の未婚者が男性で 61.4%、女性では49.5%に達しており、いずれも過去最高になった。
交際相手がいない若者の増加が晩婚化や非婚化を、ひいては少子化を誘発していることは明白である以上、これは個人の問題であると同時に社会問題であり、街コンを通じて解決が図られれば大変に素晴らしい。
加えて、ロードサイドの繁栄と引き換えに旧来からの中心市街地の衰退はよく指摘されており、特に地方ではこの傾向が顕著だが、市街地再活性化の起爆剤としても街コンへの期待は非常に大きい。
そう考えると、街コンは社会問題解決に向けた一石二鳥の妙手と言えよう。一過性のブームではなく、今後は行政的支援も受けてさらなる盛り上がりが予想される。
さて、昨今の若者男子はいわゆる「草食系」が多く、総じて恋愛には淡泊だと思われているが、街コンの盛り上がりを見ると彼らの本音は違っており、安易に草食系と決め付けるのは間違っているのかもしれない、と思う。
心理学でいうところの「認知的不協和の法則」では、「何かをやりたい」と願っても、「実際にはできない」現実を前にしたとき、人間は「やりたい⇔でもできない」という葛藤を避けるためにやりたい気持ちを無意識に抑圧して、「本当は、別にやりたくないもんね」と自分自身によくうそをつく。
実は草食系男子も「どうせ俺なんて、女の子に声をかけられないし・・・・・・」と諦めて、誰かと恋愛したいという本心を押し殺しているだけなのではなかろうか。
そこに街コンが絶好のお膳立てとして機能した結果、それまで抑圧してきた恋愛欲求が沸々とよみがえり、これだけの多くの若者男子が参加していると考えれば腑(ふ)に落ちる、少なくとも私には。
その意味で、「お膳立て」をしっかりと用意すれば、今でも若者の消費を活性化できることを街コンは示唆してくれる。若者には「お膳立てマーケティング」、と肝に銘じておきたい。